政府の地方分権改革推進委員会が昨年5月の第1次勧告で、都道府県から市町村への権限移譲を求めた350事務のうち、所管する中央省庁が移譲に応じる意向を示したのは、7月末時点で6%の22事務にとどまることが29日までの分権委の調査で分かった。
 残る328事務については「市町村の執行体制が整っていない」などの理由で難色を示している。この中には、児童福祉法に基づき都道府県知事が持つ民間保育所の認可権限など、住民生活に身近な事務も多く含まれている。
 対象は8府省で、総務省が2事務は「移譲可能」と回答、経済産業省は14事務、厚生労働省は6事務について「移譲の方向で検討中」と答えた。残る国土交通、農林水産、環境、文部科学の4省と内閣府はゼロ回答。
 総務省が「移譲可能」としたのは、住所表示の町名を市町村が新設、廃止する権限など。現在は都道府県知事への届け出が必要だが、これを廃止する。経産省電気用品安全法に基づく販売事業者への立ち入り検査権限などを市へ、厚労省は業務上、毒劇物を取り扱う者の届け出受理などの事務を保健所の設置が認められている市に移す方向でそれぞれ検討中とした。

同記事では,地方分権改革推進委員会における『第1次勧告』に関する協議状況を紹介.同記事については,恐らくは2009年8月17日に開催された第93回地方分権改革推進委員会への配布資料をもとに報道された模様.同記事では,22事務は「中央省庁が移譲に応じる意向を示した」と紹介されてはいるものの,同資料*1内の整理では,「移譲可能としているもの」が2事務,「移譲の方向で検討しているもの」が20事務とも整理されており,若干,その態様への認識の温度差が異なる模様.
同回配布資料の個表を拝読すると,各府省の態様として,全国一律の移譲を可とするか否かという基準からすれば,確かに,大別すれば,まずは「一律移譲を諒承する事項」(いわば「法定移譲諒承事項」)と,「移譲には消極的な姿勢を示す事項」(いわば「法定移譲未承諾事項」)という,両端の態様の携帯に分けることができるそう.しかし,個表内での各府省から態様とも察せられる「現在の検討状況等」の欄を,個別の事務毎に読み始進めると,一概に移譲・非移譲という二分法のみで,その態様の整理ができなようにも思われる(確かに,結果的にそのどちらかではありますが).
つまり,後者である「法定移譲未了承事項」とされる態様においても,各都道府県(及び市町村間)毎での移譲判断については諒承するという,「全国一律的な移譲には消極的ではあるものの各自治体個別移譲は諒承する事項」(いわば「法定移譲未承諾・条例移譲諒承事項」)もあり,三つの形態に分類されるようにも窺える(そのため,「法定移譲未承諾事項」は,正確には「法定移譲・条例移譲未承諾事項」ともいえる).
第三の形態については,下名の観察課題の一つである「条例による事務処理特例」制度に基づき,各都道府県毎での判断を促すものとも読むことはできる.説得力を持つ法定移譲へと至るためにも,まずは,市町村と都道府県間での「受容圏」(zone of acceptance)*2を前提とした上で,「実績に基づく移譲論」*3に基づく移譲論の展開が,より現実的かつ有効ともいえそうか.

*1:地方分権改革推進委員会HP(委員会開催状況第93回:2009年8月17日開催)「配布資料1-1 第1次勧告で盛り込まれた基礎自治体への権限移譲(付与を含む)の検討状況 概要」及び「配布資料1-2 第1次勧告で盛り込まれた基礎自治体への権限移譲(付与を含む)の検討状況 個表

*2:Herbert A. Simon,Administrative Behavior fourth edition,FreePress,1997,10

Administrative Behavior, 4th Edition

Administrative Behavior, 4th Edition

*3:松井望「都道府県と市町村の協議と受容圏−「条例による事務処理特例」制度の創設について」『都市政策研究(首都大学東京都市政策研究会・編集)』第2号,2007年,140頁