大阪都構想に絡み、本紙が二十三区長に都区制度について尋ねたアンケート。中野区長以外は現行制度を「変えるべきだ」と回答したが、その内容を複数選択で聞いたところ、固定資産税など(調整三税)を都が集めて各区に再分配する「都区財政調整制度」では「変えるべき」は半数にとどまった。一方、都市計画などの権限についてはほぼ大半の区が移譲を求めた。
 調整三税は市町村であれば全額、徴収した自治体の税収となるが、二十三区では再配分によって財政力の格差を補っている。二〇〇九年度普通会計決算で、財政調整交付金への依存度が30%以上の区は台東、墨田、江東、北、荒川、板橋、練馬、足立、葛飾、江戸川の十区。財調制度を「変えるべき」とした区長は財政力の強い区を中心に十一人いたが、依存度30%以上では板橋区長だけ。
 「その他」の記述では文京区長が「自治権拡充が望まれる」としたほか、台東区長は「都市計画決定児童相談所の設置等は区が行うべきだ」とした上で「行財政基盤の強化に取り組む姿勢が重要」と、自らの体力づくりを課題とした。豊島区長は、都と区の役割分担の協議を踏まえて「財政調整負担割合の見直し」を求めた。渋谷区長は「都市計画から町会、商店街にかかるまちづくりまで都との二重行政」とし、個別の商店街への補助事業まで都が関与している実態を批判。大田区長も「市と比較して、権限・財源等に大きな制約があり、自主・自立的な行財政運営を行う際の妨げになっている」と、不満を記した。
 また多くの区長が移管を望む児童相談所事務は、区の事務とする方向で都区がおおむね合意しているが、具体的な方法は決まっておらず、懸念する意見があった。アンケートとは別に、多摩地区最大の五十八万人を抱える八王子市の黒須隆一市長に見解を聞いたところ「特別区上下水道など住民に密着した事務で都任せの部分があり、いいとこ取り」と指摘。大阪都構想については「東京と同じ制度をつくったところで問題は解決しない。二重行政の解消なども結局は都道府県と市がよく話し合うしかない」と話した。

本記事では,東京都に位置する特別区の23名の区長に対する意識調査の結果を紹介.東京新聞による調査.大変興味深い.
質問事項は,「都区制度」に関して「変えるべき」と考える9項目.9項目のうち,「その他」を除く8項目の回答状況を拝見させて頂くと,次の通りの結果.

  • 「都区財調制度による調整3税の徴収,配分」11区(千代田,中央,港,新宿,品川,目黒,大田,世田谷,渋谷,杉並,板橋).
  • 「都区財調交付金の配分額が23区内で大きく異なること」3区(千代田,中央,渋谷).
  • 「区の区域」1区(渋谷).
  • 上下水道・消防を都が担っていること」5区(千代田,中央,港,北,板橋).
  • 「市が行う都市計画決定も都が行うこと」18区(千代田,中央,港,新宿,墨田,高等,品川,目黒,大田,世田谷,渋谷,杉並,北,荒川,板橋,練馬,足立,葛飾).
  • 「法的に市になれないこと」3区(千代田,大田,板橋).
  • 「職員を23区で共同採用していること」3区(品川,渋谷,板橋).
  • 児童相談所などの機関を区が設定できないこと」18区(千代田,中央,港,新宿,墨田,高等,品川,目黒,大田,世田谷,渋谷,杉並,北,荒川,板橋,練馬,足立,葛飾).

2001年に策定された基本構想では,同区の「定住人口の急減に対する危機意識から」*1,「「千代田市」をめざ」*2されている千代田区では,勿論,「法的に市になれないこと」を「変えるべき」との回答を示されている.
「変えるべき」という回答を示された各区長は,「平成23年度都区財政調整区別算定結果」*3を参照させて頂くと,不交付区である港区を始めとした財政的に安定的な区(いわば,「富裕区」)が「都区制度」への改革指向を持つ,との仮説を一見する限りでは導き出せそう.ただ,区長単位での回答状況を見ていくと,必ずしも,財政的要因のみでが制度改革指向にあるとまでは言えそうもない.具体的には,「その他」を除く8項目に関して「変えるべき」と回答した事項の多い順では,千代田区板橋区が6項目,次いで,中央区と渋谷区の5項目,港区,品川区,杉並区の4項目の順となる.一方で,上記8項目には,ゼロ回答ではあるものの,「その他」のみに回答した区は,文京区,台東区江戸川区,更に,「その他」も含めて,ゼロ回答であった区は,中野区という結果であったことが分かる.改革指向の相異の発生要因は,考えてみたい観察課題.