現場の職員が発案し、実際の事業化を目指す横浜市の「現場力発揮職員提案事業」。3グループがそれぞれ提案し、半年かけて議論を重ねてきた。その中で、「ケアを必要とする高齢者の住まいと生活支援」の予算化が決まり、健康福祉局の2011年度予算案に300万円が計上された。02年度に始まった職員提案だが、08、09年度の検討で事業化がなく今回は3年ぶり。
 予算化が決まった「高齢者の住まいと生活支援」は、ケアが必要になっても安心して暮らし続けられるよう、高齢期に適した住まいの創出や、大規模公的団地などで住まい機能の強化を図る―というもの。高齢者が地域に住み続けるために必要な福祉施策・住宅施策であるとの評価を受け、11年度から事業・制度の構築に着手するという。メンバー8人のリーダーを務めた健康福祉局高齢施設課の安達友彦係長は「高齢化の進む団地でどのような支援施設が必要か、住民に考えてもらい、誘致していければ」と事業のビジョンを話した。職員提案を所管する市政策課は、今回予算の付かなかった提案「身近な福祉拠点『見守りの庭』制度」と「横浜型臨海学校の開校」も、関連する各局区に検討内容を情報提供し、実際の取り組みの中で参考にするとしている。

本記事では,横浜市における職員研修事業を通じた提案事項を,来年度の予算化された取組を紹介.同研究事業に関しては,同市HPを参照*1
「平成14年度から開始」された同事業.当初は,「職員自ら提案した「市民のための事業」を企画から事業化まで責任をもって推進するしくみ」とされており,「平成21年度」に「事業の見直しを行」され,「事業名称も「職員のやる気」や「市民サービス向上」をイメージする」目的から,「現場からの視点を重視」するよう「現場力発揮職員提案事業」*2と名称を用いられている.「事業化までの流れ」としては,「職員が自由な発想で,新規事業を提案」.その後,「提案について選考を通れば,検討メンバーとして兼務が発令され,事業化に向けた検討を約半年間」実施.その後,「検討結果を発表し,審査を通れば,翌年度から提案した職員自身が事業を実施」されるというもの.2002年度は7提案の全てが事業化*3,2003年度は5提案中3つが事業化*4,2004年度は9提案中4つが事業化*5,2005年度は4提案中2つが事業化*6,2006年度は2提案の二つとも事業化*7,2007年度は2提案中1つが事業化*8されている.このように,各年一定数の提案は事業化が図られているものの.2008年度には,4提案のすべてが事業化されず*9,2009年度には「応募提案件数2件」があるものの「検討提案件数0件」に留まっている.しかし,2010年度は本記事でも紹介されているように「検討提案3件が決定」され,「3軒から始まる身近な福祉拠点「見守りの庭」制度の創設」,「横浜型臨海学校の開校! 〜大人も子供も、心に残る思い出作りを横浜で〜」,「ケアを必要とする高齢者の住まいと生活支援」*10に取り組まれ,事業化された模様.
同事業,上記の通り,「検討メンバーとして兼務が発令」されるなかで,当該提案事業に関連しそうな特定の局のみの職員の方が参加されておらず.複数の局の属されている職員の方々が参加のうえで,提案内容を検討されている.いわば「ヨコの相互作用のためのしかけ」*11として機能されることが企図されている模様.ただ,事業化後は,その事業所管の確定や,提案された方々が実際にそれらの事業に携わることができるように,職員配置がなされてきているのだろうか,要確認.

*1:横浜市HP(組織都市経営局各種取組)「現場力発揮職員提案事業(旧事業名称:アントレプレナーシップ事業)

*2:前掲注1・横浜市(現場力発揮職員提案事業(旧事業名称:アントレプレナーシップ事業))

*3:横浜市HP(組織都市経営局各種取組現場力発揮職員提案事業(旧事業名称:アントレプレナーシップ事業))「平成14年度検討テーマの最終提案と審査結果

*4:横浜市HP(組織都市経営局各種取組現場力発揮職員提案事業(旧事業名称:アントレプレナーシップ事業))「平成15年度検討テーマの最終提案と審査結果

*5:横浜市HP(組織都市経営局各種取組現場力発揮職員提案事業(旧事業名称:アントレプレナーシップ事業))「平成16年度検討テーマの最終提案と審査結果

*6:横浜市HP(組織都市経営局各種取組現場力発揮職員提案事業(旧事業名称:アントレプレナーシップ事業))「平成17年度検討テーマの最終提案と審査結果

*7:横浜市HP(組織都市経営局各種取組現場力発揮職員提案事業(旧事業名称:アントレプレナーシップ事業))「平成18年度検討テーマの最終提案と審査結果

*8:横浜市HP(組織都市経営局各種取組現場力発揮職員提案事業(旧事業名称:アントレプレナーシップ事業))「平成19年度検討テーマの最終提案と審査結果

*9:横浜市HP(組織都市経営局各種取組現場力発揮職員提案事業(旧事業名称:アントレプレナーシップ事業))「平成20年度検討テーマの最終提案と審査結果

*10:横浜市HP(組織都市経営局各種取組現場力発揮職員提案事業(旧事業名称:アントレプレナーシップ事業))「平成22年度現場力発揮職員提案事業 検討スタート!!

*11:伊丹敬之+日本能率協会コンサルティング編著『場のマネジメント実践技術』(東洋経済新報社,2010年)21頁

場のマネジメント 実践技術

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