全国市民オンブズマン連絡会議が3日に発表した予算編成過程の透明度ランキングで、岐阜県は24点で全国最下位となった。市民に開かれた予算づくりの在り方が求められている中で、旧態依然とした県の姿勢が示された形だ。同会議は「編成過程を公開していないところに(市民参加に対する)やる気のなさが出ている」と批判している。
 県がホームページ(HP)で公開しているのは、採点対象となった30項目のうち財務諸表など7項目だけ。予算の編成過程では、編成方針をのぞき、部局ごとの予算要求(事業内容や額、財源内訳、議会開会前のHP公開など)や査定(事務レベルや知事、議会前のHP掲載)など14項目はいずれも非公開で、配点45点に対してわずか4点と評価された。県民が編成過程で意見を述べる機会もない。県は「予算編成で各事業の要求や査定は随時行っており、要求だけを特定の時期にまとめたり、査定結果をまとめたりはしていない。国の予算とのかかわりの中で変更点も出てくる」と釈明する。
 しかし、90点を獲得して全国2位となった長野県では、各部からの主要事業と要求金額を12月上旬で区切ってHPで公開。県民が意見を書き込めるようになっているほか、知事による査定結果も査定が終わり次第、掲載している。岐阜県が予算を公開するのは、査定などを終えて固まった後。それでも予算概要と主要事業のみで、全事業を一覧で記した予算説明書については「少子化などのキーワードで全事業をHPで検索できる」として掲載していない。
 同会議が同時に行った恒例の情報公開ランキングでは、岐阜県都道府県庁別では1位となったものの、予算編成過程では逆に「不透明な自治体」の代表とされた。同会議事務局は「公開するかどうかはやる気の問題。編成の途中段階がまったく分からず、市民がそこで意見を言うことさえできない点に、岐阜県行政の姿勢が表れている」と話している。(中崎裕)

本記事では,岐阜県における予算編成過程の透明度に関する状況を紹介.全国市民オンブズマン連絡会議による調査結果に基づく「透明度ランキング」に基づく状況.同ランキングに関して,同会議HPを参照*1
同調査は,「法律で公表することが義務づけられている予算書や予算説明書を見ただけ」では「予算案の理解のしにくさ」*2の問題意識に基づき実施.調査項目としては,「情報公開の観点」と「予算策定にあたって市民の意見を反映する制度をもうけている」という「市民の行政参加の機会の保証」という「二つの観点から項目」*3選定.主要な具体的な項目と配点を拝見すると,「予算編成過程」には「45点」が配点されており,「予算編成方針」(4点),「予算要求」が(23点.内訳としては,「課別要求額」(4点),「部局別要求額」(3点),「事業別要求額」(11点),「予算要求情報のHPへの掲載時」(5点)),「査定」が(18点.内訳としては,「事務レベル査定」(5点.「査定額」(2点),「査定理由」(3点)),「知事・市長査定」(8点.「査定額」(3点),「査定理由」(5点)),「査定情報のHPへの掲載時期」(5点)),また,「市民が予算案に意見を述べる機会を設けている」ことに関しては「13点(内訳としては,「予算編成過程で意見を述べる機会がある」(5点),「提出された意見を公表している」(4点),「意見への回答を公表している」(4点))」*4とされている.これらの項目に基づく調査の結果では「トップとなったのは鳥取県,2位が長野県,3位が大阪府で,最下位が岐阜県という結果」*5にあると,同調査結果が整理されている.
同調査における項目のうち,下名個人的な関心からは,「市民が予算案に意見を述べる機会」に関してであり,「制度を設けている自治体は,3県(長野県・鳥取県大分県)と3市(札幌市・名古屋市北九州市)」*6であるという.「予算編成・執行への住民の直接参加なども行われつつあ」り,「近い将来には,予算編成あるいは査定過程で」「住民の視線が直接に入るようになるかもしれない」との見立てがなされるものの,現在では「これらの動きは萌芽的」*7とも解される予算編成過程において,これらの公開・参加の取組を通じて,自治体の予算編成過程においてもまた観察されるとされる「攻守交代システム」*8が何らかの変容に至るのか,持続されるものであるのか,関心があるところ.同調査結果を参考にさせて頂きつつ,参加・公開されている自治体の予算編成の取組について,是非とも伺ってみたい.

*1:全国市民オンブズマン連絡会議HP(予算編成過程事務レベル査定(公開 結果発表 1位は鳥取県(10/9/3発表))「予算編成の透明度ランキング調査

*2:前掲注1・全国市民オンブズマン連絡会議(予算編成の透明度ランキング調査)1頁

*3:前掲注1・全国市民オンブズマン連絡会議(予算編成の透明度ランキング調査)2頁

*4:全国市民オンブズマン連絡会議HP(予算編成過程公開 結果発表 1位は鳥取県(10/9/3発表))「2010年度予算編成過程の透明度調査(都道府県)

*5:前掲注1・全国市民オンブズマン連絡会議(予算編成の透明度ランキング調査)5頁

*6:前掲注1・全国市民オンブズマン連絡会議(予算編成の透明度ランキング調査)5頁

*7:金井利之『実践自治行政学』(第一法規,2010年)219頁

*8:天川晃・稲継裕昭『自治体と政策』(放送大学教育振興会,2009年)101頁

自治体と政策 (放送大学大学院教材)

自治体と政策 (放送大学大学院教材)