東日本大震災の被災者を対象とした野田市職員の採用で、同市は二十日、一般行政職と土木技術職の採用枠計五人に、岩手、宮城、福島の三県から計二十五人の応募があったと発表した。七月三日に野田市役所と東北福祉大仙台市)で筆記試験、八月七日に面接を行い、同月末に結果を発表する予定という。
 市は被災者支援の一環として、解雇や就職内定を取り消された東北三県の被災者の採用を決め、五〜六月にハローワークと東北地方の大学で周知を図った。応募は一般行政職が採用三人に対し、二十三人、土木技術職は採用予定と同じ二人。計二十五人のうち、女性は五人、来春の卒業を見込む新卒者は十五人だった。採用は十月一日か来年四月一日。将来、本人が被災地に戻ることを希望し、地元自治体が受け入れるなら、対応するという。(川田栄)

本記事では,野田市における職員採用の取組を紹介.2011年4月5日付の本備忘録にて記録した,東日本大震災の「被災者」を対象に「正規職員」として採用される取組.同取組の詳細は,同市HPを参照*1
同取組の「職員採用選考試験受験案内」をもとに受験資格等を整理をしておくと,次の通り.「昭和56年4月2日から平成2年4月1日までに生まれた者」を受験資格とする「一般行政職」を「3名程度」と「昭和51年4月2日から平成2年4月1日までに生まれた者」で「学校若しくは学校に準ずる教育機関において土木に関する課程を専攻して卒業」又は「卒業見込み」であることを受験資格とする「土木技術職」を「2名程度」募集をされており,加えて,地方公務員第13条と同法第19条の「平等原則」が「明らかにすることは必ずしも容易ではない」*2こともあってか,同市独自に「地域要件」を定められており,「平成23年3月11日時点で対象地域一覧表の市町村に居住していた者」*3,「対象地域一覧表の市町村の出身者で地震等の影響により対象地域一覧表の市町村に所在地を有する法人の就職内定を取り消されたり失業したもの」,「対象地域一覧表の市町村の出身者で平成24年3月31日までに学校等を卒業する見込みのもの」の「いずれかの要件に該当する者」*4を募集(印西市においても,同様の募集を行われていたことを初めて知りました).これらの要件のもとに募集をされた同取組では,本記事を拝読させて頂くと25名の募集があったことが分かる.
また,「採用」は「平成23年10月1日又は平成24年4月1日」のいずれかで「希望する日」ともあり,加えて2011年4月5日付の本備忘録及び本記事にて報道されているように選択が可能な模様.「採用された職員」のうち「将来地元自治体に戻り活躍したいという希望があり」,「地元自治体で受入が可能であるという場合にかぎり」,「地元自治体の職員として戻ることも可能となるように考えています」*5と採用日,採用後の異動(なのでしょうか)も本人の希望に重きを置く方針であることを明記.ただし,後者に関しては,「地元自治体」と規定される「地元」の範囲とは,限定的に,居住要件を満たす自治体のみを想定されているのか,又は,就労要件を満たす自治体を含めているのか,更には,いずれも満たさなくても,自己申告に基づく近隣自治体も含めているものなのか(加えていえば,県職員へ受入可能の考えが示された場合はどうか),同資料からはやや判然とはしない.いずれによせ「自治体間の横」*6の連携次第の対応ともなり,具体的な手続がどのように進められることになるかは,要経過観察.

*1:野田市HP「東日本大震災被災者を対象とした職員採用選考試験受験案内

*2:橋本勇『新版 逐条地方公務員法』(学陽書房,2002年)185頁

新版 逐条地方公務員法

新版 逐条地方公務員法

*3:具体的には,次の通り.岩手県に位置する市町村では,宮古市,大船渡市,花巻市久慈市遠野市,一関市,陸前高田市釜石市二戸市奥州市平泉町藤沢町,住田町,上大槌町,山田町,岩泉町,田野畑村普代村,野田村,洋野町宮城県に位置する市町村では,仙台市石巻市塩竈市気仙沼市白石市名取市角田市多賀城市岩沼市登米市栗原市東松島市大崎市蔵王町大河原町,村田町,柴田町,川崎町,丸森町亘理町,山元町,松島町,七ケ浜町利府町大和町大郷町,富谷町,大衡村色麻町加美町涌谷町,美里町,女川町,南三陸町福島県に位置する市町村では,福島市会津若松市郡山市いわき市白河市須賀川市,相馬市,二本松市田村市南相馬市伊達市本宮市桑折町国見町,川俣町,大玉村,鏡石町,天栄村猪苗代町会津坂下町湯川村西郷村泉崎村中島村矢吹町棚倉町,石川町,玉川村,浅川町,三春町,小野町,広野町楢葉町富岡町川内村大熊町双葉町浪江町葛尾村,新地町,飯舘村

*4:前掲注1・野田市東日本大震災被災者を対象とした職員採用選考試験受験案内)

*5:前掲注1・野田市東日本大震災被災者を対象とした職員採用選考試験受験案内)

*6:田口一博「自治体間の横の連携」森田朗・田口一博・金井利之『分権改革の動態』(東京大学出版会,2008年)154-155頁

分権改革の動態 (政治空間の変容と政策革新)

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