仙台市が、各種計画案に対するパブリックコメント(意見公募)を相次いで実施している。市の基本計画(仙台21プラン)が本年度で終了し、各種計画も節目を迎える「当たり年」が巡ってきたためだ。市役所内外では意見公募の趣旨に理解を示しつつ、「あまりにも数が多く、形骸化してしまうのではないか」との声も漏れている。
 現在、市が募集しているのは「教育振興基本計画」や「いきいき市民健康プラン」「図書館振興計画」「男女共同参画推進のための計画のあり方」など計8件に上る。今後、年度内に十数件の意見公募の実施を予定している。市はこれまで、市民の意見を市政に反映させる手段として、意見公募や公聴会、市民アンケートなどを行ってきた。ことし7月には市民の市政への参画促進や政策形成過程の公平性、透明性の確保を目的に「市パブリックコメント手続に関する実施要綱」を定め、明文化した。
 市は7月以降、「敬老乗車証制度の見直し素案」や「基本構想・基本計画(中間案)」など6件の意見公募を行った。敬老乗車証については609件の意見が寄せられたが、「市街化調整区域内に『農業振興に特に必要な施設』を建築、建設する場合の基準」への意見はなかった。市は「パブリックコメントは一つの手段にすぎず、さまざまな方法を組み合わせて市民の意見を取り入れている」と説明する。ある市議は「意見の公募自体は否定しないが、計画の策定に携わる審議会委員の公募数を増やすなど、市民の声を聞く有効な手段はある」と指摘した上で「『パブリックコメントを実施したから市民の意見を聞いた』という手続き論で終わらせないことを期待する」と話した。
[市パブリックコメント手続に関する実施要綱]基本的な施策に関する計画、市民の権利義務に関する条例制定の基礎となる計画をパブリックコメントの主な対象としている。計画案や関連資料を公表し、期間を定めて意見を募る。市は意見を十分考慮して意思決定し、市の考え方は提出意見と併せて公表する。運用指針によると、アンケートや説明会、ワークショップなどの中から最も効果的な手法を組み合わせて行い、市民参画の促進を図る。提出意見数の多寡でその意見を取り入れるかどうかを決めるものではない。

本記事では,仙台市におけるパブリックコメントの取組状況を紹介.「各種計画」の改訂の「当たり年」により,多くの計画がパブリックコメンが行われている模様.同市におけるパブコメの現状については,同市HPを参照*1
平成22年11月29日現在での更新記録に基づくと,「仙台市男女共同参画推進のための計画のあり方について(中間報告)」「仙台市消費生活基本計画(中間案) 」「次期「いきいき市民健康プラン」 」「次期「仙台市食育推進計画」」「仙台市教育振興基本計画」「仙台市健やかな体の育成プラン」「仙台市子ども読書活動推進計画(第2次) 」「仙台市図書館振興計画」の8計画が「現在意見を募集」されており,加えて,「仙台市敬老乗車証制度の見直し素案」「「仙台市基本構想・基本計画(中間案)」 」「杜の都環境プラン(仙台市環境基本計画)」「仙台市一般廃棄物(ごみ)処理基本計画」「「(仮称)仙台市中心部商店街将来ビジョン」」「市街化調整区域内に「農業振興に特に必要な施設」を建築又は建設する場合の基準」の4計画,1基準,1制度は既に「意見の募集を実施」*2されている.本年度は,12計画とまさに本記事にいう「当たり年」ともいえ,策定される方々,そして,パブリックコメントに参加される方々にとっては大変な機会.
「制度の存在自体が,行政を独りよがりにさせない効果をもっている可能性は否定できない」*3ものの,「この高低を探る観察可能な含意としては,行政が」「パブリックコメントをかける際に,どの程度の緊張感をもっているか」*4とも解されることもあるパブリックコメント.対象となる計画の量的増加により,その可能性として,緊張感なるものが「希釈化」*5されることにもなるのだろうか.一方で,住民運動への自治体の対応としての「住民運動操作法」のひとつには「資料山積み作戦」があるとされ,同作戦では「情報を積極的に提供しようとする方策などではさらさらなしに,真に意味のある情報の所在を隠蔽しようとする悪意に満ちた方策であることの方が多い」*6とも観察されたこともある.
パブリックコメントにおける大量掲載は,いかなる効用があるのだろうか,考えてみたい.

*1:仙台市HP「パブリックコメント手続

*2:前掲注1・仙台市パブリックコメント手続)

*3:真渕勝『行政学』(ぎょうせい,2009年)283頁

行政学

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*4:前掲注3・真渕勝2009年:284頁

*5:金井利之『自治制度』(東京大学出版会,2007年)202頁

自治制度 (行政学叢書)

自治制度 (行政学叢書)

*6:西尾勝行政学 新版』(有斐閣,2001年)212頁

行政学

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