玄海町は3日、定住促進のために設けている戸建て住宅の奨励金条例を一部改正し、賃貸集合住宅の新築の場合も最大600万円を支給すると発表した。同種の条例で集合住宅を対象としたのは、県内初という。7日開会の町議会に条例改正案を提案し、可決されれば新年度から実施する。
 町内には、社宅と町営住宅を除いて民間の賃貸集合住宅が1軒もない。6か所ある町営住宅には125世帯入居できるが、ほぼ埋まっているのが現状。今年度、募集に応じたものの入居できなかったのが9世帯あり、町外に住む町職員や小中教諭らから町内に住みたいとの希望があった。対象の賃貸集合住宅は1棟に4戸以上の入居が可能で、土地・建物の投資額が2000万円以上の場合。3・3平方メートル当たり4万円(町外建築業者の場合は3万2000円)を支給し、最高限度額は600万円としている。条例は2004年度から施行。町内で住宅を新築した場合、100万円を支給するなどの優遇措置がある。玄海町の人口は、10年の国勢調査で6379人。1955年の9359人をピークに減少傾向にある。

本記事では,玄海町における賃貸集合住宅新築への助成の取組方針を紹介.現在,実施されている同町の「住宅新築者」への助成制度を改正により,「賃貸集合住宅」を新築された場合においても,助成が行われる方針の模様.同町の現行の助成制度に関しては,同町HPを参照*1
2004年に制定された「玄海町定住促進奨励金条例」に基づき,「町外からの転入促進と町民の定住化を図り」「もって町の活性化に寄与することを目的」*2ることを目的に開始されている同取組.現行制度では,同条例第2条第1項により,「町内において住宅を新築(二世帯住宅とするための全面改築を含む.)し,又は住宅を購入した者」を対象に,「町に定住することを目的として,他の市町村から転入した者」へは「1世帯につき100万円を支給」され「世帯員1人につき10万円を加算」(同条例第4条第1項第1号),又は,「現に町内に住所を有する者で,町に定住することを目的とした住宅新築者等」に対しては「1世帯につき100万円」(同条例第4条第1項第2号)を支給され,「同一世帯」「1回限り」(同条例第3条第1項)と規定されている.
また,支給に際しては「当該住宅に入居」したうえで「住民基本台帳法に基づく諸手続が完了した後」(同条例第5条)に申請手続を認められることにより,居住を確実な条件とされている.また,更なる実効性の確保方策としては,「虚偽の申請その他不正な手段により奨励金の支給を受けたとき」や「奨励金の支給を受けた後」に「10年以内に当該住宅を売却」「若しくは賃貸借契約を締結し,又は世帯の全員が町外に転出したとき」には,「奨励金の全部又は一部を返還」(同条例第6条)を求めることができる,とも規定されている.
本記事で紹介されている同取組では,同条例を改正され,「集合住宅」も対象とされる模様.ただ,「賃貸集合住宅」の場合,同条例が企図する「定住」化志向とは反し,取得後,一定期間を経た後に,所有者による賃貸化への蓋然性も想定されなくもないが,「よく知っている相手には,厳しくできない」*3とも解されるものの,所有者を始めとして,一定期間賃貸契約された方へも捕捉等も「厳しく」われることになるのだろうか.来年度取り扱う予定ので,大学における講義・演習内のでの住まいと政策手法のテーマと関連して,考えてみたい課題.

*1:玄海町HP(くらしの情報こんなとき住まい・引越し)「定住促進奨励金

*2:玄海町HP(行政情報条例・規則玄海町例規集)「玄海町定住促進奨励金条例」(平成16年3月26日,条例第2号)

*3:嶋田暁文「執行過程の様相」大橋洋一編著『政策実施』(ミネルヴァ書房,2010年)224頁

政策実施 (BASIC公共政策学)

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