県民生活に影響する施策について決定前に県民から意見を募り、反映させる県のパブリックコメント(意見提出)制度で、県民から寄せられる意見数に、テーマによって大きな開きが出ている。今年度では、166件の意見が集まった施策があった一方、ゼロの案件も。県民が県政に直接参加できる機会だけに、県は「より多くの県民に制度を知ってほしい」として周知や運用面で更に工夫ができないか検討を始めた。【井上卓也】
制度は03年に県の全ての機関で導入された。対象となる施策の原案や趣旨、目的を県の施設や市町村役場、ホームページなどで公表した上で約1カ月間、郵送やファクス、電子メールで意見を受け付ける。各担当部局は、意見を踏まえ、必要なら原案に修正を加え、反映しなかった意見についても、その理由や県の考え方をまとめて公表している。今年度のパブリックコメントで募集を終えた施策は22件(20日現在)。昨年4〜5月に実施した、県政運営指針を対象とした次期計画(素案)に対する意見募集には、13人から166件が寄せられたが、意見がゼロだった施策は六つに上った。過疎問題や教育など特定のテーマで多く集まる傾向があるという。制度全体の結果を集約する県県民との協働課は「施策に特に問題がなく、意見が来ない例もあるのでは」と話している。制度の実施状況や結果は、県ホームページなどで公表しており、現在2案件で意見を募集している。
本記事では,徳島県におけるパブリックコメント制度の運用状況を紹介.同紙では「県民から寄せられる意見数に,テーマによって大きな開きが出ている」ことを報道.個別のパブコメに対する意見提出の状況は,同県HPを参照*1.
2012年1月19日現在,24件のパブコメが行われており,21件に関しては意見応募が終了し,集計結果が示されている.これらのうち,4件の「集計中」を除き,17件の応募状況を,意見を提出された人数,そして,意見数により,降順で整理してみると,以下の表の通りとなる.
件名 | 人数 | 意見数 | |
---|---|---|---|
「オンリーワン徳島」の実現を目指すための「次期計画(素案)」 | 13 | 166 | |
とくしま未来創造プラン〜徳島からの新たな挑戦〜 | 9 | 43 | |
「徳島県食料・農林水産業・農山漁村基本計画」改訂素案 | 8 | 76 | |
徳島東部都市計画区域マスタープラン(素案) | 8 | 22 | |
「徳島県西部圏域振興計画」の見直しについて | 5 | 32 | |
「徳島県食の安全・安心基本指針」改定案 | 3 | 12 | |
徳島県LEDバレイ構想ネクストステージ行動計画(案) | 3 | 11 | |
第9次徳島県交通安全計画(中間案) | 3 | 9 | |
「徳島県食の安全安心推進条例」改正案 | 3 | 4 | |
柴川生活貯水池建設事業の検証に係る対応方針(素案) | 3 | 3 | |
徳島県感染症予防計画(改定案) | 1 | 1 | |
徳島県汚染土壌処理業に関する指導要綱(案) | 0 | 0 | |
「二級建築士及び木造建築士の懲戒処分の基準」並びに「建築士事務所の監督処分の基準」の制定案 | 0 | 0 | |
「徳島県レッドリスト(哺乳類)の改訂案 | 0 | 0 | |
生活安全警察関係の行政処分に関する規則の一部改正 | 0 | 0 | |
「第7次水質総量削減計画(案)」及び「総量規制基準(案)」 | 0 | 0 | |
建築基準法に基づく中間検査の対象建築物の拡大(案) | 0 | 0 |
本記事では,「過疎問題や教育など特定のテーマで多く集まる傾向」とも分析.なるほど.方や,上記の表からは,例えば,基本計画等の行政計画への意見提出は見られるもものの,特に,人数0,意見0の案件(以下では,「ゼロゼロ案件」と呼ぶ)では,要綱,規則,基準等の行政基準であり,その形式による相異も窺えそう.これらの基準に対しては,自治体もまた「プレ接触」*2による事前調整が図られていることも想定されなくもないが,「ゼロゼロ案件」が生じる,形式面での相異の要因は,考えてみたい観察課題.
*1:徳島県HP(組織:県民環境部:県民との協働課)「あなたのご意見をお聞かせください:オープンとくしま・パブリックコメント」
*2:原田久『広範囲応答型の官僚制』(新山社,2011年)92頁 広範囲応答型の官僚制 ―パブリックコメント手続の研究 (学術選書64)