政令指定都市18市で構成する「指定都市市長会」会長を務める矢田立郎神戸市長が今月25日に行われる次期会長選に立候補する意向を固めたことが4日、分かった。河村たかし名古屋市長も立候補を表明しており、一騎打ちの戦いとなる見通し。
 同会は地方分権の推進や大都市特有の課題を協議するほか、税源移譲や財源拡充について、国への要望、提言活動を行っている。矢田市長は2007年4月から副会長を務め、今年4月、松原武久前名古屋市長の退任に伴い、会長に就任した。これまで会長職は話し合いで決まっていたが、「選挙で決めるべき」との声が上がったという。関係者によると、同会の複数の市長から立候補要請があり、矢田市長は受け入れの意向を伝えたという。次期会長の任期は来年4月から2年間。(藤原 学)。

河村たかし名古屋市長が、4日に立候補届けを締め切る「指定都市市長会」(会長・矢田立郎神戸市長)の次期会長選挙に、立候補に当たる承諾書を出したことが分かった。
 同市長会は政令市18市で構成。大都市特有の問題を議論し、国に財源移譲など要望や提言もする。会長はこれまで話し合いで決まっていたが、「内輪で決めるのはどうか」との声が高まり、今月下旬に初めて選挙を実施すると決めていた。立候補には、3市長の推薦が必要で、立候補者は承諾書を提出する。矢田会長は、松原武久前名古屋市長の勇退に伴い、今春に後を継いだばかり。今回も立候補するとみられ、河村市長との一騎打ちとなる可能性もある。
 河村市長の推薦人である鈴木康友浜松市長は「18市は地方分権の改革を進めることで一致団結している。ただ知事会などに比べて情報発信力が弱いのが現状。この点で河村氏に勝る人はいない」と説明する。河村市長は「矢田さんが適任と思っていたが『改革を頼む』と強く推された。会長に選ばれたら、地方税法の改正や政令市の自治権拡大などに取り組みたい」と話している。次期会長の任期は来年4月から2年間。市長会事務局は「選挙について現時点で公表はしていない。誰が立候補しているかも言えない」としている。

両記事では,指定都市市長会会長選挙に関する立候補者の状況を紹介.
1964年10月に「五大市共同事務所事務所から指定都市事務局へ名称変更」*1され,長らく政令指定都市間での「事務局」であったものの,2003年12月に「大都市としての主張をより機動的・効果的に表明し,指定都市の共同活動をこれまで以上に強化していくため」*2に「指定都市市長会*3として「発足」された同会.
地方自治法第263条の3にいう「長,議長」による「全国連合組織」に関しては,「全国的な範囲にわたる」「長」「議長」から「構成」されることが要件とされているものの,「単に相当程度の数の長や議長が加入するだけでは全国的な範囲にわたるものといえず」とされ,「現行の地方六団体以外のその他の団体が本条の全国的連合組織に該当することはないものと考えられる」*4との見解も示されており,一読する限りは「普遍主義」的な規定のようではあるものの,その実際は「特例主義」*5的な規定である同条.そのため,同会に関しては,同条にいう「連合組織」として位置付けられることはなく,同条第2項に定められる内閣への意見具申も,制度的には認められていない.
2009年11月17日付の本備忘録で紹介した,国と地方の協議の場の法制化に向けた地方六団体の「代表」と政府関係閣僚間における「国と地方の協議」*6への出席状況からすれば,同会が,2009年9月28日付に,「指定都市の意見を直接反映する仕組みの構築」として,同会の「代表」が「国と地方の協議の場への指定都市の参加」「行政刷新会議への指定都市の参加」「地方税財政制度の協議への指定都市の参加」*7を要請しつつも,上述の地方自治法第263条の3にいう「長,議長」による「全国連合組織」の規定が「デフォルト」となってか,「国と地方の協議」には,同会としての参加には至っていない.また,全国知事会の案としては,同制度の法制化に向けて検討してきた全国知事会内のPTにおいても,2009年12月4日付の京都新聞の報道では,「構成は首相を議長,内閣官房長官総務相財務相,地方6団体の代表を議員」*8とする案に取りまとめられたようであり,そこには指定都市市長会は想定されていない.他方で,総務省顧問*9との「地域主権改革テレビ会議*10のような,個別「回路」*11が叢生されつつもある.
何れ候補者においても選挙後は,「選ばれし者の恍惚と不安」が想定される,制度環境にある同会長職.同職(場合によっては,「全国連合組織」の「代表」*12概念においても同様かもしれませんが)がもつ「代表」の含意としては,「委任説か独立説か,利益の集計か公共性についての審議か,利益の代表それとも意見の代表か」*13,考えてみたい.

*1:財団法人東京市政調査会編『大都市のあゆみ』(指定都市市長会,2006年)(巻末資料「年表・指定都市の動き(1956〜2005)」)410頁

大都市のあゆみ

大都市のあゆみ

*2:指定都市事務局HP「指定都市市長会について

*3:前掲注1・財団法人東京市政調査会2006年:413頁

*4:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)1369頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*5:金井利之『自治制度』(東京大学出版会,2007年)202頁

自治制度 (行政学叢書)

自治制度 (行政学叢書)

*6:全国知事会HP(地方六団体の活動国等との意見交換)「国と地方の協議について(2009年11月16日)

*7:指定都市市長会HP(指定都市市長会の主張今後の政権運営に対する指定都市市長会要請について)「今後の政権運営に対する指定都市市長会要請」(指定都市市長会,2009年9月28日)

*8:京都新聞(2009年12月4日付)「「国・地方会議(仮)」の性格は無駄とり 全国知事会PTが位置づけ

*9:総務省HP「総務省顧問(地域主権関係)の発令」(2009年10月30日).なお,「地域主権」に関する同省の「顧問」は,以下の14名.埼玉県知事,滋賀県知事,名古屋市長,大分市長,岩手県知事,開成町長,乙部町長,前横浜市長松山市長,大阪府知事佐賀県知事,神奈川県知事,杉並区長,添田町

*10:総務省HP(以前の新着情報(2009年12月3日))「地域主権改革に係る総務大臣と総務省顧問とのテレビ会議議事要旨」(2009年11月16日15時05分〜15時35分)

*11:金井利之「「国と地方の協議の場」の成立と蹉跌」森田朗・田口一博・金井利之編著『分権改革の動態』(東京大学出版会,2008年)94頁

分権改革の動態 (政治空間の変容と政策革新)

分権改革の動態 (政治空間の変容と政策革新)

*12:松井望「国と地方の協議の場」のもう一つの課題京都府HP(府政運営・方針京都府の地方分権改革)『京都府分権メルマガ「縦横無尽」』(第14号・2009年9月号)

*13:小田川大典「ジョン・スチュアート・ミル『代議制論』」岡粼晴輝・木村俊道編『はじめて学ぶ政治学 古典・名著への誘い』(ミネルヴァ書房,2008年)146頁

はじめて学ぶ政治学―古典・名著への誘い

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