内閣府地域主権戦略室は26日、都道府県から市町村への事務権限移譲を求めた政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)の第1次勧告を受け、勧告に盛り込まれた359事務の移譲の是非について3月19日までに回答するよう管轄する各府省に求めた。
 改革内容は、政府が今夏策定する「地域主権戦略大綱」に改革内容を盛り込む。08年5月の分権委第1次勧告では、64法律359事務の権限を、都道府県や大都市から市町村に移すよう提言。これにより、地域の実情を踏まえた行政サービスの向上などが期待される。主な事例は、▽身体障害者手帳の交付▽小中学校教諭の人事権▽開発行為の許可−など。このほか同室は、国が地方の業務を細かく縛る「義務付け」改革に関し、昨年12月の地方分権改革推進計画に盛り込まれなかった項目についても、3月19日までに回答するよう求めた。

内閣府は26日、民間事業者が保育所を設置する際の認可など都道府県が持つ359事務の権限について、市だけでなく町村も含めて移譲を検討するよう厚生労働省など関係8府省に文書で要請した。3月19日までの回答を求めている。
 基礎自治体である市町村を重視するよう求める原口一博総務相の指示に基づき、市だけでなく町村の権限強化にも積極的な検討を促す。今夏にまとめる「地域主権戦略大綱」(仮称)に反映させる考えだ。359事務の権限移譲は、政府の地方分権改革推進委員会が2008年5月の第1次勧告で提言したが、移譲先はほとんどが市だった。
 この事務には、児童福祉法に基づく民間保育所の認可のほか(1)2ヘクタール以下の農地の転用許可(農地法)(2)介護関係サービス事業者の指定(介護保険法)(3)身体障害者手帳の交付決定(身体障害者福祉法)―など、住民生活に身近なものも多い。

両配信記事では,内閣府地域主権戦略室の取組を紹介.同室を通じて,各府省に対し,地方分権改革推進委員会の『第1次勧告』の内容を,町村まで移譲することの可否に関する回答を求めている模様.詳細に関しては,現在のところ把握できず,残念.
2010年1月15日付の本備忘録においても記述したように,現在の地方分権改革・地域主権改革では,「法定移譲」化の議論もその対象とされ,両配信記事でも紹介されている地方分権改革推進委員会にて示された「市に優先的に権限移譲を進める」*1路線から,勧告された内容を「そのままにして」,町村という「新たな要素を付け加える」ことで「重畳化(layering)」*2された,いわば,町村における「事務量の拡大路線」*3を選択されている,とも整理ができそう.
ただ,「権限移譲を自治体から見て他者が決める限り,「あなた任せ」の分権であり,“他治”なのである」,「市町村への権限移譲は,長期的な自治への必要条件かもしれないが,長期的にみても十分条件ではない」*4との指摘を待つまでもなく,まずは,「〈仕組み〉が〈実践〉に先行するのではなく,〈実践〉の蓄積が〈仕組み〉に結晶」*5されるよう,現行の町村における「実績に基づく移譲論」*6の観点からの検討が適当とも考えなくもないが,どうなのだろうか.

*1:地方分権改革推進委員会HP(委員会の勧告・意見等)『第一次勧告 生活者の視点に立つ「地方政府」の確立』(2008年5月28日)27頁

*2:加藤雅俊「制度変化にけるアイディアの二つの役割」小野耕二編著『構成主義的政治理論と比較政治』(ミネルヴァ書房,2009年)157頁

構成主義的政治理論と比較政治 (MINERVA比較政治学叢書)

構成主義的政治理論と比較政治 (MINERVA比較政治学叢書)

*3:金井利之『自治制度』(東京大学出版会、2007年)21頁

自治制度 (行政学叢書)

自治制度 (行政学叢書)

*4:金井利之「地方自治のミ・ラ・イ第13回市町村への権限移譲」『ガバナンス』No.96,2009年4月,82頁

ガバナンス2009年4月号

ガバナンス2009年4月号

*5:前掲注4・金井利之2009年:82頁

*6:松井望「都道府県と市町村の協議と受容圏−「条例による事務処理特例」制度の創設について」『都市政策研究(首都大学東京都市政策研究会・編集)』第2号,2007年,140頁