徳島県鳴門市の特別職職員採用に関する条例案の審議の手続きをめぐり、市議会と市長が対立している問題で徳島県は16日、市議会が申請した自治紛争処理委員による調停に乗り出す、と発表。弁護士1人と大学教授2人を委員に任命した。
 委員は同日、県庁で会合を開き、双方の当事者から話を聞くことなどを決めた。市議会は6月、特別職職員を議会が独自採用できるなどとした条例案を可決したが、泉理彦市長が審議と議決のやり直しを求める再議書を提出。議会が手続き上の不備を指摘してこれを受け取らなかったため、条例は公布されず、宙に浮いた状態になっている。議会は7月20日、県に調停を申請していた。
 総務省によると、都道府県で自治紛争処理委員による調停が実施されるのは1985年以降、5件目。

本記事では,徳島県において「自治紛争処理委員」制度を通じた調停を実施の方針であることを紹介.
2009年5月13日付の本備忘録にて記録した,地方分権一括法制定に伴い,従来の「自治紛争調停委員」から,「調停制度,審理制度のほかに勧告制度」*1が加えられ,自治体間及び自治体の機関間における紛争の調停・審査勧告・審理決裁を行うことを目的として,3名の「独立」*2した独任制の審査機関である同制度.同県における同委員の概要は,同県HPを参照*3.本記事を拝読すると,後者である「自治体の機関間」における「紛争」への調停を予定されている模様.
いわば,「紛争」という名の「対立」もまた「即病理ではない」*4との見解とも共通して,「権力分立は統治制度の1つの知恵であり,抑制と均衡という「対立」が発生することは,むしろ望ましいこと」*5との認識に立つ場合,その「対立」に関しても,金井利之先生によると,「首長に非があるか,議会に非があるか,両者に非があるか,制度に非があるか」を「鑑別」する「基準」*6に基づく判断が求められる,という.
文字通りの「機関対立」*7の状況下において,本記事でも紹介されているようにその制度運用自体が限定的である,「静かなる制度」である「自治紛争処理委員」制度が,モノ言う制度として鑑別することになるのだろうか.今後の,同制度の運用状況は,要経過観察.

*1:地方自治制度研究会『Q&A改正地方自治法のポイント』(ぎょうせい,1999年)169頁

Q&A改正地方自治法のポイント

Q&A改正地方自治法のポイント

*2:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)1107頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*3:徳島県HP(組織県民環境部地域振興総局市町村課)「自治紛争処理委員

*4:今村都南雄『官庁セクショナリズム』(東京大学出版会,2006年)218

官庁セクショナリズム (行政学叢書)

官庁セクショナリズム (行政学叢書)

*5:金井利之「首長と議会の対立を超えて」『ガバナンス』No.112,2010年8月,22頁

ガバナンス 2010年 08月号 [雑誌]

ガバナンス 2010年 08月号 [雑誌]

*6:前掲注5・金井利之2010年:22頁

*7:村上祐一「自治体の統治システム」『テキストブック地方自治第2版』(東京経済新報社,2010年)75頁

テキストブック地方自治 第2版

テキストブック地方自治 第2版