京都府が条例で自動車駐停車時のエンジン停止(アイドリング禁止)を義務化し、違反者に「氏名公表」の罰則を導入したものの、施行から5年以上たっても罰則の適用はなく、違反者への指導も昨年4月以降一度も行われていない。取り締まりの不徹底が原因とみられ、条例の実効性が問われている。

■府庁前も守られず 取り締まり不徹底
 府は2006年4月に成立した府地球温暖化対策条例でアイドリング禁止を定めた。罰則を科す自治体は珍しく注目されたが、今年9月末までに罰則適用はなく、適用前に警告する勧告もゼロの状態が続いている。
 違反者を注意する指導も昨年4月以降なく、それ以前は統計を取っていないという。府は毎秋に街頭広報を行い、運輸業界に研修会で周知しているが、職員の巡回はなく、京都市上京区の府庁前でさえ、アイドリング禁止は守られていない。実際、今月中旬に府庁前に出掛けてみると、タクシー数台がエンジンを掛けたまま客待ちしていたものの、指導する府職員の姿はなく、男性運転手も「罰則は知らない。10年以上も府庁前で客待ちしているが、注意は1回もない」と驚いていた。京都市は府条例の1年前にアイドリング禁止を含む条例を施行したが、「夏冬には運転手の体調に気を配る必要があり、どのケースを違反とするのか判断が難しい」(環境政策局)との理由で罰則は見送り、努力義務にとどめた。
 これに対し、府は温暖化防止推進で京都市域を含めた府内全域を対象に罰則を導入し、市以上に対策を強化しようとしたが、実効性は上がっていない。ただ府と同じ罰則を設ける東京都は適用例はないが、住民の苦情を受けた時にナンバープレートの通報を求めて違反者を特定。昨年度は50人を指導し、運用上の工夫で効果を生んでいるという。京都府文化環境部の中井敏宏部長は「抑止力として罰則の効果はあるが、府職員が明らかな違反を見過ごすようでは条例は機能しない。もう一度、府職員を含めて周知を徹底したい」と話している。

【アイドリング禁止】 府地球温暖化対策条例で信号待ちや渋滞などをのぞき、自動車駐停車時のエンジン停止を義務付けた。違反すれば府職員が指導し、悪質な場合は勧告する。従わない場合はホームページなどで氏名公表する。

本記事では,京都府が制定された「京都府地球温暖化対策条例」*1の実施状況を紹介.
同条例第34条では「自動車等を運転する者」は「自動車等の使用に伴う温室効果ガスの排出を抑制する」ことを目的として,「自動車等を駐車し」「又は停車するとき」には「自動車等の原動機の停止」 を「行わなければならない」と「アイドリン グ・ストップ」を 義務付けされている.同条例第35条では,「事業者」への「その管理する自動車等を運転する者」に対する遵守指導,同条例第36条では,「駐車場の設置者及び管理者」は「当該駐車場の利用者」*2に対する周知をそれぞれ義務付けているものの,方や第34条にいう「自動車等を運転する者」に関しては,まずは「勧告」(第62条),そして,「正当な理由なく,当該勧告に従わない場合」には,「釈明の機会を与えるための意見の聴取」(第63条第2項)を実施したうえで,「その旨を公表する」(第63条第1項)とも規定されている.まさに,制度的には,「条例の根拠」に基づき「勧告の「実効性確保手法」」*3とも整理ができそう.方や,本記事を拝読させて頂くと,両規定とも同条例制定後は「適用はなく」がない様子にもある,という.
条例の実効性確保のために,制度上は「多用される傾向」*4が観察される公表制度.確かに「実際に適用するかどうかは別問題」*5として,執行上は決して「多用」されることがないとも解される.ただし,現状として「アイドリング」があると観察されるなかでは,何よりも「監視と統制」の「コスト」の点からの「二次的ジレンマ」*6にある様子も窺えそう.まずは,同条例の目的の実効性確保のためにも,重畳な対策もまた課題.今後の執行対策も要確認.

*1:京都府HP(暮らし・環境環境・自然・動植物京都府の地球温暖化対策京都府地球温暖化対策条例の概要)「京都府地球温暖化対策策条例」(平成17年京都府条例第51号)

*2:前掲注1・京都府京都府地球温暖化対策策条例]」(平成17年京都府条例第51号)5頁

*3:北村喜宣「法執行の実効性確保」北村喜宣・山口道昭・出石稔・礒崎初仁編『自治政策法務』(有斐閣,2011年)175頁

自治体政策法務 -- 地域特性に適合した法環境の創造

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*4:前掲注3・北村喜宣2011年:175〜176頁

*5:前掲注3・北村喜宣2011年:175〜176頁

*6:山岸俊男社会的ジレンマ』(PHP出版,2000年)98頁

社会的ジレンマ―「環境破壊」から「いじめ」まで (PHP新書)

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