2008年に制定した佐賀市の屋外広告物条例に基づく広告物の許可申請率が、3年目の10年度で15%と低迷している。市民に条例の存在が浸透していないことが主な要因。経過措置の期限切れが1年半後の12年3月に迫り、このままでは申請せずに設置された多くの広告物が違法になる。市担当課は「違反広告物があふれる街」になることを懸念し、審議会で意見を聞き、対応方法の検討を始めた。
 条例は良好な景観の形成と、落下や標識が見えづらくなるなど危害防止の観点で制定した。具体的には、市内全域を禁止地域と許可地域に分類。重要文化財区域や主要な交差点などの禁止地域では、原則として一般広告物を掲示できない。市街化調整区域や商業地、幹線道路などの許可地域では、大きさや高さ規制などの基準を設けた。掲示するには許可申請が必要で、違反した場合は氏名の公表や罰金20〜50万円の罰則もある。所有する敷地外に設置した一般広告物2千件を対象に市が許可申請の状況を調べたところ、申請数は08年度は123件(6%)、09年度は195件(10%)、10年度は294件(15%)だった。
 審議会では、委員から「市から住民への規制という視点ではなく、市民がどんな環境で暮らしたいかを始点にした論議が必要ではないか」という意見や「知らない間にルールだけができていった感じがある」と疑問の声も上がった。市建築指導課は「条例制定当時は、作ることが目標になりすぎた面もある。一方的にルールを当てはめるのではなく、みんなが守ろうという気持ちになる規則が必要」と話す。12月をめどに方向性を固めたい考えで、同課は「街の中で目にする広告物に対する考え方を幅広く聞かせてほしい」と呼び掛けている。

本記事では,佐賀市における屋外広告物条例の執行状況を紹介.
同条例第11条により.「市長の指定があった際、当該指定のあった地域若しくは場所又は物件に現に適法に表示されている広告物又は設置されている掲出物件」に関しては「当該指定の日から3年間」は「これらの規定は,適用しない」*1と規定されている経過措置の期間が終了を迎えるなかでの申請状況を紹介.許可申請状況に関しては,同市HPでは確認ができないものの,本誌を拝読させて頂くと,2010年度は15%にあり,今後,経過措置の期限切れを迎えるなかで「申請せずに設置された多くの広告物が違法」広告物になるという.
「介入のポイント」*2としては,その要因が「不知」*3による「善意の違反者」*4である「啓発活動」*5をこの間に図るのみかとも思わなくもないものの,仮に「確信犯」*6がその要因であれば,同条例に基づき勧告,公表,措置命令の順に一つひとつ実施されるしかないのだろうか.この間の実施状況は,要経過観察.

*1:佐賀市HP(市政案内:行政情報都市景観屋外広告物条例について)「佐賀市屋外広告物条例」(平成19年7月4日,佐賀市条例第30号)

*2:伊藤修一郎『政策リサーチ入門』(東京大学出版会,2011年)177頁

政策リサーチ入門―仮説検証による問題解決の技法

政策リサーチ入門―仮説検証による問題解決の技法

*3:森田朗『許認可行政と官僚制』(岩波書店,1988年)63頁

許認可行政と官僚制

許認可行政と官僚制

*4:クリストファー・フッド『行政活動の理論』(岩波書店,2000年)63頁

行政活動の理論 (岩波テキストブックス)

行政活動の理論 (岩波テキストブックス)

*5:横須賀市まちづくり条例研究会著・出石稔監修『自治体職員のための政策法務入門4 まちづくり課の巻 中高層マンション問題を円満解決するには』(第一法規,2009年)124頁

中高層マンション問題を円満解決するには (自治体職員のための政策法務入門 4 まちづくり課の巻)

中高層マンション問題を円満解決するには (自治体職員のための政策法務入門 4 まちづくり課の巻)

*6:前掲注4・クリストファー・フッド2000年:67頁