外郭団体への派遣職員を全面的に引き揚げる方針の千葉市に対し、地方自治法に基づく包括外部監査が“待った”をかけている。引き揚げ方針は、神戸市の住民訴訟を受けたものだが、監査人は「(職員派遣は)事業の効率化に有用。市民ニーズも反映できる」などと指摘、存続検討を求めた。事業収益で職員の人件費を捻出するのは不可能とする市側は「流れに逆行する」と困惑している。
 4月現在の千葉市の職員派遣状況は、保健医療事業団、社会福祉協議会など12団体に計54人。市は「2年程度で全面的に引き揚げる方針」(行政改革推進課)だという。市方針のきっかけは神戸市の住民訴訟だ。2004、05年度に団体職員の人件費などを補助金支出したのは違法とする損害賠償請求で、最高裁は09年に訴えの一部を認めた。

本記事では,千葉市における包括外部監査の結果を紹介.同外部包括監査による報告書に関しては,同市HPを参照*1
同市では,本記事でも紹介されているように,「千葉市外郭団体経営見直し指針(改定版)」*2を2010年3月に策定され,同「市が資本金,基本金その他これらに準ずるものの25%以上を出資又は出捐している団体」であり,同「市の行政を補完する役割を担う団体として本市が継続的に人的又は財政的な支援を行っている団体」である21団体について,「人的関与」を「見直し」,「必要最小限の関不とし,平成24年度末までに計画的に全派遣職員の引揚げを行う」*3方針が示されてたいるなかで,同報告書では,次のような見解が示されている*4

そもそも「派遣法」は,職員の派遣はあくまで自治体の事務事業に密接な関連を有する業務を行う団体への派遣であるべきところ,密接関連性の希薄な団体へ職員を派遣していることを問題とするものであり,職員の派遣自体を否定するものではない.「派遣条例」にあるとおり,その实施により千葉市の事務事業の効率化や効果的な实施を図れる事務事業の補完・支援業務においては,有用な場合もあると考えられる.
 このような観点からすれば,今回の判決の内容への対応として,外郭団体からの職員の全面引き揚げにより職員派遣制度自体を将来にわたり全面的に廃止してしまうことになれば,市民のニーズを反映した事務事業の実施という観点においては必ずしも適切とはいえない.また,千葉市による外郭団体の直接的なコントロール千葉市職員が千葉市外部で実施している現業を経験する場といった側面も重要と考える.
 法令,判例等の趣旨を再確認し,外郭団体への職員派遣を存続させる方向について検討すべきである.

同報告書曰く,外郭団体の派遣では「有効な場合もある」こと,同市による「直接的なコントロール」の内容によること,同市職員の「現場を経験する場」でもあるとされ,「外郭団体への職員派遣を存続させる方向について検討すべき」と,いう.そのため,本記事でも紹介されているように,上記の同市の方針とは,正反対な見解とも位置づけられなくはなさそう.
なるほど,包括外部監査人が行う監査は「財務に関する執行」と「経営に係る事業の管理」として「客観的な判断が基本とされる財務監査にまずは限定」されているものとは解されるものの,「事務事業の有効性などについて監査を行うことももちろん可能」*5ともされ,その際には,「政治的な思惑に左右されたり,いたずらに瑣末な監査に陥つたりすることな」*6いことも企図されていることからすると,同外部包括監査による報告書は,同市側の方針とは距離を置き,(外部との名称をもちますが)内部統制機関としては,極めて超然とした監査結果とも整理ができそう.とはいえ,「監査の「領域」拡大」*7に伴い監査の結果もまた拡大し,そして,多様化するなかで,監査の結果の取り扱いについては,考えてみると悩ましい.同外部包括監査による報告書を踏まえた,今後の同市の「千葉市外郭団体経営見直し指針」の取り扱いについても,要観察.

*1:千葉市HP(監査委員事務局行政監査課監査結果について(包括外部監査))「外郭団体との契約等に関する財務事務の執行について

*2:千葉市総合政策局総合政策部行政改革推進課千葉市の外郭団体について)「千葉市外郭団体経営見直し指針(改定版)」(平成22年3月,千葉市

*3:前掲注2・千葉市千葉市外郭団体経営見直し指針(改定版))7頁

*4:前掲注1・千葉市(外郭団体との契約等に関する財務事務の執行について)

*5:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)1294頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*6:前掲注5・松本英昭2009年:1295頁

*7:金井利之『実践自治行政学』(第一法規,2010年)258頁