伊勢市役所地下1階にある「いー菜食堂」が、穴場レストランとして人気を集めている。経営はキャリオン(伊勢市藤里町)。
 仕出し弁当や幼稚園の給食、食堂の運営などを手がける同社は、生産者の顔が見える食材を使用し旬のもの、地のものを積極的に取り入れていることから、「利用客からも評判がいい」という。幼稚園児を持つ主婦4人が「弁当1個を作るのも4個作るのも同じ」という発想から弁当を作り始め、会社を設立した。同店の営業時間は11時30分〜14時だが、「安心安全な食材を使っておいしく、しかも低価格」という評判が口コミで広がり、市役所職員に混じって一般客の利用も目立つようになってきた。
 日替わり定食の「いー菜定食」(550円)、伊勢うどん(350円)が人気だという。いー菜定食は毎月ごとにメニューをまとめて表示する。同店の山田美由紀さんは「中でもチキン南蛮の時が一番人気」と話する。
 11月16日には伊勢市郵便局本局横、AUショップ前にテークアウトメーンの店「いー菜店」の開店を予定する。伊勢市民病院1階の「キャリオン食堂」(営業時間=11時〜14時)でも一般客の利用が可能。同社取締役の高橋美紀さんは「伊勢市役所店は近くにハローワークがあることから、ランチタイムに立ち寄る方も多い。一般の人でも利用できることがあまり知られていないので、気軽にお越しいただければ」と利用を呼び掛ける。

市役所から食堂が消える? 苫小牧市役所地下にある食堂と喫茶店が9月30日閉店し、再開のめどが立たずにいる。入居業者が営業不振を理由に撤退したためで、市は後継店を公募したが応募はゼロ。道内主要都市で食堂のない市役所はなく、来庁する市民に不便を強いることになりそうだ。(俵積田雅史)
 閉店したのは「食堂わかくさ」と「コーヒーショップ樹林」。苫小牧の飲食業渡辺(佐藤秀文社長)が、現庁舎建設の1983年から営業を開始した。店舗面積は両店で計336平方メートル。日替わり定食480円など割安な料金で提供してきた。
 職員以外に、多くの来庁者も利用し「一時は混雑した時期もあった」。しかしここ数年、利用者は大幅に減少。前年比20%減の状態が続いていたという。昨年4月から、市が昼休みを1時間から45分に短縮したことや、不況で食費を減らすためか「弁当を食べる人が多くなった」ことも、利用低迷につながったとみられる。
 市は9月、市のホームページなどで業者を公募したが、地下1階の立地面や利用低迷の状況を嫌ったためか、応募はなかった。閉店翌日の1日昼には、閉店を知らず店の前まで訪れる人も。無職の男性(68)は「市役所に来た時は毎回利用していたのに」と困惑していた。
 市は当面、職員の食事スペースとして活用するが、営業再開か廃止かについては「現時点では未定」(総務課)としている。

両記事では,伊勢市苫小牧市におけるそれぞれの「役所(職員)食堂」の状況について紹介.
2008年3月4日付の本備忘録で取りあげた熊本県佐賀県同年10月23日付の本備忘録で取りあげた北海道,2009年2月5日付の本備忘録で取りあげた京都府鳥取県,そして,同年2月27日付の本備忘録では韓国の状況について取りあげ,2008年12月7日付の本備忘録の項目立てを試みた本備忘録の妄想的・断続的観察課題である「庁舎管理の行政学」の観点では,「第3章:役所食堂の行政学」として,その対象になりうる両市の取組.第1記事において紹介されている伊勢市では来客万来の兆しを迎えつつあることに対して,第2記事において紹介されている苫小牧市では,その撤退を伝える.
「役所(職員)食堂」が,その自治体職員集団のみならず,来庁舎や近隣地域においてもまた「食卓の共同」による「物質的給養」*1の装置として位置付けられているとすれば*2,その安定的な運営において,いわば「財政破綻懸念」*3を回避のための事前方策が課題.そのためにもまずは,苫小牧市の状況を紹介した第2記事にもあるように「利用者の大幅に減少」への対応が必要.その場合,例えば,「役所(職員)食堂」において提供される内容に対して「人がなにを食べるかに影響を与える」「選択アーキテクト」*4から考えなおすことが課題ともいえそうではあるものの,それもまたやはり難題.悩ましい.

*1:マックス・ウェーバー『支配の社会学?』(創文社,1960年)204頁

支配の社会学 1 (経済と社会)

支配の社会学 1 (経済と社会)

*2:例えば,以下の記事も同様.毎日新聞(2009年9月18日付)「那覇市役所:現庁舎きょうまで 名物食堂も営業終了

*3:共同通信(2009年10月2日)「財政破綻懸念は21市町村 総務省、初判定の計画策定へ

*4:リチャード・セイラー,キャス・サンスティーン『実践行動経済学』(日経BP社,2009年)15頁

実践 行動経済学

実践 行動経済学