20日で就任から丸10年となる神戸市の矢田立郎市長(71)は、神戸新聞社のインタビューで、子どもや子育てに関する施策を一元的に担う「こども局」(仮称)を早期に新設する考えを示した。複数部局に分かれた弊害をなくし、幼保一体化などの新たな子育て支援策に迅速に対応するのが目的。新設時期については「議会の承認も必要だ」とした上で、「来年度に向け考えていく」とした。
 子どもに関する同市の部局は現在、乳幼児期は保健福祉局と教育委員会に分かれ、就学後は市民参画推進局も加わる。子ども施策を一体化した「こども局」などの部局は、横浜、川崎など他の政令指定都市でも設置している。保育所と幼稚園をこうした部局で所管し、小中高校の担当部署は教育委員会に残すケースなどがある。矢田市長は「教育分野をどう組み合わせるか、悩ましい」などとし、他市の例なども参考に組織再編の具体策を検討する考え。政府は、特に都市部で課題となっている待機児童の解消に向け、2013年度から幼稚園と保育所を一体化した「こども園」を柱とする新しい子育て支援制度を始める。
 神戸市では市議会や市民らから、一元的な組織新設を求める声が上がっており、こうした国の動きにも対応する必要があると判断した。(黒田勝俊)

本記事では,神戸市における機構改革の取組方針を紹介.「こども局(仮称)」の設置方針とのこと.
2008年12月12日付の本備忘録にて記録した,政令指定都市における市長の直近下位組織として「こども」(又は,「子ども」)を名称にもつ部局.「市町村の組織」は「制約がなく」「多種多様であり,それぞれが自由な組織編成を行ってきた」*1ことは確かではあるものの,個別の分野を観察すると共通性と差異も窺うことができそう.具体的には,2011年11月現在での設置状況は,2008年11月現在との対比をしつつ整理をしてみると,以下の表の通りとなる.

市名 2008年11月 2011年11月 事務分掌(条例上の規定)
札幌市 子ども未来局 子ども未来局*2 児童の健全育成に関する事項
仙台市 子供未来局 子供未来局*3 子供の保健福祉及び健全育成に関する事項
さいたま市 子ども未来局*4 子ども及び青少年の健全育成に関すること,子どもの保育に関すること
千葉市 こども未来局*5 こどもの健全育成に関する事項
横浜市 こども青少年局 こども青少年局*6 こども及び青少年育成に関する事項
川崎市 市民・こども局*7 市民の生活に関すること,広報に関すること,スポーツに関すること,文化に関すること,子ども及び青少年の育成に関すること
相模原市
新潟市
静岡市 保健福祉子ども局 保健福祉子ども局*8 社会福祉に関する事項,社会保障に関する事項,子ども及び青少年の育成に関する事項,保健衛生に関する事項
浜松市 こども家庭部 こども及び青少年並びに家庭に関する事項
名古屋市 子ども青少年局 子ども青少年局*9 子ども及び青少年の育成に関する事項,次世代育成支援の総合的な調整に関する事項
京都市
大阪市 こども青少年局 こども青少年局*10 児童及び青少年の健全育成に関する事項
堺市 子ども青少年局 子ども青少年局 児童及び青少年の健全育成に関する事項,児童保育に関する事項
神戸市
岡山市
広島市 こども未来局*11 子どもの育成に関すること
北九州市 子ども家庭局 子ども家庭局*12 子ども及び家庭に関する事項,男女共同参画社会の形成に関する事項
福岡市 こども未来局 こども未来局*13 子どもに関する事項

岡山市相模原市は,上記の2008年12月12日付の本備忘録の時点では,政令指定都市への移行以前であるため,両市は除くとしても,この3年間でも,さいたま市川崎市浜松市広島市が,「こども」(又は,「子ども」)を名称にもつ直近下位組織を新たに配置されており,14都市と政令指定都市の大宗は,同名称を他の用語と組み合わせつつ用いられている(むしろ,本記事で紹介されているように,そのものずばりの「こども局」という名称は,存外,用いられていない,ことにもなりますね).
その組み合わせからは,「未来」と組み合わせるパタンが最も多く6都市(札幌,仙台,さいたま,千葉,広島,福岡),「青少年」と組み合わせるパタンが4都市(横浜,名古屋,大阪,堺),「家庭」と組み合わせるパタンが2都市(浜松,北九州)の順で採用されている.その他では,「市民」と組み合わせる川崎市,「保健福祉」と組み合わせる静岡市もあり,何れも,他の12都市では用語の組み合わせ際に「こども」(又は,「子ども」)を名称の先頭に置かれていることに対して,組み合わせる用語の2語目,3語目の配置にある.
ただ,事務分掌条例レベルでの事務分掌もあわせて確認してみると(各条例への引用は除きます),福岡市の「子どもに関する事項|,北九州市の「子ども及び家庭に関する事項」,浜松市の「こども及び青少年並びに家庭に関する事項|と包括的規定を置く都市も3都市はあるものの,その大半は,「健全育成」(札幌,仙台,さいたま,千葉,横浜,川崎,静岡,名古屋,大阪,堺,広島)との規定が置かれている.ただ,後者のなかでも,さいたま市の「子どもの保育に関すること」,堺市の「児童保育に関する事項」と保育を特出しされている場合もあることが分かる.果たし,同市の組織設計がどのように進められるか,要経過観察.
その内容からは極めて包括的でもあり,複合的でもあり,その一方で,時間軸からは限定的とも解せる「こども」(又は,「子ども」)の政策分野.一見する限りでは,教育政策とともに「分立性も非常に強い」ようではあるものの,「総合行政モデル」*14としての自治体レベルでの具現化も図られているのか,実際の事務分掌規程レベル,直近下位組織より下位組織の形態(いわば,「直近下位下位組織」),更には事務分担レベルや「直近下位下位下位組織」での組織形態が観察してみると興味深そう.要観察.

*1:稲継裕昭『地方自治入門』(有斐閣,2011年)138頁

地方自治入門 (有斐閣コンパクト)

地方自治入門 (有斐閣コンパクト)

*2:札幌市HP(市政情報市の概要組織案内)「子ども未来局

*3:仙台市HP(組織と業務)「子供未来局

*4:さいたま市市について各課の紹介)「子ども未来局

*5:千葉市HP(こども未来局)「こども未来局トップページ

*6:横浜市HP(各局の紹介)「こども青少年局トップ

*7:川崎市HP(局名一覧)「市民・こども局

*8:静岡市HP(静岡市の組織)「福祉部」「子ども青少年部」「保健衛生部

*9:名古屋市HP(市政情報市の組織(局室))「子ども青少年局

*10:大阪市HP(組織一覧)「こども青少年局

*11:広島市HP(市政全般広島市の概要市の仕事と組織組織)「こども未来局

*12:北九州市HP(市政情報組織・電話番号・職員録組織別ホームページ一覧)「子ども家庭局

*13:福岡市HP(組織一覧)「こども未来局

*14:村上祐介『教育行政の政治学』(木鐸社,2011年)70頁