屋内での喫煙を全国で初めて規制する県公共的施設受動喫煙防止条例が1日、施行された。罰則を設けているのが特徴で、学校などでの違反は1日から罰則適用の対象となる。喫煙をめぐる国内の社会的な環境が、大きな転換点を迎える。
 学校、病院など公共性の高い施設(第1種施設)は、喫煙所を除き禁煙。一定規模以上の飲食店や宿泊施設など(第2種施設)は、禁煙か分煙の選択になる。分煙や、第1種施設内などに喫煙所を設ける場合は、たばこの煙が喫煙禁止区域に流入しないよう仕切りを設けるなど、県が定めた基準を満たす必要がある。
 第1種施設での違反は1日から罰則の適用対象になるが、第2種施設での違反に対する罰則は1年後の4月から適用。小規模の飲食店や宿泊施設などは「努力義務」で規制の対象外。特定の人しか出入りをしない事務室、住居などは規制の対象外となっている。罰則の過料(金銭罰)は、喫煙禁止区域での喫煙に対して2万円以下、施設管理者の義務違反には5万円以下と設定されている。
 松沢成文知事は施行にあたり、「みんなで協力し、受動喫煙のない社会をつくるため、取り組んでいきたい。素晴らしい成果を挙げられると確信をしている」と語った。

全国で初めて屋内での喫煙を規制する県の受動喫煙防止条例が1日、施行され、喫煙所以外では禁煙を義務づけられた百貨店や公衆浴場などでは「禁煙」を表示するなど条例施行をアピールした。一方、罰則適用が来年4月からの大規模飲食店などでは、分煙設備や喫煙所設置には多額のコストがかかることなどから、対応を先延ばしにするケースもあった。
 横浜市中区の横浜中華街にあるローズホテル横浜では、客室を除き、ロビーやレストラン、宴会場などを全面禁煙にした。喫煙ルームは、2階の約5平方メートルの備品倉庫を改装してつくった。同ホテル内の中華料理店「重慶飯店」も、分煙から全面禁煙に転換し、店頭に「禁煙」のプレートを置いた。同店の大串美孝支配人(37)は「喫煙客が離れる不安はあるが、お客さんのほとんどが禁煙席を希望しており、全面禁煙のメリットもある」と話した。同市港南区京急百貨店では、10階レストラン街に約800万円かけて整備した喫煙所などを除いて、この日から全館禁煙に。「吸わない人には、吸わせない」などと記したポスターが掲げられた。県公衆浴場業生活衛生同業組合では県内の226軒で、脱衣場に禁煙の表示板を掲げて店頭に灰皿を設置した。
 一方、ファミリーレストランを運営する「すかいらーくグループ」が分煙にしたのは6店舗。県内約400店舗の改装には「コストがかかるために夏までずれ込む」という。横浜駅前のホテル「横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ」のバーは、罰則が適用されない来年3月までは、喫煙を認める構え。「喫煙客のグループが6割を占め、売り上げに響くため」としている。京急百貨店を訪れた横浜市港南区の主婦(31)は「たばこの煙で食事がまずくなる」、同区の男性(78)も「昔は吸わない人が嫌な思いをしていた」と条例を歓迎。横須賀市の主婦(30)は「街全体に、もっと喫煙所を作るべきだ」、横浜市南区の会社員男性(37)も「食事をした席で一服できず、ストレスがたまる」と話していた。

民間を含めた公共的施設での喫煙を規制する県受動喫煙防止条例が1日、施行された。規制対象のホテルや飲食店には戸惑いの声がなお残るが、愛煙家には冷静な受け止めも目立つ。肩身の狭い思いを一層強いられ、紫煙とともにはき出すのはあきらめか、それとも…。
 銀幕の向こう、たばこをくゆらす名優たち。喫煙者なら、そんなシーンについ一服いきたくなるのが映画館。横浜市中区のシネマ・ジャック&ベティにとって、だから館内2カ所の喫煙コーナーを撤去するのは苦渋の決断だった。「年配客が多く、本当は喫煙所を設置したかったが、設備投資費もスペースもなく、全面禁煙にした」。梶原俊幸支配人はそう話す。ただ利用者はむしろ冷静だ。都内在住のフリーカメラマン(59)は「都内でも駅周辺の路上など、たばこを吸えない場所は多い。吸うなら喫煙所で気兼ねなく吸いたいから。条例はいい流れだと思う」。観賞後、館の外に出てプカリとやりながら話した。
 昼時、横浜駅西口の喫煙所は、食後の一服を口にする愛煙家であふれていた。横浜市に住む男性会社員(29)はほとんどあきらめの風情だ。「仕事先にある喫煙所は何カ所か頭に入っている。場所が限られているから1カ所で2、3本吸いだめしなければ」駅近くのレストランで昼食をとったが、店内は禁煙。携帯灰皿を手に人目につかない路上で吸う機会が増えた。条例を機に禁煙も頭をよぎったが、「値上がりする今秋からと思っている」。
 一方、都県境の周辺からは「死活問題」の声も聞こえてくる。県旅館生活衛生同業組合箱根町)は「旅館にとって宴会場は”生命線”。宴会でたばこが吸えないとなれば、県外に客が流れる可能性もある。熱海市に隣接する湯河原町の旅館は特に危機感を持っている」という。「100メートルも歩けば町田市。禁煙にすれば、たばこを吸いたいお客さんは相模原側の店に来なくなる」。そう話すのはJR町田駅南口で居酒屋を営む女性経営者(61)。川を挟んだ向こうは規制のかからない東京都町田市。小規模店だから、禁煙、分煙は「努力義務」だが、釈然としない思いは募る。「居酒屋は一日の疲れを癒やす場所。たばこを吸えないのはおかしい」
 この日も開店とともに2人の客が来店し、酒を飲みながらたばこを吸い始めた。常連の男性(71)は「分煙は時代の流れかもしれない。ただ、神奈川だけではなく全国で規制をしなければ、不公平じゃないか」と話していた。

同記事群では,神奈川県において制定された受動喫煙防止条例の施行及び施行初日の状況等を紹介.2009年3月26日付の本備忘録にて,その制定取り上げた同条例,2010年4月1日より施行.詳細に関しては,同県HPを参照*1
同条例では,「公共的空間を有する施設」を「第1種施設」と「第2種施設」に「区分」し,「第1種施設」は「禁煙」,「第2種施設」は「禁煙又は分煙」と規定している.また,同条例第21条により,「第2種施設」のうち,「風営法第2条第1項第1号から第7号までに掲げる営業の用に供する施設」(1号営業の「キャバレー」,2号営業の「待合,料理店,カフェー」,3号営業の「ダンス飲食店」,4号営業の「ダンスホール等」,5号営業の「低照度飲食店」,6号営業の「区画席飲食店」,7号営業「マージャン屋,ぱちんこ屋等」*2,「事業の用に供する床面積から食品の調理の用に供する施設又は設備に係る部分を除いた部分の床面積の合計が100平方メートル以下の飲食店」,「事業の用に供する床面積の合計が700平方メートル以下のホテル、旅館その他これらに類する施設」に関しては,「特例第2種施設」と規定し,これらの施設では「努力義務」とされている.第2記事では,主に「第2種施設」における対応,第3記事では,主に「特例第2種施設」における対応を紹介.
同条例の制定過程に対する同県知事による回顧では,「県行政を推進する立場にいるものは,県民の健康を守ると同時に,生活者としての県民の現実とも向き合いながら,政策の「最適な解」を求めていく努力を惜しんではならない」*3との認識も示されている.そのため,恐らく,「最適な解」として,上記のような3つの施設へと画定された,とも解することができそう.3つに「行政対象を帰着」*4のされた一方で,「行政対象の流動性*5を内包するなかで,同条例の実効性確保の観点からは,「特例第2種施設」において,「時代遅れの司祭が現代の法廷を掌る」「規制的管理」ではない,どのような「誘因政策」を「まとめあげ」*6られるかは,要経過観察.

*1:神奈川県HP(くらし・交流(保健と福祉)たばこ対策かながわのたばこ対策)「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」及び「神奈川県公報」(平成21年3月31日 号外第14号)

*2:神奈川県HP(くらし・交流(保健と福祉)たばこ対策かながわのたばこ対策:「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例)「規制対象施設」2頁

*3:松沢成文(2009)『受動喫煙防止条例』(東信堂)183,184頁

受動喫煙防止条例―日本初、神奈川発の挑戦

受動喫煙防止条例―日本初、神奈川発の挑戦

*4:金井利之「空間管理」森田朗編著『行政学の基礎』(岩波書店,1998年)170頁

行政学の基礎

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*5:前掲注4・金井利之1998年:178頁

*6:H.A.サイモン,V.A.トンプソン, D.W.スミスバーグ『組織と管理の基礎理論』(ダイヤモンド社,1977年)429頁

組織と管理の基礎理論 (1977年)

組織と管理の基礎理論 (1977年)