県は2010年度に確認された家族や親族による高齢者虐待の件数をまとめた。県内は150件で統計を取り始めた06年度以降初めて減少した。県高齢者福祉課は「高齢化に伴い全国的には右肩上がり。県内は大都会に比べ地域のつながりが強く、それが抑止力になっているのかもしれない」と推測。一方、内訳でみると、金銭を取り上げるなどの経済的虐待は増え続けており、景気低迷の影響が透けて見えるという。
 まとめによると、虐待の加害者は「息子」が61件(41%)で最も多く、「夫」33件(22%)、「娘」27件(18%)、「孫」13件(9%)と続いた。同課は「男性は介護に加え、慣れない家事も負担に感じ、ストレスをため込みやすいようだ」と分析。被害者は女性が79%に上り「長寿で高齢者人口が多く、認知症になりやすいため」とみられる。寄せられた通報や相談は214件。通報者は「介護支援専門員・介護保険事業所職員」が最も多く37%。このほか、「家族・親族」(14%)、「行政職員」(8%)、「近隣住民・知人」(8%)など。「被害者本人」からの通報は15%にとどまり、“第三者の目”がなければ家庭内の虐待が発覚しにくい現状がうかがえる。虐待の内訳では、殴る蹴るといった身体的虐待が89件、経済的虐待が56件、暴言など心理的虐待は55件。このうち経済的虐待は06年度の34件から1・6倍に増えた。「お年寄りは年金という定収があるため、仕事がなく金に困った親族がそれを使い込むケースが多いようだ。認知症の高齢者を金融機関に連れていき、預貯金を解約させる手法もあった」という。
 対策として同課は「介護者の負担の軽減」を挙げる。虐待家庭の39%は介護保険の認定を申請しておらず、「介護保険制度を上手に使うことが有効。経済的な虐待に対しては成年後見制度の利用なども解決策の一つ」と話す。2月には、市町村職員らを対象に虐待の判断基準を身に付け適切に対応できるよう研修会を開き、虐待の予防や早期発見を促していく。

本記事では,大分県における高齢者虐待に関する調査結果を紹介.同調査結果に関しては,同県HPを参照*1
2010年度の相談・通知件数は,本記事でも紹介されているように「214件」.2009年度は「240件で26件減少」*2.虐待者の続柄に関しては本記事で紹介されているため,下名の関心から,これら虐待に関する「情報摂取」*3から同調査結果を拝見.その結果,「相談通知者」は「介護支援専門員・介護保険事業所職員」が「36.9%」と最も多く,次いで,「被虐待高齢者本人」が「14.5%」,「家族」の「13.6%」の順となる.加えて,被虐待者の世帯構成が「単身世帯」は11.3%と限定的.方や「未婚と子と同一世帯」が「27.3%」,「既婚の子と同一世帯」が「23.3%」の現状にあり,これにより,結果的に「虐待者との同居」が「80.7%」*4にある.
そのため,虐待情報の顕在化には,「介護支援専門員・介護保険事業所職員」の役割が極めて大きい.児童虐待防止に関しては,「他機関との連携する“場”を制度的につくる」ことで「情報の共有や意思疎通を図ろう」とする「巻き込み型」と,「他機関とのコネクションを保有している職員を児童相談業務に従事」することで「連携を容易にしようとする」「取り込み型」*5の配置が実施・検討されうる,という.高齢者の虐待に関しては,限られた「取り込み型」に依拠しているとも解せそう.「普段の生活の中で信頼関係ができているつながりを活用」*6しうような「取り込み」の整備は,悩ましい課題.

*1:大分県HP(組織からさがす:高齢者福祉課:高齢者の虐待の状況)「平成22年度高齢者虐待の防止,高齢者の擁護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果(大分県)」1頁

*2:前傾注1・大分県(平成22年度高齢者虐待の防止,高齢者の擁護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果(大分県))1頁

*3:縣公一郎「行政の情報化と行政情報」福田耕治・真渕勝・縣公一郎『行政の新展開』(法律文化社,2002年)62頁

行政の新展開

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*4:前傾注1・大分県(平成22年度高齢者虐待の防止,高齢者の擁護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果(大分県))2頁

*5:手塚洋輔「児童相談行政における関係機関とのネットワーク構築」『児童相談行政における業務と専門性』(財団法人日本都市センター,2011年)30頁

日本都市センターブックレットNo.25 児童相談行政における業務と専門性―みんなで支える子どもと命―

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*6:西垣千春『老後の生活破綻』(中央公論新社,2011年)153頁

老後の生活破綻 - 身近に潜むリスクと解決策 (中公新書)

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