遠賀川流域の6首長が水質保全やごみ問題を話し合う「第2回I LOVE 遠賀川流域リーダーサミット 遠賀川水フォーラム」(遠賀川流域住民の会、国土交通省遠賀川河川事務所主催)が17日、直方市山部のユメニティのおがたで開かれた。各首長と市民団体が現状を報告し、環境美化に向けた流域自治体共通の条例制定を求める提言を会場全体で採択した。
■次回会合で原案討議
 北九州、嘉麻、直方、宮若の4市と香春、芦屋の2町の首長がそれぞれ、下水道と合併浄化槽の普及策や住民と協力した河川清掃活動について説明。波多野茂丸・芦屋町長は、昨年7月の豪雨によるごみ漂着問題について「ボランティアの力を借りるのも限界がある。ごみ減量への法制化が必要だ」と訴えた。
 初参加の北橋健治北九州市長も「デポジット(飲料容器の預かり金を上乗せする)制度を真剣に検討するときだ」と応じた。
 このほか、嘉麻市などの小中学校3校がヤマメを卵からふ化させて放流する活動などを報告。司会の曽根靖史・元近畿大学産業理工学部長が「流域22市町村が、環境美化への基本的な取り決めをする時期だ」と提言し、次回会合では共通条例の原案についても討論することで一致した。

本記事では,北九州市嘉麻市直方市宮若市香春町芦屋町遠賀川流域に位置する4市2町の各首長が集うフォーラムが開催されたことを紹介.本記事でも紹介されており,同フォーラムで「一致」されたという「共通条例」案.2010年1月18日付の読売新聞の報道を拝読すると,「流域自治体が共同で処分費を工面するための基金を設けたり,河川環境の改善を目的とした共通の条例」とある.
2008年9月4日付及び同年10月6日付の各本備忘録にて取りあげた小林明夫先生による分類にならえば,「関係する複数の自治体間での相互の意識的な取組により規定内容・形式を共通化させた条例(条例群)」*1としての「共通条例」の路線を選択されたと整理できそうか.興味深い.ただ,「共通条例が採用しようとする制度設計がオリジナルなものであればあるほど,それに伴って各自治体の法制担当課の意見にも違いが出てくる」,「関係自治体間で「共通条例」を目指して調整・立案作業を行ってきた条例案が,法制担当課の審査を経て,全く別のものになってしまう可能性すらある」*2との観察結果も示されており,「一致」から「共通条例案」の制定,個別自治体での審議・制定までの,本記事で紹介された「共通条例」の具体化の過程は,要経過観察.
なお,蛇足.「通常国会」へ提出される地方自治法改正案では,「複数の自治体で保健所などを共同設置」可能とする改正案が含まれることが,2010年1月15日付の共同通信の配信記事にて報道されており,こちらは実際に選択されることとなれば,「複数の自治体が共同して一本の条例を制定」する「共同条例」*3の取組の一つともなることが想定され,こちらもまた,その法案成立のみならず,具体化の過程は,興味深い.

*1:小林明夫「複数の自治体の政策協調による条例の制定方法についての一考察(一)」『自治研究』第84巻第9号,2008年9月,131頁

*2:前掲注3・小林明夫2008年:142頁

*3:前掲注3・小林明夫2008年:130頁