八代市のごみ処理問題が深刻化している。老朽化した市清掃センターのごみ処理能力が低下。市内のすべてのごみを自前では焼却処理できない状態に陥っている。市は昨年7月「非常事態宣言」を出し、市民1人当たり1日50グラムずつ燃えるごみを減らすよう呼び掛けたが、目標の半分以下(約20グラム)しか減量は達成できていない。
■築36年で老朽化
 球磨川河口に麦島という中州がある。市清掃センターの古ぼけた建物は、その西側、農地が広がる中北町にある。完成は1975年。当初は日量150トンの焼却能力があったが、老朽化で現在は約88トンにまで衰えた。24時間連続運転を毎日続けても1日平均約105トン持ち込まれる燃えるごみのすべてを処理できない。市は昨年から年間2200トン分の処理を約1億円で市外の民間業者に委託している。施設ではトラブルも頻発。昨年8月には、焼却炉の内部が異常高温となり、排気をろ過する機器が一部破損、緊急停止した。炉内の温度を監視する設備にも不備があり、約1千万円をかけて急きょ改修した。
■対策強化進める
 「もう限界。糖尿病患者のように高カロリーの食べ物を抑える食事療法をしないと」。市ごみ対策課の山下利治課長は危機感もあらわに、ごみ減量の必要性を強調する。市は週2回の燃えるごみ回収とは別に、21種類の資源ごみを月2回、平日早朝に回収している。センターの調査では、燃えるごみの袋の中には紙類やペットボトルなど資源物が27%も混じっていた。資源ごみの分別を徹底すれば、燃えるごみは着実に減らせるはずだ。市は本年度、組織再編に合わせ対策を強化。6月から月1回、日曜に市民が資源ごみを無料でセンターに持ち込めるようにした。燃えるごみに分類していたプラスチック製バケツなど2品目を資源ごみに加えることも4校区で試験的に始めた。
■意識改革が必要
 ただ、こうした取り組みがあっても、一気にごみは減らない。市民からは「資源ごみの分別が分かりにくく面倒くさい」との声が聞こえる。環境問題に取り組む地元市民グループ「次世代のためにがんばろ会」代表の松浦ゆかりさん(53)は「ごみになる物を買わなければ、ごみは減る。意識改革が必要」と指摘する。市は92年から新ごみ焼却施設の検討を始めたが、候補地選定などで二転三転。昨年4月、代替施設となる市環境センターを八代港に近い加賀島地区に建設する計画がやっと決まった。それでも環境影響評価(アセスメント)などの手続きが必要で、順調に進んでも、着工は2014年度の見込み。17年春目標の供用開始まで少なくとも6年は危機的状況が続く。だが新施設の耐用年数などは「建設実現が先決」(市環境部)として、何も決まっていない。行政はまず、その場しのぎではない、ごみ処理の将来構想を立てるべきだ。そして、その上で市民に理解と協力を求め、意識改革を実現する。そうでなければ、この危機は乗り越えられそうにない。

本記事では,八代市における「ごみ非常事態宣言」の取組状況を紹介.同宣言に関しては,同市HPを参照*1
同宣言は,「築35年を過ぎた清掃センターの処理能力」が「老朽化やごみ質の変化に伴い低下し」「受入れた燃えるごみの一部を焼却することができなくな」り,「この問題の抜本的な解決のため」には「新たな処理施設の整備が急務」としつつも,「完成までには最短でも7年」がかかり,「この状態が新施設建設完了まで尾を引く可能性」といういわゆる「効果ラグ」*2への配慮からも,同市市民「1人1日あたり」「卵1個分の重さ約50グラムのごみの減量をお願い」し「清掃センターのごみの受け入れ量を1日5トン減らすこと」*3を促すもの.
本宣言では,「生ごみの水切り」や「資源物の分別」,「ムダの無い調理」,「生ごみの堆肥化」という「ひと手間かけ」ることでの「燃えるごみ」の削減方法を紹介し,市民の「自主的アプローチ」*4への削減への促されている.本記事では,同宣言後の状況を紹介されており,「目標の半分以下(約20グラム)しか減量は達成できていない」ともある.悩ましい.
確かに,「廃棄物の問題を最小限にするには,廃棄物の発生を減らすことが不可欠」*5とはされる.ただ,「自主的アプローチ」ではその限界があるとすれば,やはり「ごみ減量化の本丸」*6とも称される「ごみ収集の有料化」もまた,制度的に「手数料」とするか否かは論点が分かれるものの,「政策目的」*7実現の方策の一つか.考えてみたい.

*1:八代市HP(市民の人へくらしの出来事:ごみ)「ごみ非常事態宣言をいたしました

*2:畑農鋭矢・林正義・吉田浩『財政学をつかむ』(有斐閣,2008年)19頁

財政学をつかむ (テキストブックス「つかむ」)

財政学をつかむ (テキストブックス「つかむ」)

*3:前掲注1・八代市(ごみ非常事態宣言をいたしました)

*4:北村喜宣『環境法』(弘文堂,2011年)112頁

環境法

環境法

*5:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『改訂版 ホーンブック地方自治』(北樹出版,2011年)138頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*6:肥沼位昌著・出石稔監修『あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら』(第一法規,2009年)71頁

あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら (自治体職員のための政策法務入門 5 環境課の巻)

あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら (自治体職員のための政策法務入門 5 環境課の巻)

*7:前掲注4・北村喜宣2011年,152頁