県は2012年度、車線数や歩道の幅員など県道整備の技術的基準を県条例で独自に定める。道路の技術的基準の設定は、国の法令で全国一律だったが、地域主権改革による義務づけ・枠付けの見直しで、一部が地方自治体に委任された。
 条例案は2月県議会へ提出し、可決されれば4月1日から施行する。県道路局は「これまでは順守することで逆に、山間部に必要以上の立派な道路を造らなければならないようなケースもあった」と説明。条例化を、地域の実情や住民のニーズに合った効果的、効率的な道路整備につなげる方針だ。道路局と都市局、県警本部で構成するワーキンググループを設置。条例案や具体的な付随規則の検討を進めている。従来の国の基準をベースに、県内の交通事情を勘案して勾配や停車帯幅、標識の大きさなどの項目を独自基準に変更する方向で調整する。さらに、有識者会議の設置も明文化する方針。利用者の声を随時反映させ、弾力的に運用する仕組みを目指していく。
 道路法などは、交通の安全性や円滑性を確保するための技術的基準を規定し、新設や改修時の設計を縛ってきた。国道や県道などの種別、交通量、建築物の密集度、地形などに基づき車線数、曲線半径、歩道幅などの値が細かく決まっている。しかし、画一性への地方の批判は根強く、より柔軟な運用を求める声が上がっていた。国は11年に地域主権改革の第1次、第2次一括法を成立させ、道路法を改正。安全維持のための最低限の項目を除き、都道府県道や市町村道の技術的基準を地方自治体に委ねることにした。

本記事では,静岡県における,地域主権一括法を受けた条例整備の取組を紹介.同取組に関しては,現在のところ,同県HPでは確認できず.残念
地域主権一括法に基づく,基準の分類により,その性格からは,自治体が「自分で自分の行動を律するため」,換言すれば「自治体が自分の手足をどこまで縛るか」を定める「自律的基準」*1の一つとして位置づけることができる,道路の構造的基準.本記事を拝読させて頂くと,まず,同県では「道路局と都市局,県警本部で構成するワーキンググループを設置」され,「従来の国の基準をベース」とされつつも,「県内の交通事情を勘案」しつつ,「独自基準に変更」した縛り方の検討と調整が進められる模様(県警も含まれるのですね).無論,「自律的基準」とはいえ,その定め方も「自律的」で終えることなく,「事業実施の正否は地域住民の意向によって左右」されるとすれば,「地域住民の意向の反映」*2も肝要.同県では,本記事中段でも紹介されている「利用者の声を随時反映」される機会を設けられる模様.どのような「声」が発せられるか,たいへん興味深い.
「原課の強み」*3により,自律的基準を新たに定めることになるか,又は,「従来の国の基準」という「デフォルトオプション」*4により,いわゆる第一次地方分権改革の自治体での実施過程で観察された「分権化が他方で現場職員の反分権的(集権的)指向を生み出す」,「分権化のパラドックス*5的な基準の設定(持続)に至るのか,要経過観察.

*1:小泉祐一郎『地域主権改革一括法の解説』(ぎょうせい,2011年)129頁

地域主権改革一括法の解説

地域主権改革一括法の解説

*2:前掲注1・小泉祐一郎2011年:96頁

*3:川粼政司『ポイント解説「地域主権改革」関連法 自治体への影響とその対応に向けて』(第一法規,2012年)161頁

ポイント解説「地域主権改革」関連法 自治体への影響とその対応に向けて

ポイント解説「地域主権改革」関連法 自治体への影響とその対応に向けて

*4:リチャード・セイラー,キャス・サンスティーン『実践行動経済学』(日経BP社,2009年)141頁

実践 行動経済学

実践 行動経済学

*5:嶋田暁文「地方分権と現場改革−分権改革によるインパクトはなぜ乏しいのか」北村喜宣編著『ポスト分権改革の条例法務』(ぎょうせい,2003年)98頁

ポスト分権改革の条例法務―自治体現場は変わったか

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