鳥取県平井伸治知事は5日の定例会見で、県庁内の縦割り行政を束ねる「統轄監」のポストを4月の組織改編で新設することを明らかにした。部長級を充てる方針だが、知事、副知事に次ぐ事実上のナンバー3で、庁内で横断的に進めている環日本海航路の振興や経済対策などに取り組む。
 県では、地方自治法の改正に伴って昨年7月に出納長を廃止したが、県議会などから県政の機能が低下するとの声が上がっていたため、出納長に代わるポストを検討してきた。県行財政改革局によると、組織改編で「統轄監」の新組織も設ける。総務や県民とのパイプ役を担う広報、現在は企画部に所属している次世代改革チームなどを新組織に移行する。県庁内には、定期貨客船の利用向上や景気が低迷する中での雇用確保、環境問題を解決しながら経済発展を目指す県版グリーンニューディールなどのプロジェクトチームをそれぞれ設けており、トップの統轄監はチームのまとめ役を担うという。
 副知事を2人制にする案もあるが、平井知事は会見で「いたずらに大きく二つの縦割りをつくるのはいかがなものか」と否定。統轄監について「県庁全体を見ながら企画調整したり、県政を推進するなど、さまざまなプロジェクトを進める人材にしたい」と説明した。

本記事では,鳥取県において「統括監」を設置する方針であることを紹介.
2010年2月5日付の同県知事会見を拝読すると,設置目的としては,「県庁全体の政策立案,そして実行力を高める」ことにあり,「統轄監」には「県庁全体の縦割り組織をスムーズに束ねていきだき,いろんなプロジェクトを走らせる,そういう人材として活用いたしたい」*1とも目的がある,という.記者からの質問に対しては,「副知事を端的に2人にするというのは,鳥取県の場合は過ぎるのではないか」との見解を示されるとともに,「副知事を複数制にして,いたずらに県庁内に縦割りを大きく2つ作るのもいかがかな」との考えから,「一般職の中で部長級で,各部を統轄するような考え方で企画調整をしたり,県政の推進にあたったり,そういうポストを作るのが良いのではないか」*2とある.
人選に関しては,必ずしも,「「はじめに職員ありき」の組織形成」*3ではないかとも想定されるものの,「県庁の中から登用」されることになり,「他の部長さんが一目置くようなタイプのかた」が「1人」想定されている,という.「マニフェスト実行」「あるいは将来ビジョンを推進をしていく」等の「企画部隊をその下に設け」,「県民とのパイプ役という点」からも「広報担当もその下に置」き,更には「県庁の中の庶務的な業務」*4も所掌されるという.
2009年10月23日付の本備忘録にて記した自治体における庁議制度という「自治体内会議」とともに観察をさせてい頂いている対象の一つが,2010年1月24日付の本備忘録でも触れた「○○監」の職名をもつ職.自治体機構として「総合性」*5を企図されつつも,「個別事業単位がサイロ」化へと至る慣性が観察され,これを「防ぐべく数々の補完的な制度」*6として配置・再活用される庁議と同職の二つの制度.同会議体及び同職の配置を通じて,いわゆる「総合調整の総合調整がなされる構図」*7が同職を通じて図られているのではないだろうか,との関心からの継続的観察(個別自治体への観察結果は細々と記して,出してはおりますが,来年度には,少しまとめてみたいですね).同県の同職の設置も観察が楽しみ.設置され,一定期間の運用を経た後の同職の様相は,是非,観察に伺いたい.

*1:鳥取県HP(知事のページ鳥取県知事記者会見録平成21年度知事記者会見録)「知事定例記者会見(2010年2月5日)

*2:前掲注1・鳥取県(知事定例記者会見(2010年2月5日))

*3:大森彌『官のシステム』(東京大学出版会,2006年)62頁

官のシステム (行政学叢書)

官のシステム (行政学叢書)

*4:前掲注1・鳥取県(知事定例記者会見(2010年2月5日))

*5:金井利之『自治制度』(東京大学出版会,2007年)45頁

自治制度 (行政学叢書)

自治制度 (行政学叢書)

*6:張世進『ソニー VS.サムスン』(日本経済新聞社,2009年)196頁

ソニー VS.サムスン

ソニー VS.サムスン

*7:牧原出『行政改革と調整のシステム』(東京大学出版会,2009年)248頁

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)