総務省は地方公務員に労使交渉で給与や勤務条件を決める協約締結権を与え、地方の人事委員会勧告制度を廃止するなどの制度改革原案をまとめた。菅内閣は3日、国家公務員に協約締結権を与える関連法案を決定しており、それに準じる形で検討が進んでいた。
 地方公務員の給与は、都道府県などの人事委員会勧告を踏まえ、条例で定める。国の人事院が勧告する国家公務員給与水準に加え、民間企業やほかの自治体の給与水準、自治体の財政状況などを加味する。国家公務員の制度改革関連法案は、協約締結権を国家公務員に付与し、内閣府に「公務員庁」を新設する代わりに人事院人事院勧告(人勧)を廃止する内容。総務省は、関連法が成立すれば、地方公務員給与を決める方法も変える必要があるとして、4月以降、全国知事会全国市長会労働組合などの意見を聞き、原案をまとめた。原案によると、地方の人事委員会勧告制度は廃止。地方公務員の給与水準が妥当かどうかの説明責任を果たすため、民間給与の実態調査は継続する。消防職員の団結権は、上司と部下の対立が生じて指揮命令系統が乱れるとの懸念を考慮して現在は認められていないが、原案は「付与することを基本的な方向」と明記した。また、自治体と労組の交渉が不調の場合は都道府県労働委員会であっせん、調停、仲裁ができるようにする。ただ、国家公務員制度改革関連法案は今国会成立のめどが立っておらず、地方公務員の制度改革が実現する見通しはついていない。

本記事では,総務省における地方公務員制度に関する改正原案の検討状況を紹介.
2011年6月3日に閣議決定され,国会に提出された「国家公務員制度改革関連四法案」*1への,いわば「官公均衡」*2としての地方公務員関連制度の改正原案.本記事を拝読させて頂くと,「労使交渉」を通じて「給与や勤務条件を決める協約締結権」が付与され,あわせて「人事委員会勧告制度を廃止」される方針の模様.
本記事でも紹介されている「全国知事会全国市長会労働組合などの意見を聞」く機会の開催状況に関しては,同省HPを参照*3.その名もズバリ「地方公務員の労働基本権の在り方に係る関係者からの意見を伺う場」は5回開催され,2011年4月26日には全国知事会,同年同月27日に公務員連絡会地方公務員部会,同年5月10日に日本自治体労働組合総連合ほか,同年5月11日には全国市長会全国町村会,同年同月16日に全国消防長会と(財)日本消防協会からそれぞれ意見を聞いてることが分かる.
下名の個人的関心からも,「労働基本権の制限の代償」として設置されている「人事委員会(または公平委員会)」*4制度に関する各「意見」を確認してみると,次のような「意見」が示されていることが分かる.まず,全国知事会からは,「給与勧告制度の廃止・給与の参考指標」に関しては,「勤務条件を決定する手続の透明性を確保し,住民への説明責任を果たすためには,交渉に際しての客観的な参考指標が必要」*5と人事委員会制度の存否に関しては明言されておらず,同委員会による勧告制度の廃止を述べる.全国市長会でも「調査研究機関」としての「人事委員会,公平委員会の活用」*6を指摘する.全国町村会では,同会の常任理事である聖籠町長のお名前による資料が提出されているものの,その内容は同資料からは把握ができない*7.方や,日本自治体労働組合総連合では,「人事院の廃止にともなって,地方人事委員会の廃止も検討対象」と同委員会制度自体の廃止をまずは述べ,一方で,「その際,公務員の公平・中立性の確保や民主的な公務員制度運営のため,使用者から独立した人事行政に関わる第三者機関,三権の保障されていない職員に勧告などをおこなう第三者機関が必要である」*8と新たな機関の設置をも述べる.
同改正原案に関しては,現在のところ,同省HP内で把握できず,同記事,2011年6月6日付の共同通信による配信記事*9,同日付の毎日新聞の報道*10に限られているようではあるもの,人事委員会における「勧告制度」が廃止される方針となり,いわゆる「執行機関法定主義」の「再検討」*11までは至らないようではあるものの,同原案の公表後,要確認.

*1:内閣官房HP(行政改革推進本部国家公務員制度改革推進本部)「国家公務員制度改革関連4法案等」(平成23年6月3日閣議決定・国会提出)

*2:西村美香『日本の公務員給与政策』(東京大学出版会,1999年)2頁[rakuten:book:10748614:detail]

*3:総務省HP(組織案内研究会等)「地方公務員の労働基本権の在り方に係る関係者からの意見を伺う場

*4:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『改訂版 ホーンブック地方自治』(北樹出版,2011年)205頁

ホーンブック 地方自治

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*5:総務省HP(組織案内研究会等地方公務員の労働基本権の在り方に係る関係者からの意見を伺う場地方公務員の労働基本権の在り方に係る関係者からの意見を伺う場(平成23年4月26日開催))「資料1地方公務員の労働基本権の在り方に係る意見」(全国知事会平成23年4月26日)2頁

*6:総務省HP(組織案内研究会等地方公務員の労働基本権の在り方に係る関係者からの意見を伺う場地方公務員の労働基本権の在り方に係る関係者からの意見を伺う場(平成23年5月11日開催))「資料1地方公務員の労働基本権のあり方に関する意見」(全国市長会平成23年5月11日)2頁

*7:総務省HP(組織案内研究会等地方公務員の労働基本権の在り方に係る関係者からの意見を伺う場地方公務員の労働基本権の在り方に係る関係者からの意見を伺う場(平成23年5月11日開催))「資料3地方公務員の労使関係制度改革に関する意見骨子 」(全国町村会常任理事 新潟県聖籠町長 渡邊廣吉,平成23年5月11日)

*8:総務省HP(組織案内研究会等地方公務員の労働基本権の在り方に係る関係者からの意見を伺う場地方公務員の労働基本権の在り方に係る関係者からの意見を伺う場(平成23年5月10日開催))「資料1地方公務員の労働基本権の在り方に係る基本的意見 」(全労連公務員制度改革闘争本部 ,日本自治体労働組合総連合自治労連) ,全日本教職員組合(全教),消防職員ネットワーク ,平成23年5月10日)2〜3頁

*9:共同通信(2011年6月6日付)「地方公務員にも協約締結権付与へ 総務省が改革原案

*10:毎日新聞(2011年6月6日付)「地方公務員制度:「協約締結権」付与 総務省が改革原案

*11:前掲注4・礒崎初仁・金井利之・伊藤正次2011年:73頁