大分県は低層の公共施設を新築・増改築する際、原則として全て木造建築とする基本方針を策定した。県産材や県内の加工業者が製材した国産材を使い、木材の利用促進を図る。自治体の施設にとどまらず、民間の病院や福祉施設など公共性が高い建物についても木造化を促す方針。
 県林産振興室によると、県が整備する平屋または2階建て(一部の施設では3階建ても対象)で延べ床面積3千平方メートル以下の公共建築物は木造にする。消防法の規定や技術的な問題により不適当な場合や、災害時の活動拠点、危険物を貯蔵する施設などを除き、原則全ての施設が対象となる。
 中高層の建物や大規模施設は対象外だが、ホールや廊下、会議室などの内装に木材を積極的に用いる。建物以外の土木工事でも木材や木製品の利用を進める。県内の市町村にも公共施設木造化の方針を求めるとともに、木材の供給などで協力体制をつくる。また私立学校や社会福祉施設、病院・診療所、公共交通機関の旅客施設などの民間施設にも、補助金の活用などで木造化を呼び掛ける。方針は昨年10月に施行された公共建築物木材利用促進法に基づき、2月に策定。植林された杉などの森林資源が伐採期を迎えている一方、木材の需要が少なく伐採が進まないことが課題になっていた。林業や木材関連業の産業振興と森林の適切な整備を図る。広く一般の人が利用する施設に使うことで、木造建築の良さをPRする狙いもある。同室は「公共建築物は鉄筋コンクリートから木造へと大きく方針転換した。木材には材質のぬくもりや心地よさ、再生可能な資源で地球温暖化の防止につながるなどさまざまな側面がある。全県的な取り組みとして推進したい」と話している。

本記事では,大分県における公共施設の新築及び増改築に際して,木造建築とする方針を策定されたことを紹介.
2010年1月6日付の本備忘録で,その「縛り」の観点から,記録した「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」*1.制定された同法の第8条では,「都道府県知事」は「基本方針に即して,当該都道府県の区域内の公共建築物における木材の利用の促進に関する方針」を「定めることができる」と規定されており,同法の施行,及び,2010年10月4日に同省にて策定された「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」*2を受けて,同県においても同県「区域内の公共建築物」への「木材の利用促進」に関する方針を策定された模様.同方針に関しては,同県HPを参照*3
大分県公共建築物等における地域材の利用の促進に関する基本方針」を拝読させて頂くと,「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」に内容,論述ともに「即した」内容とされるなかで,「整備する公共の用又は公用に供する建築物」の範囲に関しては,相異がある.国の基本方針では,「広く国民一般の利用に供される学校,社会福祉施設(老人ホーム,保育所等),病院・診療所,運動施設(体育館,水泳場等),社会教育施設(図書館,公民館等),公営住宅等の建築物のほか,国又は地方公共団体の事務・事業又は職員の住居の用に供される庁舎,公務員宿舎等」*4と記載されている.
一方で,同県の同方針では,「広く大分県民の利用に供される社会教育・体育施設(図書館,美術館,青年の家,博物館,記念館,体育館,水泳場,公民館など),保健・衛生施設(病院,診療所,保健所など),社会福祉施設(児童福祉施設,老人福祉施設,障害者福祉施設など),教育・研修施設(幼稚園,小学校,中学校,高等学校,特別支援学校,専修学校各種学校,研修所,講習所など),行政施設(庁舎など),住宅施設(公営住宅,職員住宅など),研究施設(試験場,研究所など),その他の施設(保養施設、観光施設、公共交通機関の旅客施設及び休憩所など)」*5とある,同法において「木材の地産地消等により,木材関連事業の振興を促進し,併せて安定的な雇用の増大を図り,山村をはじめとする地域の経済の活性化に貢献することを旨として,木材利用を促進すること」と「附帯決議」*6ともされているなかで,分野での共通性はあるなかで,例示される個別施設の明細度は高められている.「できるだけ近くの山林で収穫され加工された木材」を「建築その他の用途に使おう」という「地産地消林業*7の色彩を持っている模様.
同法では第9条において「市町村は,都道府県方針に即して,当該市町村の区域内の公共建築物における木材の利用の促進に関する方針」を「定めることができる」とも規定されており,上記の「基本方針」では何れも「作成することが期待」*8されるとの認識が示されている範囲ではあるものの,都道府県は国を,市町村は都道府県を「即して」方針を策定される「入れ子構造」となっている(「即する」規定と施策・事業の重畳化に関しては,考えたみたい課題ですね).
「日本で木材を大量に生産するのはもはや無理」*9との現状認識もある一方で,「森林のための林業*10に資するようにも,重畳な「丹念な管理」を通じて,「共有地の悲劇」及び「開放地」の「悲劇」*11が発生する蓋然性の管理もまた進められることになるのだろうか.考えてみたい.

*1:農林水産省HP(政策情報林野庁分野別情報)「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律

*2:農林水産省HP(政策情報林野庁分野別情報公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律)「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」(平成22年10月4日 農林水産省国土交通省告示第3号)

*3:大分県HP(組織からさがす林産振興室)「大分県公共建築物等における地域材の利用の促進に関する基本方針

*4:前掲注2・農林水産省(公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針)4頁

*5:前掲注3・大分県大分県公共建築物等における地域材の利用の促進に関する基本方針)6頁

*6:農林水産省HP(政策情報林野庁分野別情報)「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律案に対する附帯決議

*7:西尾隆「制度改革・地域再編下の日本の森林と林業」西尾隆編『分権・共生社会の森林ガバナンス』(風行社,2008年)78頁

分権・共生社会の森林ガバナンス―地産地消のすすめ (ICU21世紀COEシリーズ)

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*8:前掲注2・農林水産省(公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針)2頁

*9:大塚啓二郎『消えゆく森の再生』(講談社,1999年)165頁

消えゆく森の再生学―アジア・アフリカの現地から (講談社現代新書)

消えゆく森の再生学―アジア・アフリカの現地から (講談社現代新書)

*10:小泉祐一郎『土地利用・開発許可制度の解説』(ぎょうせい,2010年)28頁

*11:前掲注9・大塚啓二郎1999年:14〜15頁