生駒市は、行政への不当な要求行為やクレームに対する職員の対応をまとめた「不当要求・クレーマー対応マニュアル」を作成した。全職員に配布し、徹底を図る。
 市によると、職員が市民などから何度も同じ説明を求められ、業務を中断されるなどのケースが月に数件ある。効率の低下や業務の停滞を防ぐため、マニュアルを作成した。マニュアルでは、市法令遵守(じゅんしゅ)推進条例に基づく不当要求行為の定義や判断基準を掲載。「相手に揚げ足を取られないように慎重に発言する」「状況に応じて警察と連携を図る」など、対応のポイントも示した。市が不当要求行為と判断した場合は、氏名や要求内容を公表することもあるという。【石田奈津子】

同記事では,生駒市において不当要求等の対応マニュアルを作成されたことを紹介.同様のマニュアル策定の取組としては,2009年3月26日付の神戸新聞にて報道されており*1,神戸市が「全国初」に2009年3月25日に作成された,とある.神戸市における同マニュアルの策定に関する紹介は同市HP*2を参照(当然でしょうが,公開はされていない模様).
神戸市のマニュアルでは,「不当要求行為と判断するための具体的な判断基準を示」すとともに,「不当要求行為等への対応」として,「初期対応時の3原則」「こじれた場合の対応4手法」「また不当要求に発展させないための秘訣」等が記されており,あわせて,「職員が暴行や脅迫を受けた事例」や「繰り返し無理な要求を受けた事例」等「13の実例を題材に,具体的な対処方法や関連知識等を整理」されているという.生駒市の場合は,どのように規定されているのだろうか,興味深い.
ただ,同記事にもある「市が不当要求行為と判断した場合は,氏名や要求内容を公表することもある」という運営方針については,「複合型コンプライアンス条例」*3とも整理されている生駒市法令遵守推進条例を拝読すると,同記事の紹介はやや理解が難しい部分もある.
同条例第9条を拝見すると,第1項では「市長は,第6条第1項の規定により記録された要望等を取りまとめ,その概要及び要望等への対応の方針、方法等の概要を定期的に公表するものとする.ただし,公表することにより,要望者の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある要望等については,この限りでない」として幅広く,要望内容の公表を規定しているものの,同条第2項では「前項の規定により公表するときにあっては,氏名,住所等の要望者が特定される情報(公職者の氏名及び法人その他の団体の名称を除く.)は,掲載しないものとする」*4とあり,要望者の氏名・属性等の公表は制約的である.ただ,第10条では,「当該不当要求行為を行った者に対する書面による警告,捜査機関への告発その他必要な措置を講」「じたにもかかわらず,不当要求行為を行った者が不当要求行為を中止しないとき」に,初めて,「当該不当要求行為を行った者の氏名,不当要求行為の内容、講じた措置の内容その他の事項について公表することができる」(第2項)ともあり,段階的な公表が前提とされている.
同市は,現在迄に,平成19年度11月から1月分の要望状況については,要望者のうち,公職者以外の個人の氏名は公開せず,公職者としての個人,団体・法人を氏名・名称が,同市HPに公開*5されている(同時期以降は要望が特段なかったのでしょうか)ものの,個人の氏名については公表されていない.同記事にいう「市が不当要求行為と判断した場合」とあると,何となく,不当要求行為と認知された場合,直結的に公表に至るというようにも読むことができなくもないが,制度上は,単に要求行為だけではなく,市長側からの警告等の措置への中止等がない場合が前提となるはず.マニュアル作成に伴い,その運営方針の変更(または,条例改正)がされたのだろうか.要確認.