県と県教委はそれぞれ、法曹有資格者(弁護士)を任期付職員として初めて採用する。県では、県独自の政策の妥当性や法令への適合性を検証する体制の強化や、訟務事案への対応などが目的。県教委では、いわゆる「モンスターペアレント」への対応なども想定している。
 県によると、法曹有資格者を任期付職員として採用するのは、都道府県レベルでは東京都に次いで2例目。公募に5人の応募があり、1人が辞退、残りの4人の中から選考した。
 政策局・政策法務課の主幹として園川真代氏(28)、教育局・支援教育企画課の主幹として小林文子氏(32)を採用する。園川氏は7月1日付、小林氏は8月1日付の採用で、任期はともに3年間。給与年額は、約800万円。
 松沢成文知事は「高度な法務能力を持ったスタッフが新たに県職員に加わることは、政策法務部門の大幅な戦力アップにつながると、大変心強く思っている」などと期待感を述べた。

本記事では,神奈川県における任期付職員採用の取組を紹介.法曹有資格者を2名採用.本記事でも紹介されているように,同採用に当たり,2010年2月より「公募」により実施.公募要件等の詳細に関しては,同県HPを参照*1
応募資格は,「法律に関する高度な専門知識を有するとともに,法曹有資格者として訴訟活動に関する実務経験が2年以上(平成22年6月30日時点)あること」と「司法修習生の修習を終えていること」の2つ.「政策局政策調整部政策法務課」と「教育局支援教育部支援教育企画課」にそれぞれ1名づつ勤務される2名を公募.公募に際しては,「政策法務・訟務」と「教育関係」における「訴訟・法令」業務を担当されるとされており,いずれも「「職員が対応する訴訟案件等の指定代理人」「訴状の確認,訴訟資料の確認・整理,準備書面等の作成支援」を行うことでは共通ではあるものの,「政策法務・訟務」では,「施策の法的な妥当性や,法令への適合性の検証等」「条例案や法案への提言案の検討等に係る法制上の助言・指導」,他方の,「教育関係」では「学校現場で発生する諸課題に対する法的観点からの助言,指導」「上記事例の整理・分析及び学校現場での課題解決,未然防止のための普及啓発」を行うという,「一般業務レベルで登用」*2を企図されていることが,それぞれの職における特徴的.
法曹資格者という「専門性」を有する方の採用においても,職員として採用となると,「「普遍的」な専門能力を,当面する職場・職域の必要に応じて修正・発展させたもう一つの能力」とされる「職務能力」*3や,「継続的な営為組織」において「重要」となり,「個別には重要ではなく,部外者には意味の薄い知識・技能も多く含まれる」,「さまざまな固有名詞と個体差にかかわる情報を入手し,可能なかぎりそれを自己に利用する」「職場能力」*4の把握が必要になることも想定される.そのためか,採用選考手続では,「第一次選考」として「職務経験及び実績書の内容に基づき,適性等を審査」される「書類審査」と「必要な専門知識,職務遂行能力,適性等を審査」する「論文」試験の後には,「第二次選考」で「必要な専門知識,職務遂行能力,当該業務に対する適格性等について審査」される「口頭試問」と,それに加えて,「人物・性向,県行政における法曹有資格者として必要な能力・意欲等について審査」される「面接」*5も実施されている.
ただ一方で,その選考手続においては,同職の「専門性」が採用基準として重きが置かれている模様.その際,確かに,「法律に強い職員」のうち「職人型」*6により質題されることも想定されなくもないものの,情報の非対称性ならぬ,いわば「専門能力の非対称性」が想定されるなか,選考側はどのような体制をもって,選考手続を実施されたのだろうか.興味深い.要確認.

*1:神奈川県HP(神奈川県記者発表資料2010年2月 神奈川県記者発表資料)「新たに法曹有資格者を任期付職員で募集します!−法曹有資格者(弁護士等)を県行政分野で活用−」(平成22年2月26日,記者発表資料)

*2:大杉覚「都市自治体における行政の専門性確保:法曹有資格者の活用を手がかりに」『都市とガバナンス』Vol.13,2010年3月,77頁

都市とガバナンス 第13号

都市とガバナンス 第13号

*3:水谷三公『官僚の風貌』(中央公論新社,1999年)360頁

日本の近代 13 官僚の風貌

日本の近代 13 官僚の風貌

*4:前掲注3・水谷三公1999年:362頁

*5:前掲注1・神奈川県(新たに法曹有資格者を任期付職員で募集します!)

*6:鈴木潔「行政事件訴訟法と訴訟法務」『Jurist』No.1394,2010.2.15,68頁