和歌山県田辺市営住宅家賃の高い徴収率(2010年度99・32%)が全国から注目を浴びている。徴収手法について自治体から電話やメールでの問い合わせ、視察が相次いでいる。初めて講師の依頼も宮城県からあり、27日に市の担当職員が出向き「指南役」を務める。
 市営住宅は1365戸あり、10年度は家賃総額1億6510万円に対して1億6398万円を徴収。市町村合併後の05年度(93・69%)から年々上昇し、県内9市で最高の徴収率を誇っている。市は滞納者に毎月督促状を送り、年3回催告して納付を促している。6カ月以上の滞納か、10万円以上を滞納すれば民事調停の申し立てに踏み切っている。ほかの自治体では悪質な滞納者には訴訟を起こすことが多いが、市はできるだけ話し合いでの解決を目指しているという。
 市営住宅の徴収で民事調停の申し出に乗り出す自治体は珍しく、08年度からこれまで市の取り組みについて、14の自治体から電話やメールでの問い合わせ、視察を受けた。昨年暮れには宮城県から講師の依頼があった。宮城県は徴収率を公表していないものの、累積滞納額が昨年3月末時点で3億2千万円あり、徴収に苦心している。震災前は県営住宅が8900戸あったが、震災後、新設で1万戸、仮設住宅2万戸、民間賃貸住宅の借り上げ2万戸の計5万戸が増える。田辺市の徴収率を新聞記事で知り、市の取り組みを学びたいという。依頼を受けた市管理課からは市営住宅係になって7年目となる土井信喜さん(36)が出向く。宮城県職員や同県内で公営住宅を管理する公社職員ら約20人を対象に「債権管理の重要性と問題点」「政策的な歩みと実績」「法的措置の実体験」「民事調停による交渉の有効性」などのテーマで語る。
 市営住宅を担当する市管理課の鈴木隆司課長(54)は「長年にわたって滞納者と話し合いで解決する取り組みを積み重ねてきた。注目されるのは光栄」と話している。

本記事では,田辺市における市営住宅家賃の家賃徴収の取組を紹介.「106団地1,371戸の市営住宅を管理」*1されている同市.家賃の徴収率が,2010年度は99.32%であったことを紹介.
同割合の徴収率の確保には,第21条に基づく「督促」*2を毎月実施.その後,「6カ月以上の滞納」又は「10万円以上を滞納」された場合,「民事調停」に移行されていることが,その要因とも,本記事では報道.民事調停を通じた「じっくりとした話し合い」には「ある程度のコスト」*3は掛かるものの,その結果,確実な家賃徴収の確保へと結びついている模様.なるほど,興味深い.
勿論,「不知」による「話せば分かる」方もあれば,「確信犯」*4的に「話しても分からない」滞納事例も想定することもできる.そして,やむにやまれず滞納せざるを得ない,「話して分かっても払えない」事例も想定されなくはない.滞納事例毎での解決方法に関して,是非ともお話を伺いたい.

*1:田辺市HP(管理課)「市営住宅 (管理課)

*2:田辺市HP(田辺市例規集)「田辺市営住宅条例」(平成17年5月1日,条例第159号)

*3:John,Peter et al. (2011),Nudge, Nudge, Think, Think: Using Experiments to Change Civic Behavior,Bloomsbury Publishing PLC:19

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*4:クリストファー・フッド『行政活動の理論』(岩波書店,2000年)67頁

行政活動の理論 (岩波テキストブックス)

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