政府は17日、国の出先機関改革の具体化を進めるため地域主権戦略会議の下に設けた推進委員会(委員長・片山善博総務相)の初会合を開いた。出先機関の事務・権限受け入れの準備を進めている、大阪など7府県による関西広域連合や九州地方知事会の代表者を招いてのヒアリングを行ったところ、地方側は出先機関の事務と財源、職員を丸ごと移管するよう要望した。
 九州地方知事会から出席した広瀬勝貞大分県知事は、都道府県がブロック単位でまとまり、県域を越える国の事務を受け入れられるよう、新たな広域行政制度の在り方を規定した法律の骨子案を発表。具体的に検討するよう求めた。
 関西広域連合橋下徹大阪府知事も、出先機関を積極的に受け入れる考えを強調。その上で「現実にはいきなり全部(の機関の移譲)とはいかない場合もあるだろうから、段階的にという話もあるかもしれない」との考えを示した。

本記事では,内閣府に設置された地域主権戦略会議の下に設けられた「推進委員会」の開催について紹介.
「「アクション・プラン」(平成22年12月28日閣議決定)」に基づき「改革を円滑かつ速やかに実施するための仕組みとして」*1設置された「「アクション・プラン」推進委員会」.同委員会のもとには,更に,「直轄道路・直轄河川チーム」「公共職業安定所ハローワーク)チーム」「共通課題チーム」が配置される方針.本記事で紹介されている会合は,「「アクション・プラン」推進委員会」本体の開催の模様.現在のところ,初回の会合における配布資料及び議事概要等は公表されていない模様.公表後,要確認.
同推進委員会の設置が確定された「第11回」の「地域主権戦略会議」の「議事要旨」を拝読させて頂くと,「奈良県が入っていない広域連合に奈良県の事務も含めて移管するのは,今のシステムからは出来ない」「我々としては奈良県関西広域連合に早いうちに入っていただき,区域をそろえて移管をすることを相談して欲しい」「 理屈上は,奈良県にも国から移管をして,奈良県関西広域連合に事務委託するというプロセスがあれば,一応可能だけれども」,「奈良県は大きな問題」*2との見解が同会議において示されていた模様.また,2011年2月15日付の総務相の記者会見においても「奈良県を含む国の機関を,奈良県を抜きにした残余の府県で構成する連合に移管するというのは,やはり無理があると思うのですよね」*3との見解も示されている.
「民主主義の不足」*4とも評されることもある出先機関.「ブロック単位」*5という観念において,「行政対象を帰着」*6される点では,再編が困難との判断もされる出先機関があることも事実.一方,「広域で意思統一が図られた地域からの発意に基づき移譲する」*7という基調に対して,画定される「ブロック単位」次第では,その合意が得られない自治体もあり,「まだら」状態となり,「まだら」状態の発生と一定区域への移譲とのディレンマが生じる虞もある.同ディレンマの解消を図る上では,「ブロック単位」の観念の前提ともなる,出先機関の区域を「デフォルトオプション」*8とされず,再編や配置替えを行い,その後に,関西広域連合の構成される自治体へ,出先機関の権限を移譲され,その後,事務委託に至る手順を採用されることも考えられなくもない.ただ,再編,配置替えにより「自主的かつより総合的に実施」するうえでの「ブロック単位」*9に欠損が生じることになるのだろうか,「総合的」の概念を含めて,考えてみたい課題.

*1:内閣府HP(内閣府の政策地域主権改革地域主権戦略会議地域主権戦略会議会議開催状況第11回地域主権戦略会議 議事次第・配付資料(平成23年1月25日(火)))「資料2「アクション・プラン」の推進体制について(案)

*2:内閣府HP(内閣府の政策地域主権地域主権戦略会議地域主権戦略会議会議開催状況第11回地域主権戦略会議 議事次第・配付資料(平成23年1月25日(火)))「第11回 地域主権戦略会議 議事要旨」 2頁

*3:総務省HP(広報・報道大臣会見・発言等)「片山総務大臣閣議後記者会見の概要平成23年2月15日

*4:片山善博『日本を診る』(岩波書店,2010年)68頁

日本を診る

日本を診る

*5:内閣府HP(内閣府の政策地域主権改革地域主権改革に関する基本文書・閣議決定・工程表等))「アクション・プラン 〜出先機関の原則廃止に向けて〜 」1頁

*6:金井利之「空間管理」森田朗編著『行政学の基礎』(岩波書店,1998年)170頁

行政学の基礎

行政学の基礎

*7:前掲注5・内閣府(アクション・プラン 〜出先機関の原則廃止に向けて〜)1頁

*8:リチャード・セイラー,キャス・サンスティーン『実践行動経済学』(日経BP社,2009年)141頁

実践 行動経済学

実践 行動経済学

*9:前掲注5・内閣府(アクション・プラン 〜出先機関の原則廃止に向けて〜)1頁