階段は健康器具――。移動に階段を利用し、メタボリックシンドローム内臓脂肪症候群)の予防や解消を目指す「階段を歩こうキャンペーン」を県が始めた。職員にできるだけ階段を歩くよう呼び掛け、エレベーターの利用を抑えて経費を削減し、地球温暖化対策にもつなげる“一石三鳥”の狙いで、県健康増進室は市町や事業所にも参加も呼びかけている。
 2008年度、県職員のうち、肥満(BMI指数25以上)とされたのは男性24・9%、女性10・4%。キャンペーン開始直前に出勤時間帯に県庁内で調査したところ、正面玄関近くのエレベーター利用者は約100人、階段利用者は約200人だった。当面、このエレベーターの利用者を約50人に半減させるのが目標だ。体重60キロの人が1階から最上階の6階まで階段で上がった場合、約10キロ・カロリーを消費できるという。キャンペーンの始まった3月に、県庁の階段に「ちょっとした運動習慣がメタボを防ぐ」、「階段は無料で使える健康マシーン」などと書かれたステッカーが張られた。9月上旬までの予定だが、期間の延長も検討する。6階で勤務する体重約90キロの男性職員(43)は「階段を使うと息が上がり、足も張ってきついけど、いい運動になります」と話していた。
 担当の県健康増進室の背戸兼浩明主任主査(47)は「階段なら日常生活の中に手軽な運動として取り入れられる。職員が率先して生活習慣の改善を図りたい」と話している。

本記事では,広島県庁舎内における階段利用促進の取組を紹介.2008年12月7日付の本備忘録において項目立てを行った本備忘録の妄想的・断続的観察課題のひとつ(本年度も継続的してみます)「庁舎管理の行政学」における「第4章:執務と憩いの空間としての庁舎」の観点からも興味深い事例.同取組に関しては,同県HPを参照*1
伊藤正次先生による都道府県知事の「直近下位の内部組織」の形態分析結果*2である「都道府県知事部局の組織編制」として分類された形態のうち,「局制(局−部−課)」を導入されている同県では,6つの同県庁舎(議会棟を除く)のうち,例えば「本館」の「フロア別各課」*3を確認をさせていただくと,次のように各局部課が配置されている.
まず,「1階」には,「副知事室」(え,副知事室が「1階」に,と驚き),「会計管理部」の「会計管理者」「会計管理部長」,「会計総務課」「審査指導課」,そして,「総務局」の「総務管理部総務課」,「秘書広報部秘書課」が配置.
次いで,「2階」では「知事室」,「副知事室」,そして,「総務局長室」と「総務局」「総務管理部」の「総務管理部長」「人事課」「行政管理課」,「財務部」の「財務部長」「財政課」,「秘書広報部」の「秘書課」と「広報広聴課」が配置.
「3階」では,「総務局」の「財務部」「財産管理課」「資産活用室」「営繕課」「設備工事室」「税務課」と「秘書広報部」の「秘書広報部長」と「国際課」,「企画振興局長室」と「企画振興局」の「政策企画部」「政策企画部長」と「分権改革課」「政策企画課」,そして,「農林水産局」の「農林整備部」の「農林整備部長」,「農林整備管理課」「林業課」「林業技術指導室」「森林保全課」が配置.
「4階」では,「農林水産局長室」と「農林水産局」の「総務管理部」の「総務管理部長」,「農林水産総務課」,「企画室」,「農業活性化推進課」,「団体検査課」,「農水産振興部」の「農水産振興部長」と「農業技術課」,「食品流通安全室」「農業経営課」「農産課」「畜産課」「水産課」「漁港漁場整備室」,「農林整備部」の「農林整備部技術総括監」と「農業基盤課」「農地整備室」「農道水利室」,と「広島海区漁業調整委員会」と「広島県内水面漁場管理委員会」が配置.
「5階」では,「企画振興局」の「研究開発部」の「研究開発部長」と「研究開発課」,「県立総合技術研究所」の「県立総合技術研究所長」「企画部」,そして「健康福祉局長室」と「健康福祉局」「総務管理部」の「総務管理部長」,「健康福祉総務課」,「企画室」,「こども家庭課」,「児童虐待防止・DV対策室」,「保健医療部」では「医療保健課」,「社会福祉部」の「社会福祉部長」,「地域福祉課」,「介護人材就業支援プロジェクト・チーム」,「社会援護課」「障害者支援課」「自立支援室」「高齢者支援課」「介護保険課」が配置.
そして,最も消費カロリーが高いことが想定される,最上階の「6階」では,「健康福祉局」の「総務管理部」「被爆者対策課」.そして「保健医療部」「保健医療部長」.「医務課」「医療政策課」「健康対策課」「健康増進室」「生活衛生課」「食品衛生室」「薬務課」,そして「病院事業管理者室」と「病院事業局」が配置されている.本記事で紹介されている取組を推進されている「健康福祉局健康増進室」は,「6階」となり,本記事に基づくと,同室の職員は,(まずは塊より始めよ.ではないかと思いますが)毎朝,同室の執務室へ行くことで「約10キロ・カロリーを消費」することが可能となる.
「組織主導型」とも称されてきた「異動の決定」*4において,「能力開発」が「異動の目的」*5ともされているものの,職員の皆さんの「生活習慣の改善」を想定する場合,それらの個々人の希望に基づき,高い階に配置されているフロアーへの「自己申告」*6による「異動」も一つの方策だろうか(そもそも,「座業」の執務が多い局部課を,より高層に配置する,という案も想定されますが).

*1:広島県HP(健康・福祉健康・被爆者対策健康づくり県民運動ひろしま健康づくり県民運動)「「階段を歩こうキャンペーン」実施中!

*2:伊藤正次「自治体行政組織の構造変化と改革課題」『都市問題研究』第61巻第4号,2009年4月号,63頁・『都市問題研究』は,2010年3月に刊行された「第62巻第3号」にて「休刊」と知り,ただただ驚き,そして,残念.

*3:広島県HP(県庁のご案内アクセス・庁舎配置・連絡先等県庁建物別各室(課)配置 )「本館フロア別各課(室)配置

*4:稲継裕昭『プロ公務員を育てる人事戦略』(ぎょうせい,2008年)32頁

プロ公務員を育てる人事戦略―職員採用・人事異動・職員研修・人事評価

プロ公務員を育てる人事戦略―職員採用・人事異動・職員研修・人事評価

*5:今野浩一郎, 佐藤博樹『マネジメント・テキスト 人事管理入門<第2版>』(日本経済新聞出版社,2009年)105頁

マネジメント・テキスト 人事管理入門<第2版>

マネジメント・テキスト 人事管理入門<第2版>

*6:前掲注4・稲継裕昭2008年:44頁