高額な月額報酬が勤務実態に見合っていないとの批判がある、公安委員会や労働委員会など非常勤の行政委員の報酬見直しが全国的に進んでいる。南日本新聞の調査では、4月から佐賀や山形など15道府県が月額制を日額制か月額・日額併用制に改めることが分かった。既に他の11県が条例改正を終え、検討中を加えると8割を超す自治体が報酬体系を見直す。鹿児島県は「業務の量や質は日数だけで判断できず月額制が妥当」としており、見直しの動きはない。
 全国的な見直しは、高額な報酬への批判に加え、2009年1月に大津地裁が、滋賀県の労働、収用、選挙管理の各委員会委員に対し「月数回の勤務日数にかかわらず月額報酬を支払うのは地方自治法に照らし違法」と判決したことが大きく影響した。大阪高裁も10年4月に「著しく妥当性を欠く」と判断、多忙な選挙管理委員長をのぞき違法としている(滋賀県は上告中)。その後、報酬を見直す動きが加速。静岡県が10年度から全委員を日額制にしたほか、神奈川や群馬なども同年度に月額・日額併用制に変更した。10年7月の全国知事会行政改革プロジェクトチームも「原則として委員の活動に応じた日額支給に改めるべき」との提言を行った。
 鹿児島県の行政委員は、選挙管理、教育、公安、人事、監査、収用、労働、海区調整、内水面漁場管理の9委員。県などによると、収用、労働、選挙管理、監査の4委員の勤務日数は月1〜6日で、報酬は月額5万4000〜21万円。全9委員の報酬は3万6900〜23万6700円。09年度は84人に9019万1700円が支給されている。県では(1)委員の業務の質・量は勤務日数だけでは判断できない(2)委員の報酬などを定めた条例に違法性はない−との理由から「見直しを行う事情は変わっていない」として現行の月額制を維持する姿勢だ。県人事課は「委員には自己研さんや守秘義務などがあり、県知事と同格の職責があり妥当」としている。鹿児島県では10年5月、報酬を月額制で支払うのは違法として鹿児島市の住民らが鹿児島地裁に提訴、現在も係争中。県議会にも「報酬及び費用弁償に関する条例」の改正を求める陳情が出されているが、継続審議となっており、今年4月の改選を控え、審議未了になる可能性が高くなっている。

本記事では,鹿児島県における行政委員会の委員報酬の取組.
2009年1月23日付の本備忘録にて取り上げた,行政委員会委員報酬の「月額制」に関する違憲判決を受けて,同年2月12日付同年8月23日付同年11月25日付2010年2月20日付同年3月21日付同年7月6日付の各本備忘録で言及した報酬制度の「見直し」検討のなかで,本記事では,同紙による,都道府県レベルでの同報酬の取組・見直し状況の調査結果も紹介(参考になります).
全国知事会が「平成22年11月1日現在」として整理された「行政委員会の報酬の支給状況」では,「全ての行政委員会において日額で支給」されている都道府県が1つ,「一部の例外を除き全ての行政委員会において日額で支給」されている都道府県が2つ,「全ての行政委員会において日額と月額の併用で支給」されている都道府県が2つ,「一部の例外を除き全ての行政委員会において日額と月額の併用で支給」されている都道府県が1つ,「一部の行政委員会において日額で支給」されている都道府県が17,「全ての行政委員会において月額で支給」されている都道府県が24であったなか*1,本記事に掲載されている表を拝読させて頂くと,「月額制」の「現状維持」を選択されている都道府県が,同県,宮城県福島県,栃木県,埼玉県,千葉県,東京都,奈良県の8都県,月額制の「見直し 検討中」の都道府県が13府県(岩手県,石川県,福井県,長野県,愛知県,大阪府兵庫県和歌山県徳島県香川県長崎県,宮崎県,沖縄県)にある.また,「日額制」を選択された都道府県は,山梨県2010年2月12日付の本備忘録にて取りあげた静岡県の2県,月額制と日額制の「併用」型は,24道府県(北海道,青森県秋田県山形県茨城県群馬県,神奈川県,新潟県富山県岐阜県三重県滋賀県京都府島根県鳥取県岡山県広島県山口県愛媛県高知県,福岡県,佐賀県熊本県大分県)であることが分かる.(2010年3月21日付の本備忘録で記録した青森県での「日額・月額併用制とする県の条例改正案を否決」の報道がされておりましたが,現在では同制度を選択されたのですね).
「各団体の実情に合わせ,各都道府県が自主的に見直しを進めていくこと」*2を基調とされつつ,結果的には「併用」型に収斂された,「政策波及(policy diffusion)」*3の様相を窺うことができそうか.要経過観察.