今秋実施される国勢調査で、京都市が職員から募っている指導員の要件に、国が禁止している税務担当者が含まれていることが18日、分かった。統計法は調査の目的外利用を禁じているため、総務省は税務や警察関係者を指導員から除外するよう自治体に通知しており、市に税務担当者を除くよう指導した。
 国勢調査の指導員は、調査票の記入漏れなどを点検したり、各世帯から調査票を回収する民間の調査員を指導する。市によると、以前から指導員の募集要件では統計担当者だけを除外し、税務担当者は含まれていた。総務省国勢調査の事務要領で指導員を「税務や警察に直接関係のない人」と規定する。「データが税務や警察担当者に渡ることは住民に目的外利用の恐れを抱かせ、調査への不信感につながる」と市に改善を求めた。
 市は「税務に関する情報が調査項目になく、データを目的外利用される恐れはないと判断していた」と釈明している。国の指導を受け入れるかは今後検討するという。

本記事では,京都市における国勢調査の取組を紹介.同市の国勢調査指導員において,同市の「税務担当者」も就任されていた,とのこと.
「市町村長の調査実施上の指導を受け」,「国勢調査員に対する指導,調査票その他の調査関係書類の検査及びこれらに附帯する事務を行う」*1とされる国勢調査指導員.「精度の高い調査を行うために」も「調査担当者の知識・経験が重要」*2となり,同種技能を有する職をよる,「会合」を通じた「技能伝達」*3が実施されている.
一方で,統計担当職員もまた,いわゆる「一括採用・一括管理としての内部管理型人事」*4運営が所与となるため,「人事異動の関係」では,「統計担当職員の統計事務経験が短くなっており,その弱体化が否めない状況にある」*5との観察結果もある.そのため,「弱体化」しつつある統計業務に関する「技能」を,いかに伝承するかが課題とも整理が出来そう.
特に,その「成員性」*6に関しては,「自治体では職員集団の一体性が強い」*7ことからすれば,同就職の経験者を指導員として配置されることも一つの方策.ただ,現職次第では,2008年65月22日付の本備忘録でも言及した税務職員の守秘義務とも抵触も危惧される懸念も想起されなくはない.技能と人材における,悩ましい課題.

*1:総務省HP(統計局・政策統括官(統計基準担当)・統計研修所統計データ平成22年国勢調査 )「国勢調査令」(昭和55年政令第98号)

*2:松井博『公的統計の体系と見方』(日本評論社,2008年)49頁

公的統計の体系と見方

公的統計の体系と見方

*3:松井望「調査統計における実施機構の内包と外延」『都市政策研究』第1号,2007年,139頁

*4:大森彌『変化に挑戦する自治体』(第一法規,2008年),250頁.

変化に挑戦する自治体―希望の自治体行政学

変化に挑戦する自治体―希望の自治体行政学

*5:前掲注2・松井博2008年:49頁

*6:田尾雅夫『公共経営論』(木鐸社,2010年)236頁

公共経営論

公共経営論

*7:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)201頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治