大阪市の24行政区のあり方を議論する有識者会議が27日、区民の要望を直接予算編成に生かす仕組みの実現などを提言した中間報告を、平松邦夫市長に出した。橋下徹大阪府知事が「公選区長による予算編成で民意を反映させるべきだ」などと主張しているのに対し、現在の制度下で地域ニーズをくみとる「対案」となりそうだ。
 会議は「行政区調査研究会」(座長=阿部昌樹・大阪市立大教授)。中間報告では、各区ごとに数十人の住民代表が参加する区政会議で出た意見や要望を予算編成に生かすよう提案。2013年度予算の編成作業から採用するとしている。再選を目指す平松市長は、地域の道路や公園の整備費など、区長裁量の予算枠を将来的に1千億円規模まで拡大することを表明している。住民の意見を予算編成に採り入れる仕組みもつくることで、各区役所により大きな予算や権限を任せることが可能になるとみられる。

本記事では,大阪市における予算編成に際して,区民からの要望を反映される仕組みの採用が提案されたことを紹介.
同提案は,同市に設置された「行政区調査研究会」*1が取りまとめられた「中間とりまとめ」に記載されている模様.現段階では,同まとめの成案は,同市HPには掲載されておらず,2011年10月27日に開催された第9回の同会「配付資料」*2として,「まとめ(案)」の確認が可能.成案も公表後,要確認.
同まとめ(案)では,「区民にとって身近な事業を,地域特性に応じて実施するためには,地域や区民の思いを汲み上げて,事業を企画し予算を組み立てていくための予算編成プロセスを構築するとともに,業務運営について区民からのチェックを受ける仕組みを作る必要がある」との問題認識のもとに,具体的には「区政会議」により「幅広い区民アンケートなどを基に,区に関わる事業の前年度の実績等を評価」を行うこと,そして,「その事業が地域の実態に基づいたより効果的なものとなるよう」に「次年度予算に関して意見を述べ」ること,更に「区役所と局は,その意見や区役所において把握した地域ニーズを踏まえて,次年度の予算を組み立てていく」*3という場と手順を想定されている.
2008年10月18日付同年12月17日付2009年5月11日付2010年7月26日付の各本備忘録にて記録した,「市民にその市予算のある程度程度の配分を任せる」,「参加型予算(participatory budgeting)*4」の取組としても整理ができそうな同提案.まさに,「民主主義の赤字(Democratic deficit)」への対応策としても,興味深い.実際に同取組が開始された場合,「住民を予算の決定仮定に巻き込み,関心を起こすととともに,住民共同ニーズをよりよく反映」*5することになるのか,はたまたは反映されるがゆえに「その要求に応えるたけに重点事業数が多くなる」*6ことになるのか,財政危機のなかでの同取組の運営とその効果もまた,要観察.

*1:大阪市HP(市政・区政改革行財政改革区政改革)「行政区調査研究会

*2:大阪市HP(市政・区政改革行財政改革区政改革行政区調査研究会)「第9回 配付資料

*3:大阪市HP(市政・区政改革行財政改革区政改革行政区調査研究会第9回 配付資料行政区調査研究会 中間とりまとめ(案」11頁

*4:Graham Smith.(2009)Democratic InnovationCambridge UP:34.

Democratic Innovations: Designing Institutions for Citizen Participation (Theories of Institutional Design)

Democratic Innovations: Designing Institutions for Citizen Participation (Theories of Institutional Design)

*5:諸富徹・門野圭司『地方財政システム』(有斐閣,2007年)241頁)

地方財政システム論 (有斐閣ブックス)

地方財政システム論 (有斐閣ブックス)

*6:伊藤修一郎「首長の戦略・マニフェストと総合計画」村松岐夫・稲継裕昭・財団法人日本都市センター編著『分権改革は都市行政機構を変えたか』(第一法規,2009年)34頁

分権改革は都市行政機構を変えたか

分権改革は都市行政機構を変えたか