佐賀県多久市は、来年度から部長制を廃止する。組織スリム化と意志決定の迅速化が狙いで、４部２０課から２３課に移行。全庁的な政策を立案する「総合政策課」と、各部で行っていた工事などの入札・契約事務を一括で行う「管財契約課」を新設する。３０日開会の定例議会に関連条例案を提案する。
総合政策課は、学校統廃合や定住促進などの重点政策を担当していた特命プロジェクト推進課の事業も引き継ぐ。事業量が増えていた福祉健康課を「福祉課」と「健康増進課」に分ける。部長制は２００５年４月から導入していた。現在の部長は課長になる。市総務課は「多久市程度の規模であれば課長制がちょうど良い。部長制で生まれた縦割りの解消にもつなげたい」と話す。
本記事では，多久市における機構改正案について紹介．現在の部制から課制へと改正される方針とのこと．詳細に関しては，現在のところ，同市HPでは把握できず，残念．公表後，要確認．
同市では，部制を2005年度に導入．導入当時の背景・目的等を確認のために，2004年12月の定例会の審議状況を拝読させて頂くと，「第6次行政改革大綱」に掲載された「職員の定数管理の適正化」2003年の「5年間にわたり39名の退職予定者のあとの不補充を計画」され，「今後もさらに職員が減少」の見通しからは，「現在の組織機構のままでいきますと，この39名の職員減少がありますと事務遂行上，支障を来すおそれ」を想定されている．そこで，「管理職の数を減らして管理職以外のいわゆる実務担当職員への影響を少なくしていきたいと考え」*1られたことが背景・理由であったことが分かる．
より具体的には，部制の導入を通じて，「政策遂行をより充実したものとしていきたい」こと，「出納事務等を集中させて合理化をしたい」こと，「部内の協力体制をこれまで以上に強化したい」こと，「統括室を設けますので，部長直轄でこれを設置し，部内の企画調整を図りたいということ」，「課を統廃合しますので，全体として管理職を減らしていきたいということ」，「部内の横の連携強化と市長からの特命事項を初め，指示系統が部長を介し迅速に対応できるようにしたいということ」，「将来的には部への予算枠配分や人事権を含めて検討していきたいということ」*2の7項目も企図されている．部制から課制への移行（再帰）に際しては，これらの事項が，部制導入後達成されたのか，又は困難であったかは判然とはしないものの，例えば，本記事を拝読させて頂くと，「4部20課から23課に移行」されることで，5項目の「管理職」数の抑制に関しては，更に実施されたようでもあり，一方で，6項目の「指示系統が部長を介し迅速に対応できるようにしたい」ことに関しては，本記事では，課制の導入により「意志決定の迅速化が狙い」とも報道されていることが同市の認識とすれば，部制により精密な「指示系統」が可能ではあるとしても，「迅速」化にはやや制約要因であった，とも解することできなくもなさそうか．要確認．
2009年12月4日付の本備忘録でも紹介した甲州市における部制の廃止の取組と同様に，「縦方向の階層を減らす」「フラット化」*3ではあるものの，いわゆる，中間職の「中抜き」によるフラット化ならぬ，部という首長の直近下位職を廃止される，いわば「上抜き」（又は「上飛ばし」）による「フラット化」の取組．同備忘録にて言及したように，市長・副市長の「直属部下数」が「増大する」*4こととなりそう．この間，部長が担うことが想定されてきた，「市長及び副市長の命を受け，その部の分掌事務を掌理し．所属職員を指揮監督する」こと，「市政の基本的施策及び重要方針の審議決定に参画するとともに，市長及び副市長を補佐し，必要があるときは，これを代理する」こと，「市政の基本方針に基づき，所管業務の目標及び実施方針等を立案，設定して，計画的に執行すること」，「部相互間の連絡協調に努めること」，「上司に必要な報告及び情報提供を行うこと」，「部内の管理業務を統括処理し，部内の適正な運営に努め，所管業務の効果的な執行を図ること」*5といった職務は，同機構改正の詳細は把握できていないものの，仮に， 同市の各部に設置されている「経営統括室」*6が残置される場合，同室が担当されることになるのだろうか，要確認．
*1:多久市HP（市政・計画・その他：市議会：平成16年12月 定例会-12月06日−目次 ：02号）「P.68 ◎ 市長（横尾俊彦君） 」
*2:多久市HP（市政・計画・その他：市議会：平成16年12月 定例会-12月06日−目次 ：02号）「P.105 ◎ 市長（横尾俊彦君）」
*3:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』（北樹出版，2007年）177頁
*4:前掲注3・礒崎初仁・金井利之・伊藤正次2007：177頁
