「歴史都市」の財産を次代に引き継ぐため金沢市文化財保護条例を大幅に改正する。文化財を譲渡する場合は市への事前通知を義務づけることで県外資本への流出や売買を防ぎ、意図的な損壊があれば当事者の氏名などを公表する。伝統建築や金箔(きんぱく)、象眼など文化財修復に必要な技術の保存も進める。市議会三月定例会に改正案を提出する。(押川恵理子)
 市によると、譲渡の事前通知や氏名公表を盛り込んだ条例は全国でも珍しい。現条例が施行された一九七三(昭和四十八)年以降、大規模な改正は初めてとなる。市は二〇一四年度末の北陸新幹線金沢開業を見据え、都市の魅力向上につなげようと文化財の指定を増やしている。今後、県外や海外資本による売買などで流出するケースも想定されることから、文化財の保護を強化することにした。条例改正では意図的な損壊などに対する罰則も盛り込む。所有者が代わる際に権利義務の引き継ぎを徹底させるほか、修理などの補助金で目的外の使用が認められれば返還を求める。不適切な管理や修理が見つかった場合は市が必要な措置を勧告する。
 改正によって条例の規定は現在の十八項目から三十項目まで大幅に増えるため、市文化財保護課は「よりきめ細かく指導・助言ができ、文化財の確実な保護につながる」と話している。市は二月二日まで条例改正の骨子案に対する市民の意見をホームページなどで募集している。問い合わせは同課=電076(220)2469=へ。

本記事では,金沢市における文化財保護条例*1の改正方針を紹介.同条例改正の骨子案に関しては,同市HPを参照*2
現行の同条例では,第4条第2項により,「文化財の所有者その他の関係者は」「文化財が貴重な国民的財産であることを自覚し」「これを公共のために大切に保存するとともに」「その文化的活用に努めなければならない」との「心構」が規定.そして,「文化財の現状を変更する行為」に対して「指導」で対応されてきたことが本記事では紹介されている.そこで,「歴史都市の認定に伴い.文化財の権利義務の承継や損壊などの保存に影響を及ぼす行為についても,よりきめ細やかな対応」の必要性があるとされ,「指定文化財の保存に影響を及ぼす行為に関して」「きめ細やかな助言・指導」に関して,新たに同条例に規定する方針にある.具体的には,次の6項目.
まずは,「現所有者」が「指定文化財を譲渡しようとする場合」「事前に市にその旨を通知」する「譲渡の事前通知」制,第二に,「指定文化財を意図的にき損するなど」の「社会通念に反する行為」を行ったもの「その旨を公表」する「氏名などの公表」制,第三に,「指定文化財の所有者変更に伴」う「旧所有者から新所有者への権利義務の承継や指定書の引渡しなどを義務づけ」る「権利義務の承継」制,第四に,「指定文化財の修理など」を「目的に反した場合」「市は所有者に対して,補助金の返還を求」める「補助金の返還」制,第五に,「所有者が、指定文化財の不適切な管理や修理を行っている場合」に「管理方法の改善や保存施設の設置など」の「措置」について「勧告」する制度,最後に,「指定文化財の意図的なき損などの行為」への「罰則」である.
6項目は「求める方向に意思決定させれるための規定」としては,基本的には「制裁措置」となる.あわせて,「指定文化財を保存するため」の「伝統的な技術や技能」に関しては,「誘導措置」*3も検討.具体的には,「指定文化財を保存するために必要な伝統的な技術や技能のうち」「保存するための措置を講じる必要があるものを金沢市選定保存技術として選定」する「市選定保存技術の選定」*4制を導入する方針.勿論,措置の不在が「指定文化財の保存に影響を及ぼす行為」に至る唯一の要因とならない場合も想定されなくはないものの,補完される「制裁」と「誘導」の両制度を通じて,保存という努力義務による協力行為への促しを図す取組としても整理ができそう.実施状況も要観察.

*1:金沢市HP(市政情報:市政情報条例・規則金沢市例規集)「文化財保護条例」(昭和48年3月28日条例第8号〔昭和24年7月28日条例第384号金沢市文化財保存選奨条例を全文改正〕)

*2:金沢市HP(パブリックコメントパブリックコメント案件金沢市文化財保護条例改正の骨子案について)「金沢市文化財保護条例改正骨子案

*3:北村喜宣「法執行の実効性確保」北村喜宣・山口道昭・出石稔・礒崎初仁編『自治政策法務』(有斐閣,2011年)175頁

自治体政策法務 -- 地域特性に適合した法環境の創造

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*4:前傾注2・金沢市金沢市文化財保護条例改正骨子案)