川崎市議会総務常任委員会は10日、同委員会名で「市避難所の機能整備及び円滑な管理運営に関する条例案」を開会中の定例会に提案することを決めた。同市議会局によると、可決されれば、政策条例に関する委員会提案は政令指定都市で初めて。同市議会としても、議員提出を含め初の政策条例の提案となる。16日の本会議最終日に採決される。
 条例案は、市や避難所運営会議、市民の責務を明記。災害時に避難所となる学校などについて、市には災害に備えた機能の整備推進、同会議には円滑な管理運営、市民には積極的な参加に努めることなどを規定する。条文は11日の同委員会で審議する。委員の一人は「いざ市民が避難所に集まったときに円滑に運営できるよう、条例で促していきたい」と話している。同局によると、2006年の地方自治法改正により、委員会からの提案が可能となった。

本記事では,川崎市議会における常任委員会による議案提出の取組を紹介.
本記事においても報道されているように,「委員会における調査・審査の活性化」」*1も企図されて,2006年3月の地方自治法改正により,同法第109条第7項として「常任委員会は,議会の議決すべき事件のうちその部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関するものにつき,議会に議案を提出することができる」*2ことが追記されたことを踏まえての取組.
全国市議会議長会が実施されている「市議会の活動に関する実態調査結果」を拝読させて頂くと,「平成21年1月1日〜12月31日」間では,「委員会提出による議案」は806市中同期間中,1,698議案あり1,681が原案可決されている.また,政令指定都市に関しては,60議案が提出されて,その内訳としては60議案中条例案が6 規則案は1 意見書案が41,決議案が8,その他が4議案,そして,これらの議案への議決は原案可決が57*3とある.本記事では,「16日の本会議最終日に採決」され,「可決されれば」との報道されているものの,委員会から提出された議案への本会議での「拒否権」*4の提示は制約的な状況も窺える.
なお,本記事では「政策条例に関する委員会提案は政令指定都市で初めて」とはあるものの,下名,2009年2月2日付及び「同年2月3日付の両本備忘録でも触れたように,目標と手段から構成されることにより,すなわち政策*5との整理も可能ともされるなか,「政策条例」の概念における「政策」が示す範疇や含意を今一つ整理が付いないこともあり,上記の議案提出状況の結果からも,「政令指定都市で初めて」と位置付けられることもまた整理をつけることができていない.上記の市議会議長会による調査では「政策的条例」*6と「的」を含め,新規条例の整理が図られている.(下名が把握していない限りですが)「政策条例」の「政策」なるものの概念定義として,実務ともに共有化されていたものがあるのだろうか,要確認.

*1:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)391頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*2:総務省HP(所管法令国会提出法案)「地方自治法の一部を改正する法律案 法律案・理由」2頁

*3:全国市議会議長会HP(調査・研究市議会の活動に関する実態調査結果平成21年中)「11.委員会提出による議案

*4:ジョージ・ツェベリス『拒否権プレイヤー 政治制度はいかに作動するか』(早稲田大学出版会,2009年)25頁

拒否権プレイヤー 政治制度はいかに作動するか

拒否権プレイヤー 政治制度はいかに作動するか

*5:Michael Howlett.2010.Designing Public Policies: Principles and Instruments, Routledge ,16.

Designing Public Policies: Principles and Instruments (Routledge Textbooks in Policy Studies)

Designing Public Policies: Principles and Instruments (Routledge Textbooks in Policy Studies)

*6:全国市議会議長会HP(調査・研究市議会の活動に関する実態調査結果平成21年中)「議員提出による新規の政策的条例」「.委員会提出による新規の政策的条例