大都市制度をめぐる議論が活発化する中、二重行政の防止を目的に、県とさいたま市が設置した「企画調整協議会」の初会合が三十日、同市役所で開かれた。上田清司知事と清水勇人市長は「連携強化が住民サービス向上につながる」との認識で一致した。
 会合で上田知事は「政令市でも人口七十万〜八十万人と、三百五十万人のところでは訳が違う」と述べた。政令市の権限を強化する「特別自治市」構想を他の政令市長と研究する清水市長も「今の制度でもできることはたくさんある。まずは県と市の連携が重要」と話した。具体的な課題として、上田知事は、河川整備は県、下水道整備は市に分かれるゲリラ豪雨時の対応を挙げた。協議会は今後、事務レベルでの協議を月一回程度開催する予定。(前田朋子)

本記事では,さいたま市と埼玉県における「企画調整協議会」の設置の取組を紹介.2012年1月7日付及び2012年1月19日付の両本備忘録で記録した同協議会の設置.第1回目の開催.同回の概要は,同市HPを参照*1
同回で配布された資料「埼玉県・さいたま市企画調整協議会設置要綱」*2を拝見させて頂くと,同協議会の設置目的は,同県と同市が「より一層緊密な連携と協調を図るため,県市にわたる政策課題や県市相互の重要施策に関して,意見交換や企画調整を行う」(第1条)ことにあり,具体的には,「県市にわたる政策課題で県市間の調整が必要なもの」,「県市の重要施策で相互の連携が必要なもの」に関して「意見交換及び企画調整を行う」(第2条)が主眼とされている.その構成は, 同市側が「政策局長,政策局総合政策監,財政局財政部長」,同県側は「企画財政部長,企画財政部副部長,企画財政部地域政策局長」となる.また,「必要に応じて,議題に関係する部長又は局長が会議に出席」(第3条)される(2012年1月19日付の本備忘録にて記録した,新たに就任された政策局副理事は正式には構成員としては置かれていないようですね).同協議会の開催は,「県または市が必要に応じ招集し,開催するもの」(第4条)とされ,何れの側にもその招集権が付与されている.また,「庶務」は,同市は「政策局」同県は「企画財政部」がそれぞれ所掌することになる.
加えて,同協議会の運営に関して別紙に基づき規定されている点もある.まずは,その「基本姿勢」である.ここでは,「県市は双方の提案に対し,互いに誠実に対応するもの」であることを明記する.「具体的な取り組み」では,「県において開催する場合」には「企画財政部長」が「座長」,「市において開催する場合」には「政策局長」が「座長」をそれぞれ務めることになる.そして,その「決定」は「県市双方の合意により決定する」とされ,必ずしも採決を取ることはない模様.「開催方法」に関しては,上記の要綱通り「県又は市が必要に応じ招集し,開催」し,「当面,毎月1回程度開催」となる.また,「原則」「県市交互」での開催になる.開催された「会議」の内容は,「会議終了後,結果概要を公表」もされる.これらの規程に基づき,本記事でも紹介されているように,第1回目が,2012年1月30日(月)午後1時15分から午後2時5分の50分間で開催.同回では,上記の構成員に加えて,同市長,同県知事も参加されている.
上記の規定通りに公表された同回の「結果概要」*3も拝読させて頂くと,同市と同県間での現状認識と同協議会の方針が分かり,興味深い.同県知事からは「さいたま市のエリア内では教育委員会や警察行政における予算の部分などを除きほとんど関与するところはない」として,「厳密な意味では二重行政はない」との前提となる現状認識は示されつつも「二重行政サービスはこれからもありうるし,今もあるだろう」ともいう.例えば,「ゲリラ豪雨対策における河川と下水の取組」を例示され,「河川の整備は県の仕事」,「さいたま市内における下水道の整備はさいたま市」となるため,「県市が一体的に取り組み,企画調整をす」することで「無駄のない行政」,「市民,県民にとっても安全、安心な行政」の実施が可能であるとして,「共に企画調整をしながらそれぞれの課題について,真撃に取り組んで共同の実を上げていく」と,「複雑でデリケート」な「二重行政」という「調整問題を一つひとつ解いていく」*4方針であることが述べられている.具体的には,下記の表の通り,防災,文化振興,スポーツ振興,産業振興,雇用,公共施設の6分野7協議事項に関する協議が進められる*5.今後の協議過程も,要経過観察.

分野 協議事項 想定される事項
防災 大規模災害対策における連携 帰宅困難者対策,緊急輸送道路沿道建物の耐震化など
防災 ゲリラ豪雨対策における連携 河川整備と下水道(雨水貯留管)整備など
文化振興 文化振興施策における連携 文化芸術に関する活動やイベント等の開催と芸術劇場・美術館・博物館等の文化施設との連携,芸術劇場周辺のまちづくりなど
スポーツ振興 スポーツ振興施策における連携 大型スポーツ大会の開催・誘致(さいたま市スポーツコミッション事業)と埼玉スタジアム2002,さいたまスーパーアリーナ等との連携など
産業振興 企業誘致・企業支援施策における連携 企業誘致・企業の海外進出支援,産学官の連携(さいたま医療ものづくり都市構想),中小企業支援制度融資など
雇用 雇用対策における連携 就業支援の連携(県・市のハローワーク特区提案,埼玉県版ウーマノミクス)など
公共施設 さいたま市内における県市公共施設の連携 図書館,公営住宅等の公共施設の適正な配置・運営など

*1:さいたま市HP(市についてさいたま市の広報記者への情報提供記者への提供資料記者への提供資料(23年度)記者への提供資料(24年1月)第1回埼玉県・さいたま市企画調整協議会を開催いたしました )「第1回埼玉県・さいたま市企画調整協議会を開催いたしました。

*2:前傾注1・さいたま市(第1回埼玉県・さいたま市企画調整協議会を開催いたしました。)3頁

*3:前傾注1・さいたま市(第1回埼玉県・さいたま市企画調整協議会を開催いたしました。)2頁

*4:松井望「大都市制度をめぐる諸問題‐「二重行政」という問題とその解‐」『都市とガバナンス』vol.16,2011年9月,40〜41頁

都市とガバナンス 第16号

都市とガバナンス 第16号

*5:前傾注1・さいたま市(第1回埼玉県・さいたま市企画調整協議会を開催いたしました。)3頁