県は23日、国の「生産動態統計調査」の調査員を委託していた東彼波佐見町職員の男性(52)が9年4カ月にわたって、うその報告をしていた、と発表。22日付で男性を解任し、期間中の報酬など約300万円を返還させたことを明らかにした。
 県統計課によると、男性は1993年2月から町内の陶磁器生産量などの調査を担当。月1回、事業所への聞き取り調査に基づく報告を求められていたが、2001年9月からは調査をせず、数値を捏造(ねつぞう)していた。大阪、広島などで不適正な調査が表面化したことを受け、国が調査内容の確認を都道府県に指示。事業所側への照会で不正が発覚した。県は今後、1人の調査員が同一の事業所を長期間担当しないようにするなど、再発防止策を講じる。波佐見町の松下幸人副町長は「公務員の信頼を失墜させる行為。できるだけ早く処分したい」としている。

県は23日、毎月実施している生産動態統計調査で、陶磁器関連の統計調査員に任命した波佐見町職員(52)が架空の数字を報告する不適正な調査をしていたと発表した。県は調査員を22日付で解任し、不適正調査を続けた9年4カ月間の報酬など約300万円を返還させた。
 調査は経済産業省が県に委託。陶磁器関連では調査員が事業所ごとに毎月の生産量や販売額などを聞き取りしている。この調査員は同町内の6事業所(05−07年度は11事業所)を担当していたが、2001年9月から一部の事業所を訪問せず、09年1月以降はまったく調査せずに架空のデータを記入していた。他府県で同じ事例があったため、経産省の依頼で県が昨年末から全事業所に直接確認し、不適正調査が判明。県統計課は「チェック態勢の強化などで再発防止に努めたい」としている。波佐見町総務課は「町職員としての業務外の事案だが、公務員として不適正な行為をしており今後、処分を検討したい」としている。調査は、町職員の勤務時間外に行うことになっており職員は「個人的に忙しかった」と話したという。

両記事では,波佐見町に勤務される職員による「不適正調査」の実施とその対処について紹介.下名の来年度(いえ,今年度も行ってはおりましたが)の観察課題の一つ,統計調査制度の改革とその実施を考える上でも参考になる事例.
「鉱工業生産の動態」を把握して「鉱工業に関する施策の基礎資料を得ることを目的」とされた「経済産業省生産動態統計」*1.「調査対象数」は「約2万」に,経済産業省が調査客体に対して,「経済産業省→調査客体」型,「経済産業省経済産業局→調査員→調査客体」型,「経済産業省経済産業局→調査客体」型,「経済産業省都道府県→調査員→調査客体」型,「経済産業省都道府県→調査客体」型の5つの「調査経路」を通じて,「配布」の際は「郵送」と「調査員」,「収集」の際には「郵送」「オンライン」「調査員」*2を通じて,実施.ただ,その「調査周期」は「毎月」*3と,その調査実施頻度は低くはない状況にあり,調査実施方法の一つである調査員調査では,その「調査員規模」は「約300人」*4と,やや限定的.
「調査員がどの程度熱心に調査対象を訪問したか,記入な内容を審査したかが結果の精度を決めてしまう」なかで,「統計調査は,世帯,事業所を問わず迷惑がられることも多く,気苦労の多い仕事」.統計調査の実施を「行政官僚制の対内的活動」*5として,ひとまずは捉えて考えた場合,本記事で紹介されているような,「協力依頼を行うのが面倒なので調査員が自分で適当に調査票を記入してしまう又は友人などに記入させる行為」である「メーキング」*6の虞の発生に対しては,調査員という「代理人」を「本人」である同省が,その「代理人」の裁量性を縮減させ,「本人の意図に沿って動かす」「そのための誘因や監視の仕組み」*7を制度的に設けることも考えられなくはない.ただ,調査負担は勿論「監視」の実効性の観点からは,制約もある.むしろ,同調査における多分な調査経路の配置からすれは,他の経路への移行もまた考えられそうか.

*1:経済産業省HP(利用目的から調べる[統計]:統計経済産業省生産動態統計)「調査の概要

*2:経済産業省HP(利用目的から調べる[統計]:統計経済産業省生産動態統計調査の概要)「調査の方法

*3:経済産業省HP(利用目的から調べる[統計]:統計経済産業省生産動態統計調査の概要)「http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/gaiyo.html#menu08:title=調査の時期]」

*4:前掲注2・経済産業省(調査の方法)

*5:原田久『広範囲応答型の官僚制』(新山社,2011年)30頁

広範囲応答型の官僚制 ―パブリックコメント手続の研究 (学術選書64)

広範囲応答型の官僚制 ―パブリックコメント手続の研究 (学術選書64)

*6:松井博『公的統計の体系と見方』(日本評論社,2008年)48頁

公的統計の体系と見方

公的統計の体系と見方

*7:秋吉貴雄,伊藤修一郎,北山俊哉『公共政策学の基礎』(有斐閣,2010年),248頁

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)