育児に熱心な父親「イクメン」を増やそうと、山形県は新年度、育児休暇を取得した県内の民間企業に勤める男性に対し、奨励金の支給を始める。取得者本人に直接支給する事業は、東北では秋田県に続き2例目。
 連続で7日以上の休暇を取得するのに加え、勤務先の経営者や上司がワークライフバランスの意識向上に関する県主催のセミナーに参加することが支給要件となる。休暇期間が1カ月未満の場合は1人当たり5万円、1カ月以上は10万円を取得者本人に支給する。新年度当初予算案に事業費1500万円を盛り込んだ。
 県によると、子どもが生まれた県内のサラリーマン男性が、約1歳半になるまでに育児休暇を取得する割合は2010年調査で0.6%にすぎず、1.2%だった09年調査に比べて半減した。取得率が低い理由として県は「経済的理由や、職場の理解が得られないという不安がある」(沖津忍子育て支援課長補佐)と分析。奨励金支給と上司の意識向上という両面作戦で、不安解消と男性の育児参加を促すことにした。県は13年度までの3年間を重点期間に設定し、取得率を全国平均(09年度1.7%)の水準に引き上げる目標を立てた。沖津課長補佐は「男性の育児参加と出生数の増加は密接に関係している。育児と仕事の両立を後押しして、少子化に歯止めをかけたい」と話している。

本記事では,山形県における「イクメン」増加への取組を紹介.同取組に関しては,同県の「平成23年度当初予算概要」*1を参照.
取得率が「片手で数えられる程度」*2である,男性の育児休暇の取得の自制的要因として指摘される「所得ロス・キャリアロス・業務知識ロス」の「3つのロス」のうち,「奨励金」の支給による「所得ロス」の補填と,「最後は,職場の意識の変革」*3として,「勤務先の経営者や上司」への「県主催のセミナーに参加」を求める同県の取組.「男性の育児休業取得奨励金の支給」が「10,500千円」,「父親の子育て参加セミナーの開催」が「1,127千円」*4とされている.
ただし,本記事を拝読させて頂くと,前者の「支給要件」には,後者とされている模様.本記事内で紹介されている秋田県の同事業に関しても,「お父さんも育休促進事業実施要綱」を拝読させて頂くと,同要綱第1条において「男性の育児参加等について理解を深めるための研修を実施するとともに,育児休業の取得について一定の利用実績があった場合」*5と規定されており,同県と同様に研修の開催が要件とされているものの,秋田県の場合,「社内研修」の開催,同研修への同県からの「講師派遣に係る経費」*6の負担を行われている模様.「現場と切り離されるのが宿命のマネジャー」*7とも観察される経営者・管理職というマネジャーにとって,「イクメン」候補者の社員に関する情報分離化へと至らないこともまた肝要かとも思わなくもないものの,同セミナーへの参加を促す動機付けの仕組みもまた整備されているのだろうか,要確認.

*1:山形県HP(組織別一覧総務部財政課平成23年度当初予算等について)「平成23年度当初予算の概要(附 平成22年度補正予算)」12頁

*2:佐藤博樹・武石恵美子『男性の育児休業』(中央公論新社,2004年)14頁

男性の育児休業―社員のニーズ、会社のメリット (中公新書)

男性の育児休業―社員のニーズ、会社のメリット (中公新書)

*3:山田正人『経産省の山田課長補佐,ただいま育休中』(文藝春秋,2010年)237頁

経産省の山田課長補佐、ただいま育休中 (文春文庫)

経産省の山田課長補佐、ただいま育休中 (文春文庫)

*4:前掲注1・山形県平成23年度当初予算の概要(附 平成22年度補正予算))12頁

*5:秋田県HP(組織別案内産業労働部雇用労働政策課仕事と家庭の両立支援、多様な働き方)「お父さんも育休促進事業実施要綱

*6:秋田県HP(組織別案内産業労働部雇用労働政策課)「仕事と家庭の両立支援、多様な働き方

*7:ヘンリー・ミンツバーグ『マネジャーの実像』(日経BP,2011年)259頁

マネジャーの実像

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