大阪府橋下徹知事が透明度の高い府政運営を目指して掲げる「究極の情報公開」を充実させようと、府は31日、ホームページに知事交際費の支出などを公表しているかどうかや、情報公開請求への対応状況を都道府県別に調査した結果を発表した。先進的な取り組みを参考にする狙い。
 昨年12月、各県の担当者にメールで調査票を送信し、未回答だった茨城、東京、愛媛、高知の1都3県と、回答したものの非公表にするよう求めた千葉県を除く42道府県のデータをまとめた。公開、非公開の別にとどめ、順位は付けなかった。
 ホームページの調査は20項目。知事の交際費など4項目はすべての道府県が、予算編成過程も過半数が公表と回答した。裏金問題があった岐阜県はタクシーの使用状況を、新潟県は幹部職員の略歴を、全国で唯一公表していた。情報公開請求への対応は12項目で調査し、全国学力テストの市町村別結果は8府県が公開・部分公開と回答。ただ市町村が特定できる形にしているのは大阪、鳥取の2府県にとどまった。

本記事では,大阪府による都道府県毎の情報公開状況の公開の取組を紹介.同取組に関しては,同府HPを参照*1
同府における同取組は,「各都道府県によって内容に差があるため単純な比較や順位付けをすることは困難」ではあることを前提としつつ,「住民及び各都道府県で情報を共有することにより,情報公開制度の一層の推進につながることを期待して結果を公表」を目的に実施.具体的には「調査」*2によるとあり,本記事によると「各県の担当者にメールで調査票を送信」する調査手法を採用された模様.情報公開という取組に対する「同僚評価(Peer-Review)」*3とも整理ができそうな取組,興味深い.
同府において調査及び整理された項目は,「1.知事の動き」,「2.知事・副知事の交際費執行状況」,「3.幹部職員会議の概要」,「4.幹部職員略歴(部局長以上,知事・副知事は除く)」,「5.部局長マニフェスト」,「6.退職者の再就職情報(課長級以上)」,「7.予算編成過程」,「8.普通会計のバランスシート(貸借対照表)」,「9.政府予算案に関する提案・要望活動」,「10.主な職員団体との交渉概要」,「11.職員名簿」,「12.職員の処分状況」,「13.職員への給与支給状況」,「14.一定の公職者からの提言等」,「15.住民からの提言等」,「16.審議会の会議録等」,「17.指定管理者の選定過程」,「18.審査基準・処分基準・標準処理期間」,「19.社会福祉法人に係る監査結果」,「20.タクシーチケット使用状況」の20項目.
また,あわせて「情報公開請求への対応状況等」に関しても調査・整理が行われており,「1.首長交際費の相手方情報」,「2.新規事業に係る予算要求の概要及び金額」,「3.本庁清掃業務委託の予定価格情報(入札前)」,「4.本庁清掃業務委託の予定価格情報(入札後)」,「5.A4コピー用紙の予定価格情報(入札前)」,「6.A4コピー用紙の予定価格情報(入札後)」,「7.全国学力・学習状況調査の結果(学校別)」,「8.全国学力・学習状況調査の結果(市町村別)」,「9.会計検査院の検査に係る照会文書「実施検査の結果について」及びその回答文書」「10.情報公開請求可能な者の範囲(条例の規定)」,「11.閲覧手数料」,「12.コピー代(A4判片面1枚・単色刷りの場合)」の12項目が公開状況が公開されている.
「情報公開制度は,行政統制のための情報基盤」*4と解されるなかで,下名が個人的に興味をもって拝読した事項は,2009年10月23日付の本備忘録にて記した,下名の中心的観察課題である庁議制度という「自治体内会議体」としての,「3.幹部職員会議の概要」*5.同調査が想定する「幹部職員会議」の範囲は,本資料のみでは把握できないものの,栃木県,埼玉県,山梨県,長野県,滋賀県京都府大阪府兵庫県鳥取県島根県徳島県長崎県,宮崎県の2府11県において公開されていることが分かる.「自治体内会議体」内容の公開を通じて,幹部職員における審議過程に対する「統制」的効果も想定されそう.
一方で,会議体自体の運営と「公開」の効用に関して考えてみると,「会議とは」参加する者「同士の議論であり」,参加する者は「議論をする相手方」「の発言や主張に関心を集中させて自己の主張を述べる.ときには,妥協をするために,相手方の言い分に耳を傾け,譲歩の姿勢を示す.それによって歩み寄りが可能になり,最終的に合意に至ることが可能になる」*6との観察もあり,下名も又,市レベルへの観察では,「会議は「非公開」」「で行われることで」「活発な議論の可能性を確保することになっている」*7取組も観察する.そのため,公開される会議体では,「会議の席上スジを主張して正面衝突するような事態を慎重に避ける」*8運営もまた想定されなくもない.公開の効用はどのようなものなのだろうか.
下名,市区における「自治体内会議体」としての「庁議制度」を観察対象としてきたこともあり,都道府県レベルの状況は未観察.年度初めということもあり,今年度からは都道府県レベルにおける「自治体内会議体」に対しても,(下名個人の観察となり,「非公開」となりますが)その観察対象を拡大しよう,と思ふ.

*1:大阪府HP(府政運営・市町村組織と仕事大阪府の情報公開制度のご案内)「情報公開に関する都道府県の取組状況調査結果

*2:前掲注1・大阪府(情報公開に関する都道府県の取組状況調査結果)

*3:藤垣裕子『専門知と公共性』(東京大学出版会,2003年)129頁

専門知と公共性―科学技術社会論の構築へ向けて

専門知と公共性―科学技術社会論の構築へ向けて

*4:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)214頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*5:大阪府HP(府政運営・市町村組織と仕事大阪府の情報公開制度のご案内情報公開に関する都道府県の取組状況調査結果)「3.幹部職員会議の概要

*6:森田朗『会議の政治学』(慈学社,2007年)131頁

会議の政治学 (慈学選書)

会議の政治学 (慈学選書)

*7:松井望「自治体行政機構における集中と分散−「会議体による調整」と「職による調整」−」『分権時代における市町村の組織及び人材に関する研究会報告書』(財団法人自治研修協会,平成22年3月)38頁

*8:大森彌「日本官僚制の事案決定手続き『年報政治学』Vol.36,1986年,112頁