東日本大震災時に都内で大量の帰宅困難者が出たことを受けて、都が検討していた帰宅困難者対策条例案の骨子が十三日、発表された。都内の全事業所が従業員の食料などを三日分備蓄することを義務化し、災害発生時に帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設の確保を盛り込む。二十二日まで都民の意見を募り、二月開会の都議会定例会へ条例案を提出する。
 震災時には、従業員に帰宅を呼び掛けた企業が多く、都内では約三百五十二万人が帰宅困難に陥った。この教訓から、条例は企業に対して、従業員を職場に待機させ、三日間しのげる飲料水や食料、毛布を備蓄するよう求める。備蓄の詳細は条例制定後につくる実施計画で示す。百貨店や劇場など大規模な集客施設や駅、学校にも利用者や児童生徒を外に出さず、施設内で保護するよう求める。いずれも努力義務で、罰則は設けない。国や都、区市町村、民間事業者が協力して一時滞在施設を確保することも条例に盛り込む。一時滞在施設に指定された施設には、食料や毛布を備蓄する。震災時には、携帯電話がつながらず家族の安否や交通機関の運行状況が確認できないため、歩いて帰ろうとした人が多かったことから、条例では安否確認と災害関連情報提供の体制整備をうたう。予備電源を確保して駅に大型ビジョンを設置して情報を流し、災害用伝言サービスの普及啓発を図る。
 条例案の骨子は、都のホームページで公開。意見はファクス=03(5388)1270=や郵便=〒163 8001 東京都防災管理課=で受け付ける。

本記事では,東京都における「帰宅困難者対策の基本的考え方」について紹介.同「考え方」に関しては,同都HPを参照*1
同「考え方」では,同都,「内閣府(防災担当)」が「帰宅困難者対策」に関しうて「国の関係省庁,首都圏の地方公共団体,関係民間企業,団体等を構成機関とする協議会を設置」し,「一斉帰宅抑制の基本方針」*2を策定.今後は,同基本方針をもとに,「企業等従業員の施設内待機の努力義務化」 ,「企業等従業員の3日分の備蓄(飲料水,食料等)の努力義務化」,「大規模な集客施設,駅等の利用者保護の努力義務化」,「学校等における児童・生徒等の安全確保の努力義務化」,「官民による,安否確認と災害関連情報提供のための体制整備等」,「一時滞在施設の確保にむけた都,国,区市町村,民間事業者の連携協力」,「帰宅支援(災害時帰宅支援ステーションの確保に向けた連携協力等)」の7項目を主な内容におく,「帰宅困難者対策にかかる条例」*3の策定を検討されている.最初の2項目が示すように,まさに,同「考え方」が述べるように「企業の協力が不可欠」*4な取組.
同「考え方」を拝読させて頂くと,同都が「東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県に所在する企業739社」に対し実施した調査からは,「従業員向けの食料、飲料水などの備蓄」を行っている企業は「約71%」,「3日分以上の備蓄を行っている企業」は「飲料水で約42%,食料品では約38%」*5の現状にある(調査対象とされた企業739社の間でも企業の規模に差異があることも考えられますが,企業規模により備蓄状況の差異はどの程度あるものなのでしょう).そして,同「考え方」では,「企業における備蓄等,帰宅困難者対策の一層の充実が必要」*6であることを立法事実として,上記の条例案の検討を図られている.ただし,企業の自発的な取組となるため,いずれも上記の通り「努力義務」として整備される方針.努力義務とはいえ,その努力を促す促す方策が,今後の制度設計上の課題となりそうか.例えば,災害関連情報の共有という観点に重きを置き,「サンクションのひとつ」としてではない,「公表」*7とその取組への評価*8を図り,「自主的アプローチ」*9を促す,誘因規定の整備も適切そうか.今後の検討状況は,要経過観察.

*1:東京都HP(各局のページ総務局災害対策情報(総合防災部)「東京都の帰宅困難者対策の基本的考え方」意見の募集について)「東京都の帰宅困難者対策の基本的考え方」(平成24年1月13日,東京都 )

*2:前掲注1・東京都(東京都の帰宅困難者対策の基本的考え方)11頁

*3:前掲注1・東京都(東京都の帰宅困難者対策の基本的考え方)21頁

*4:前掲注1・東京都(東京都の帰宅困難者対策の基本的考え方)5頁

*5:前掲注1・東京都(東京都の帰宅困難者対策の基本的考え方)5頁

*6:前掲注1・東京都(東京都の帰宅困難者対策の基本的考え方)6頁

*7:北村喜宣『環境法』(弘文堂,2011年)175頁

環境法

環境法

*8:前掲注7・北村喜宣2011年:110頁

*9:前掲注7・北村喜宣2011年:112頁