◇要求→査定→議決
 ◇各局VS財政課、ガチンコ勝負 「市民生活重視」「財政健全化」
 総額1兆6174億円に上る京都市の11年度予算案。景気回復は進まず税収が減る一方、生活保護・福祉の費用は増加の一途で借金残高は約2兆円に達した。「市民生活重視」と「財政健全化」の2枚看板を掲げる市の巨大な新年度予算は、どのように作られるのだろう。【田辺佑介】
 新年度予算編成は市政の1年間の方針を決める重要な作業だ。各局が必要な事業を示し、行財政局に予算を要求。財政課や門川大作市長らが査定し、議会の議決を経て成立する。「市民生活の向上」を最大の目標とする予算編成作業だが、先立つものはお金。まず、財政課が庁内の関係部局から、市民税の収入や医療・生活保護費などの支出について聞き取りをしたり、国の動きや経済情勢を見たりして見通しを立てる。11年度予算に向けては、10年度と同じように事業を続けた場合、179億円足りないことが判明した。その結果を踏まえ、市は最高幹部で構成する「未来まちづくり戦略会議」を開催。借金減らしをうたった「未来まちづくりプラン」や市財政改革有識者会議の提言を考慮し、編成方針を決める。11年度の新たな編成方針では、市全体で事業の優先順位を考え、似たような事業がないか調整するため、あらかじめ各局の裁量が認められた「局配分枠」が大幅に削られた。
 要求通りの予算を認めさせたい各局の担当者と、市全体の予算配分や財政再建も担う財政課との真剣勝負が本格化するのは次の査定からだ。査定は、財政課の担当者▽係長▽課長▽行財政局長−−を経て市長判断に至る5段階。編成方針や事業の前年度の効果、達成度などを政策企画室や同課が検証する行政評価結果などを参考に、各局と膝詰めで協議する。「目玉」となる新規事業では1事業の査定に数日かかることもある。
 こうしてできあがった11年度予算案。実質的な新たな借金額は前年度より319億円減る見通しだが、残高は約2兆円で財政再建には程遠い。事業が思い通り認められなかった課からは恨み節も聞こえてくる。予算案の詳細は15日に発表。別府正広財政課長は「どうしたら市全体でよりよい仕事ができるかを考えるのが予算編成。情勢は厳しいが、将来に展望が持てる予算になったと思う」と話す。
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 ◇京都市11年度予算編成の流れ
(10年)
5〜6月  行政評価に着手
8月ごろ  収支見通しの調査
      国の概算要求判明
10月4日 有識者会議が提言提出
10月   未来まちづくり戦略会議開始
11月1日 方針を各局区長に通達
  中旬  財政課査定開始
12月末  行財政局長査定終了
(11年)
1月    市長査定開始
2月7日  予算案概要を発表
2月15日 予算案詳細を発表?
2月22日 市議会に予算案提案?
3月15日 予算案可決?

両記事では,京都市における2011年度予算の編成過程を紹介.
2010年12月21日付及び同年12月18日付の本備忘録にて取り上げた,2011年度予算の編成より,「新規事業の要求に係る事業名,事業概要,要求額,所管課を公表」*1された同市における予算編成の取組.本記事では,編成過程を,概括的ではあるものの,総体的にその特徴を整理.参考になる報道.
「5段階」とも整理されている同市における「査定」段階.同市では「局横断的な予算枠」されるとともに,同枠内の一つ「投資枠については,局配分を行わず,すべての投資事業に対して査定を行い採択を決定」*2されており,2008年4月2日同年10月25日2009年10月17日同年10月18日付2010年9月10日付同年10月21日付の各本備忘録で取り上げた,自治体内における「財政部(局)統制」の頑強化の様相も窺えそうな取組.自治体の予算編成過程においてもまた「攻守交代システム」*3が観察されるものかは判然とはしないものの,本記事を拝読させて頂く限りでは,「財政部局が,予算編成作業を通じて永年なじみかつ培ってきた漸変主義的(incremental)意思決定ルールと,それに基づく意思〈調整〉技術」*4や「査定の目安」における「筋」,「横ならび」,「枠」,「勘」*5を窺うことできるものなのだろうか.要確認.

*1:京都市HP(市の組織行財政局各課の窓口財政課予算平成23年度)「1 概要(公開の方法,要求額の状況等)

*2:京都市HP(市の組織行財政局各課の窓口財政課予算平成23年度)「3 平成23年度予算編成通知)

*3:天川晃・稲継裕昭『自治体と政策』(放送大学教育振興会,2009年)101頁

自治体と政策 (放送大学大学院教材)

自治体と政策 (放送大学大学院教材)

*4:小島昭自治体の予算編成』(学陽書房1984年)170頁

*5:松本英昭『地方公共団体の予算』(ぎょうせい,1979年)360〜362頁