鹿児島市は、2010年度の屋外広告物条例改正に向け審議を進めているが、市役所各課が掲示している広告の多くが「届け出義務違反」をしていたことが分かった。06〜08年度、掲示の際に届け出が必要な広告物のうち、87%が正規の手続きを踏んでおらず、模範となるべき行政側でも条例に対する認識が低い実態が浮き彫りとなった。
 1月27日あった市屋外広告物審議会で、当局が明らかにした。国や地方公共団体が公共の目的で出す屋外広告物は、条例の適用除外で許可は必要ないが、表示面積が5平方メートルを超える場合、道路管理課への届け出を義務付けている。09年8月、都市景観課が各課に掲出数を問い合わせたところ、06〜08年度に31課で282件あった。このうち届け出が必要なものが145件あったが、届け出をしていたのは19件にとどまった。
 都市景観課は「旗などは合算して表示面積を出すことや、届け出が必要との認識が薄いことなどが原因とみられる」とし、庁内に順守をあらためて呼び掛けた。道路管理課への届け出は例年、県と市合わせて年20件程度だが、09年度は12月までに約50件あった。公共広告物は、内容によっては一般広告物の違反を誘発したり、面積などの基準がなく景観や交通安全上問題となったりする恐れがある。今後の審議会で、掲出者の明示などを条例に盛り込むか検討していく。

本記事では,鹿児島市における屋外広告物条例の取組について紹介.
鹿児島市屋外広告物条例第7条では,「広告物の表示等を行おうとする者は,規則で定めるところにより,市長の許可を受けなければならない」*1とされており,同条例施行規則第6条により「広告物の表示等の許可を受けようとする者は,屋外広告物許可申請書」に,「表示し,又は設置しようとする広告物等の形状,寸法,材料及び構造」「に関する図面」,「表示し,又は設置しようとする広告物等の意匠,色彩並びに表示の寸法及び面積を表示した図面」,「広告物の表示等を行う場所の見取図」,「その他市長が必要と認める書類」を「添付して市長に提出しなければならない」*2とされている.本記事では,「市役所各課が掲示している広告」に関して報道されており,その「87%」が「届け出義務違反」に該当するとのこと.同市では,「平成21年9月中旬から平成22年3月末まで」の期間で「屋外広告物の実態調査」*3を進められているようではあり,同報道内容も,同調査の結果なのだろうか.調査結果が公開されることとなれば,要確認.

「もともと屋外広告物法というのは,運用を自治体にゆだねている,意外と分権的なシステム」*4とも評されることもある屋外広告物に対する規制.一方で,本記事ととに,2008年5月10日付の本備忘録にて取りあげた札幌市屋外広告物条例の取組と同様に,屋外広告物規制を内包する景観行政においては,「都市計画担当だけが景観行政にコミットするのではなく,土木部門や農林部門を含めて,組織の壁を超えた全庁的課題として受けとめられるべき」*5との認識も示されることもあるように,その制度認識と対応に関しては,庁内においてもまた「意外と分権的」ともいえそうか.「制度のなかにコード化された経験のルール」*6の様相の一つとも整理することが適当なのだろうか.興味深い.

*1:鹿児島市HP(市民向け市政情報条例・規則(鹿児島市例規検索システム)鹿児島市例規集 )「鹿児島市屋外広告物条例」(平成8年2月27日,条例第4号)

*2:鹿児島市HP(市民向け市政情報条例・規則(鹿児島市例規検索システム)鹿児島市例規集 )「鹿児島市屋外広告物条例施行規則」(平成8年3月29日,規則第56号)

*3:鹿児島市HP(市民向けまちづくり都市計画・再開発)「屋外広告物の実態調査

*4:横須賀市まちづくり条例研究会著・出石稔監修『自治体職員のための政策法務入門4 まちづくり課の巻 中高層マンション問題を円満解決するには』(第一法規,2009年)122頁

中高層マンション問題を円満解決するには (自治体職員のための政策法務入門 4 まちづくり課の巻)

中高層マンション問題を円満解決するには (自治体職員のための政策法務入門 4 まちづくり課の巻)

*5:北村喜宣『分権政策法務と環境・景観行政』(日本評論社,2008年)207頁

分権政策法務と環境・景観行政

分権政策法務と環境・景観行政

*6:今村都南雄『官庁セクショナリズム』(東京大学出版会,2006年)15頁

官庁セクショナリズム (行政学叢書)

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