政令指定都市に代わる制度として横浜市が提案している大都市制度の具体化へ向け、同市会大都市行財政制度特別委員会は、周辺自治体との対等、水平な広域連携の在り方について検討を開始した。年内にも素案をまとめる方針。一方、市サイドも有識者による広域連携・財政調整の研究会を設置。制度のメリットを具体的に示しながら、国などへの提案活動を行うとともに、市民への浸透を図る。
 5月開会の市会第2回定例会で、委員が入れ替わった同特別委。委員長に就任した鈴木太郎市議(自民党、戸塚区)は、広域連携の在り方は国が大都市制度を認めていく上で、最も重要なポイントだと指摘。「これまでに行政と市会が一定のコンセンサスを持って、望ましい制度について基本的な方向性をまとめた。今後は対等・水平連携が具体的にどういうものか、市会として掘り下げたものを示したい」と、特別委で合意された方針を示す。 
 一方、市が設置する「大都市制度における広域連携・財政調整に関する研究会」は、一橋大学大学院の辻琢也教授(行政学政治学)ら行財政制度の専門家で8人で構成。今月14日から検討を開始し、本年度中に検討結果(中間)をまとめる予定だ。市会からも、鈴木委員長と荻原隆宏民主党、西区)、牧嶋秀昭(公明党鶴見区)の両副委員長がオブザーバー参加する予定で、特別委での審議の参考にする。特別委、研究会ではいずれも広域連携の形を具体的に示す考え。「災害対策を例に取れば、自治体は河川によって分断され、連携が取りにくい。住民に身近な基礎自治体同士が広域行政を行うことによって、行政サービスの向上につながる」(鈴木委員長)。
 また、特別委では11月に、「大阪都」を掲げ市の分割を提案した大阪府と対立している大阪市、そして隣接する政令市の堺市を視察。さらに、大都市制度は国内に事例がないため、韓国ソウル市に隣接し、基礎自治体広域自治体の性格を併せ持つ仁川(インチョン)広域市も研究対象に位置付ける。

県は13日、自治行財政権確立に向けた有識者による研究会を創設すると発表した。地方の自主性を高める方策を広範囲に議論し、地方自治法の抜本的見直しに向けて国への提言をまとめる考え。
 メンバーは兼子仁東京都立大学名誉教授を座長に、憲法や行財政に詳しい大学院教授ら6人。18日に東京都内で初会合を開く。地方自治法のあり方をめぐっては松沢成文知事が昨年、「国家が地方自治体を管理する法律」と批判。新しい自治システムの構築に向けた「地方自治基本法」制定の必要性を国に訴えていた。同様の議論は政府の地方行財政検討会議でも進んでいる。

少し古い記事とはなりますが,両記事では,横浜市と神奈川県における自治制度に関する検討のための会議体の設置に関して紹介.
第一記事では,大都市制度を検討課題として,横浜市会に設置された「大都市行財政制度特別委員会」と市長部局に設置された「大都市制度における広域連携・財政調整に関する研究会」について紹介.同特別委員会に関しては,同市会HP*1,同研究会に関しては,同市HPを参照*2
同特別委員会は,「大都市制度の早期実現」と「その実態に対応する税財政制度の確立」を「目的」として,「平成21年5月29日」から「平成22年6月8日」*3の間で設置,開催され,「市当局におかれては,確定となった「新たな大都市制度創設の基本的考え方」《基本的方向性》を有効活用し,市民への効果的な広報による市民意識の高揚を図り,また,神奈川県や周辺自治体も含めた関連自治体への説明や連携を十分に行い,地方自治法の抜本改正など政府の地方制度改革に際し,時宜を失することのない要望活動を行っていくことを強く期待」*4との「まとめ」がなされた『大都市行財政制度特別委員会報告書』として.2010年5月6日に取りまとめ,同市会議長へと報告されている.ただ,本記事で紹介されている「周辺自治体との対等,水平な広域連携の在り方」に関して審議がなされている同特別委員会に関しては「招集通知」*5は掲載されているものの,同特別委員会の内容に関しては,現在のところ,市会HPには掲載されていない模様.公開後,要確認.一方,同研究会では,「大都市とその他の地域の『広域連携』や『財政調整』の具体的な仕組みを提案」*6されることを目的に設置.同研究会の詳細も,現在のところ,同市HPには掲載されていない模様.こちらも,公開後,要確認.
第二記事では,地方自治法の抜本見直しを検討課題として,神奈川県に設置された「神奈川県自治行財政権の法制的確立に関する研究会」について紹介.同研究会については,同県HPを参照*7.同研究会では,同県が取りまとめた「地方自治基本法(仮称)」*8に関して「さらなる研究を進める必要」があるとの認識から,「自治行財政権をはじめとした新たな地方自治法制の調査及び研究」を行うことを目的に設置される模様.同研究会に関しては,2010年10月18日からの開催とあり,開催後,その内容に関しては,要確認.
横浜市と同市が位置する神奈川県という,神奈川県内という区域内でやや「多極分散型」*9な議論が行われているようではなくはないものの,前者は,大都市制度という「特例主義」*10,後者は自治制度という普遍主義的とその焦点が異なり,議論が展開される模様.ただ,これまでに培われてきた幾重もの「議論 (アーギュメント)」*11としての地方自治制度論を踏まえて,「イモビリズムからの脱却」*12がなされ,その「決断」*13にも至る道筋が示されることになるのだろうか.いずれも審議状況も,要経過観察.

*1:横浜市HP(横浜市会審議結果・報告書委員会活動概要)「大都市行財政制度特別委員会(平成21年5月29日〜平成22年6月8日)

*2:横浜市HP(記者発表資料2010年10月「新たな大都市制度における広域連携・財政調整に関する研究会」を設置します)「「新たな大都市制度における広域連携・財政調整に関する研究会」を設置します」(都市経営局大都市制度・地方分権推進課,平成22年10月8日)

*3:前掲注3・横浜市(大都市行財政制度特別委員会(平成21年5月29日〜平成22年6月8日))

*4:横浜市HP(横浜市会審議結果・報告書委員会活動概要)「大都市行財政制度特別委員会報告書」(平成22年5月6日)11頁

*5:横浜市HP(横浜市会本会議・委員会日程 平成22年第3回定例会大都市行財政制度特別委員会招集通知)「「新たな大都市制度における広域連携・財政調整に関する研究会」を設置します」(都市経営局大都市制度・地方分権推進課,平成22年10月8日)

*6:前掲注2・横浜市(「新たな大都市制度における広域連携・財政調整に関する研究会」を設置します)

*7:神奈川県HP(神奈川県記者発表資料2010年10月)「神奈川県自治行財政権の法制的確立に関する研究会の設置及び開催について」(平成22年10月13日)

*8:神奈川県HP(県の運営情報地方分権地方分権の広場地方自治基本法の提案(平成22年1月))『地方自治基本法の提案〜 地域主権国家の実現に向け、現行地方自治法を抜本改正し、地方自治システム全体の大転換を〜』(地方自治基本検討プロジェクトチーム事務局(神奈川県政策部広域行政課)平成22年1月)20頁

*9:西尾勝地方分権改革』(東京大学出版会,2007年)206頁

地方分権改革 (行政学叢書)

地方分権改革 (行政学叢書)

*10:金井利之『自治制度』(東京大学出版会,2007年)202頁

自治制度 (行政学叢書)

自治制度 (行政学叢書)

*11:真渕勝『行政学』(ぎょうせい,2009年)417頁

行政学

行政学

*12:横浜市HP(横浜市会審議結果・報告書委員会活動概要大都市行財政制度特別委員会(平成21年5月29日〜平成22年6月8日))「大都市行財政制度特別委員会資料平成21年12月22日 1 大都市制度について」6頁

*13:前掲注9・西尾勝2007年:209頁