政府の地方分権改革推進委員会丹羽宇一郎委員長)は9日、国と地方の税財政改革を促す第4次勧告を鳩山由紀夫首相に提出した。国税の一定割合を地方交付税の原資にあてる「法定率」の引き上げ検討や、国と地方の税源配分をいまの「6対4」から、実際の歳出割合により近い「5対5」にするよう求めた。自公政権時代に発足した分権委の勧告は、これが最後となる。
 勧告は、10年度予算編成に向けた「当面の課題」として、法定率引き上げによる自治体の財源の安定化や、国の公共事業に対する地方負担金のうち維持管理分の廃止を提言した。民主党政権公約で掲げた項目に関連しては、「ひもつき補助金の一括交付金化」に際し、地域間格差が生じない配分を考えるべきだと指摘。ガソリン税など自動車関係税の暫定税率廃止は、税収が減る地方の財源確保も十分考慮して進めるべきだと求めた。
 さらに、経済状態が安定した後の「中長期の課題」として、存在意義の薄れた補助金は即刻廃止し、地方債発行への国の関与を見直すべきだとした。「地方消費税の充実」も求めたが、鳩山首相が「4年間行わない」としている消費税率の引き上げには触れなかった。

政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は9日、地方財政を安定させるため、国と地方の税源配分を現行の6対4から5対5とすることや、所得税など国税5税を地方交付税に配分する「法定率」を現行の約3割から引き上げることを盛り込んだ第4次勧告をまとめ、鳩山由紀夫首相に提出した。
 勧告は、「当面の課題」と「中長期的の課題」に分類。当面の課題では、交付税の法定率引き上げのほか、公共事業を中心とした国の直轄事業を縮減し、負担金による地方の財政負担を軽減させるとともに、国の出先機関の廃止・縮減など求めた直轄事業負担金制度の改革を打ち出した。鳩山政権が平成23年度からの導入を検討している国からの補助金の一括交付金化の導入には、地方の財政力などを踏まえ、慎重な配慮が必要との認識を示した。また、ガソリン税などの暫定税率廃止は地方の税収減を考慮して対応すべきだとしている。
 中長期の課題は、地方消費税の充実を要請した。鳩山政権では、地方消費税のベースとなる消費税率は4年間引き上げない方針だが、地方消費税は税収の地域間格差が少ないことから、地方財政の安定化のために明記した。
 政府は月内にも、分権委に代わって「地域主権戦略会議」の設置を閣議決定する方針だ。分権委は今回が最後の勧告となる。

政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は9日、地方税財政に関する第4次勧告をまとめ、鳩山由紀夫首相に提出した。地方交付税の原資拡充に、所得税など国税5税を繰り入れる割合を示す「法定率」の引き上げなどを求めたが、国税収入の減少もあり実現するかどうかは不透明だ。分権委にとっては最終勧告となり、今後の分権改革は首相直属で新設する「地域主権戦略会議」に引き継がれる。自民党政権との違いを実行力でどう示せるかが焦点となる。政府は4次勧告のうち、法定率の引き上げなど一部について検討課題として、年末にまとめる地方分権改革推進計画に反映する考え。
 首相は9日、首相官邸で丹羽氏と会談し、「提言として十分参考としたい」と述べた。丹羽氏は「いままでは骨抜きになっていた。要は実行だ」と語り、勧告の実施を訴えた。

政府の地方分権改革推進委員会丹羽宇一郎委員長)は9日、地方の税財源のあり方に関する第4次(最終)勧告をまとめ、鳩山由紀夫首相に提出した。国が地方に配分する地方交付税の総額を確保するため、所得税など国税5税から交付税に算入する割合「法定率」(25〜34%)の引き上げを求めた。民主党マニフェスト政権公約)に掲げた、国の公共事業に地方自治体の負担を求める「直轄事業負担金」の廃止では、廃止に向けた工程表の早急な策定を要請した。
 分権委は自公政権下で設置された。原口一博総務相は「地域主権戦略局」に改組する方針を示している。
 勧告は民主党政権の政策に配慮しつつ、国が使途を制限する「ひも付き補助金」の一括交付金化方針に対しては、現行の補助金総額を維持するようクギを刺した。ガソリン税などの暫定税率廃止で生じる地方の減収(09年度ベースで8055億円)を、穴埋めする必要性も指摘している。
 中長期の課題としては、地方消費税を中心に地方税を充実し、国と自治体の税源配分を今の6対4から、少なくとも5対5とする目標を提示した。自治体の課税自主権強化も挙げた。【石川貴教】
 ◇速やかな具体化、地方6団体が要望
 地方分権改革推進委員会が9日、発表した第4次勧告について、全国知事会など地方6団体は同日、声明を発表。地方交付税の法定率引き上げなどについて、政府が「必要な措置を速やかに具体化するとともに、三位一体改革で削減された地方交付税の復元を図る」ことを強く要望した。
 ◇解説…青写真を早急に示せ
 自公政権下で設置された地方分権改革推進委員会は、設置期限を来年3月まで残す。にもかかわらず、この時期に最終勧告に踏み切ったのは、自民党政権の影が残る分権委を早々に改組したいという鳩山政権の意向が反映している。先月8日の第3次勧告以降、分権委の正式会合はゼロ。提言の柱、地方交付税の法定率引き上げには井伊雅子委員(一橋大大学院教授)が疑問を呈し、最終勧告に反対意見が付記されるという異例の事態となった。
 議論が生煮えのまま最終勧告に至った背景には、「自公政権でしてきたものをリセットし、本当の意味でのエンジンを作りたい」(原口一博総務相)との政府側の思惑がある。鳩山由紀夫首相は9日夜、「十分に参考にし、実行していきたい」と語った。勧告内容と民主党地方分権策に大きな開きはない。分権委の勧告に従って方針を決める前政権の手順を廃止し、政治主導を演出したいというのが新政権の本音だ。
 鳩山政権は「ポスト分権委」として、「地域主権戦略局」を来週、設置する。だが、名称ばかりが先行しており、各省庁の抵抗をいかに抑え、どう実行に移すのかは見えない。移行後の青写真をうまく描けなければ、地方分権改革が迷走しかねない。【石川貴教】

政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は9日、国と地方の税財政改革に関する第4次勧告をまとめ、鳩山首相に提出した。
 当面の課題として、所得、消費各税など国税5税の約3割を地方交付税に充てている「法定率」の引き上げを求めたほか、中長期の課題として、国税地方税の税源配分の見直しや地方消費税の充実を要請した。
 鳩山首相首相官邸で、丹羽委員長から勧告を受け取り、「私たちの(政策の)一丁目一番地は、地域主権改革なので、十分に参考にして実行していきたい」と述べた。
 勧告ではこのほか、国庫補助負担金の一括交付金化について、制度の留意点を盛り込んだ。一括交付金化は鳩山政権が2011年度からの導入を目指しているもので、地方が必要とする総額の確保を要求したほか、交付基準の策定については、地方の財政力や社会資本整備の状況などを考慮するよう求めた。
 民主党政権公約マニフェスト)に盛り込んだ自動車関係諸税の暫定税率廃止に関しては、政府が導入を検討している環境税や、地方税源確保の方策などについて、十分に考慮する必要があるとした。また勧告は、「国と地方の巨額の累積債務残高と社会保障支出の今後の増大を見据え、いずれ、消費税と地方消費税のあり方を中心に、税制全般の抜本的な改革の実施が不可避」と指摘。そのうえで、国と地方の税源配分を現行の「6対4」から「5対5」に見直すことを求めた。地方債については、発行に関する国の関与の見直しを要求した。
 安倍政権下で設置された分権委は第4次勧告が最終勧告となり、事実上、役割を終えた。政府は来週にも、鳩山首相がトップを務める「地域主権戦略局」(仮称)を新設し、分権改革の新たな推進役にする考えだ。

上記記事では,地方分権改革推進委員会において『第4次勧告』を取りまとめ,鳩山首相に提出したことを紹介.本備忘録では,2008年5月29日付では『第1次勧告』,同年12月9日付では『第2次勧告』と,首相への提出された勧告への報道状況を紹介してきたため(ただし,『第3次勧告』に関しては,同委員会における了承と首相提出との間に時間的なラグがあったため,2009年10月8日付一記事のみの紹介),『第4次勧告』に関しても,各紙の報道内容を記録.
同勧告の内容は,同委員会HPを参照*1.「地方税財政における諸課題を当面の課題と中長期の課題とに区分」されたうえ,「それぞれについてあるべき地方税財政制度の再構築に向けた諸提言を取りまとめた」(1頁)点は特徴的.
まず「当面の課題」としては,6点を言及する.第1に地方交付税についてである.同勧告では,地方交付税については「地域間の財政力格差の拡大につながら」ず,そして「地方自治体から見た予見可能性を高める」うえでも,「地方交付税法第6条の3第2項に規定する地方交付税の法定率の引上げ」(3頁)を「考慮すべき」(同頁)との示唆する.第2点目は,「直轄事業負担金」についてである.同勧告では,「国の直轄事業の範囲の限定,関係する国の出先機関の縮減・廃止,直轄事業負担金制度の廃止,道路・河川の移管に伴う国負担率並みの交付金の創設,地方自治体と事前に協議する仕組みの創設などについて,直ちに工程表を作成し,速やかに取り組むべき」(4頁)と,今後の対処措置の必要性を促している.第3点目は,『第1次勧告』『第2次勧告』で示された「事務・権限の移譲に係る勧告事項を実施に移す場合」と財源の関係についてである.同勧告では,政府が実施する場合,「これらの事務・権限の執行に要する経費」に関しては,その全額を当該地方自治体に移譲することを原則として,税財源の移譲を確実にする適切な措置を講ずるべき」(4頁)と述べ,既提出の勧告間との整合性が保たれている.第4点目は,新政権が検討するであろう「国庫補助負担金の一括交付金化」についてである.同勧告では,「地方分権改革の観点から」「これまでの公共事業関係の国庫補助負担金よりは望ましい」(5頁)との一定程度の評価を示しているものの,「地方の意見を踏まえつつ,地方が必要とする事業の執行に支障が生じないよう必要な総額を確保するとともに,その交付基準についても十分な検討が必要」(同頁)として,特に,「交付基準は,基本的に客観指標によるべき」ともされるものの策定される場合,「地域間の格差是正の観点から財政力,社会資本整備の状況等を考慮する」ことと,「継続事業の執行に支障が生じないように慎重な配慮」が必要であるとの考えが示されている.第5に「暫定税率の廃止を含む自動車関係諸税の見直し」についである.同勧告では,「地球温暖化対策に係る国際的な取組みのなかでの我が国の役割・責任,近い将来に想定される環境税の導入と環境問題に係る地方自治体の役割,国・地方ともに生ずる貴重な税収入の減少への対応,特に地方税源の確保方策などについて,十分に考慮する必要」(同頁)との記述からも,明確な姿勢を示すことには慎重な内容となっている.第6に,「国と地方の協議」についである.同勧告では,「できるだけ速やかに,協議の場の法制化を待つことなく,国と地方の事実上の協議を開始」され,「地方自治体の代表者から現場の実態と感覚とを聴取のうえ,その意見を反映するように努めていただきたい」(同頁)とあり,2009年10月7日に取りまとめられた『第3次勧告』*2において示された見解の再認識を求める内容が示されている.
次いで,「中長期の課題」としては,同勧告では5点を言及する.まず,「地方税制改革」に関しては,「地方自治体自らが課税権を持つ地方税を充実する」方針と.「その税目は応益性を有し,薄く広く負担を分かち合う性質のものであること、さらには、税源の地域的な偏在性が少なく,税収が安定した性質のものであることが望ましい」(6頁)との基本的方針が示される.やや具体的な記述としては,「国と地方の税源配分を5:5とすることを今後の改革の当初目標とすることが適当」,そして,具体的には,「様々な税目について検討が必要となる」との留保をおきつつも,「地方消費税の充実を中心とすべきである」との明記していること,そして,その時期については,「国税地方税を通じた税体系全体について抜本的な見直しが行われる機会に実現されることが望ましい」と,やや明瞭ではないものの「それまでの間,毎年度行われる税制改正に当たっても,改正の内容が上記の方向性に沿ったものとなるように検討が行われるべき」(同頁)との漸進的な対処も必要としている.また,「課税自主権」の観点からは,地方税制度の改革という観点よりもその運用面において,「地方自治体においては課税自主権の積極的な活用に努めるべき」(同頁)と,自治体側に向けた示唆も示されている.第2に「国庫補助負担金の整理」である.まずは,「国庫補助負担金に関し,基本的には,既に目的を達成し,あるいは社会経済情勢の変化に伴って存在意義の薄れた事務事業に対するものについては即刻廃止すべき」(7頁)として,また,「事務事業の内容等」から「地方自治体の事務として同化・定着・定型化しているもの」「人件費補助に係るもの」に関しては,「原則としてこれを廃止」として,「一般財源である地方税地方交付税による財源措置に替えていくべき」(同頁)ともされる.両者の腑分けについては,同勧告では沈黙されているものの「更なる国庫補助負担金の整理を進めるべき」(同頁)との方向性が示されている.第3に,「地方交付税」についてである.地方交付税については,同勧告独自に構想する路線を選択せずに,いわゆる「地方共同税」と「地方共有税」の比較衡量の結果,「「地方共有税」構想について議論した結果、最終的な結論は得られなかったものの,これは真剣な検討に値する構想ではないかとする意見が大勢を占めた」(同頁)ことから,「地方六団体が提唱している「地方共有税」構想を土台にして,地方交付税制度の改革論議を深めていくことを,政府に求めたい」(8頁)との要望が記されている.第4に,地方債についてである.同勧告では,「課税自主権とともに起債自主権の確立が重要」(9頁)として,「地方債の発行に係る国の関与を見直していくべき」(同頁)とされるとともに,一方で,「財政力や資金調達能力の弱い小規模自治体であっても市場から円滑に安定的な資金を調達することを可能にする仕組みが重要」との見解から,「地方共同の資金調達機関である地方公共団体金融機構の仕組みを貸付規模や財務基盤を含め一層充実していくべき」との提案もある.また,「地方交付税の算定」の際に,「事業費補正によりその元利償還費の一定割合が基準財政需要額に算入されること」により,「借り手意識に甘さが出るなど地方自治体の財政規律に悪い影響を与えている」との見解を紹介しつつ,同勧告では「可能な限り縮減する方向で検討すべき」と断言されている.最後の第5は,「財政規律の確保」についてである.同勧告では,「財政規律の確保」に関する具体的な制度改正の提案よりも,「自らの財政運営の透明性と説明責任と情報開示の徹底を果たす必要」(10頁)と自治体側への制度運用面での留意が示されている.
以上の内容とともに,同勧告が「当委員会が政府に対して行う最終勧告」(11頁)と自己言及し,「当委員会が提出した第1次勧告から本勧告に至る計4回の勧告で提言した勧告事項を最大限に尊重し,これらを具体的な指針として速やかに地方分権改革推進計画の策定に取り組み,今後に予定される地方分権改革の全体的な工程表を明らかにされることを強く要請」している.同勧告に対しては,同日に示された「内閣総理大臣の談話」のなかで,「現政権が目指す地域主権を実現していく上で,御提言として参考とさせていただきたい」*3と,『第3次勧告』における「談話」での「地域主権を実現していく上で大きな意義を有すると考えており,勧告が最大限実現されるよう,内閣を挙げて速やかに取り組む所存である」*4との表現と比しても,やや慎重な見解が示されている.
地方分権改革推進委員会がいささかでも成果をあげるには」*5という課題設定のもとで描かれた「条件」の一つとされた,「勧告に盛り込まれた種々の改革案を精査し,閣議にまで持ちあげる改革案を適宜取捨選択する任務を持つ」(210頁)ための「場」の必要性が提唱されてきたものの,今後の政権において,2009年11月8日付の本備忘録でも取り上げた「地域主権戦略会議」が,同機能を果たすことになるのか,要経過観察.