【西原】情報サービス業のNansei(那覇市、砂川哲男社長)と西原町は30日、西原町史の一部を電子書籍化し、米アップルの多機能端末「iPad(アイパッド)」版で販売すると発表した。同社によると、市町村史の電子書籍販売は全国初。同町は町の歴史文化の幅広いPRや海外移住者への情報発信に期待し、同社は他自治体にも地域情報資産の新しい活用法として電子出版を提案していく。
 自治体が発行する市町村史は貴重な資料ながら、一般に活用される機会が少ないが、電子書籍化で気軽に多くの人が購入でき、在庫や増刷の心配なく半永久的に販売することができる。今回、電子書籍化したのは「戦時記録」「移民記録」「別巻(民話編)」の3巻で紙ベースで各巻600〜1千ページの資料を300ページ程度に分け、10冊を発行。価格は1冊230〜450円。配信サイト「アイチューンズ・ストア」で購入できる。民話編は「動物昔話・本格昔話・笑い話」「町内の伝説」「広域伝説」の3冊を29日に発売。住民の戦争体験記をつづった戦時記録3冊、ペルー、ブラジルなど地域ごとの移民記録4冊を4月上旬に発売する。初年度売り上げは42万円を見込み、手数料はアップルに30%、西原町40%、Nanseiに30%支払われる。
 公文書や貴重資料のデジタル化に取り組んできた砂川社長は「全ての市町村が地域情報を保存し、広く伝える、新しい可能性の扉を開いた」と説明。上間明町長は「20年余にわたる町史編さん事業は本年度で終了するが、電子書籍化は画期的なこと」と話した。問い合わせはNansei(電話)098(867)1300。ホームページはhttp://www.nansei-m.co.jp/

本記事では,西原町において,同町史をipadで販売されることを紹介.同取組に関して,同町HPを拝見させて頂いたものの,現在のところ,同取組に関しては,公表されていない模様.公表後,要確認.
時に,「特定の人物の出会いや人生経験が,いかに一つの状況から離れて他の状況へ移っていくための制度設計の原則を作り出してきたか,そしてその原則が新しい状況の中へいかに融合していったのか,を辿る」*1ことも可能とする各自治体史.自治体史は,その取り扱う時期が長いこともあり,冊子1冊の厚さも厚く,そのため,巻数も増え,横に並べても(勿論,縦に積み上げても)厚くなる.ただ一方で,同自治体が経験してきた事象,保管・発掘された資料,そして,その自治体への思いを余す処なく記述しようとすると,否応にも,その記述はやや抑制的に整然な内容に留まることもある(ただ,下名が先日購入しました『横浜市史Ⅱ』*2は記述に特徴があり,拝読させて頂き,たいへん面白い内容でした).
本記事で紹介されている同取組は,「海外移住者への情報発信」という利用範囲の拡大という点や「在庫や増刷の心配」という在庫管理という点のみならず,その記述において「歴史の精気がそこなわれる」*3ことはなく,物理的な制約を気にすることなく,「ごっそりと書き込ま」*4れることで,物理的のみならず,その内容もまた「厚い記述」となる自治体史の作成もまた可能となりそうか.今後の他の自治体の自治体史の掲載メディアについても,要観察.

*1:クリストファー・フッド『行政活動の理論』(岩波書店,2000年)176頁

行政活動の理論 (岩波テキストブックス)

行政活動の理論 (岩波テキストブックス)

*2:横浜市HP(総務局法制課横浜市史資料室)「『横浜市史II』刊行一覧

*3:升味準之輔『なぜ歴史が書けるのか』(千倉書房,2008年)27頁

なぜ歴史が書けるか

なぜ歴史が書けるか

*4:前掲注3・升味準之輔2008年:28頁