広報紙は1部につき45円、救急出動は1回当たり4万2425円−。こんな「行政コスト」をホームページ(HP)などで公開する試みを、さいたま市が始めた。税金の使途を市民に見せて透明化を図り、職員のコスト意識も高めるのが狙いで、全国でも珍しい取り組みという。
 試行期間の本年度前半、コストが公開されるのは市長部局と市教委の106事業。市の広報紙を例に取ると、2010年度から印刷費を表記し「1部当たり20円」と表示している。だが、今回は人件費などを加えて発行部数(約670万部)で割り、11年度は「45円」とした。市のPRキャラクター「つなが竜ヌゥ」の着ぐるみは、1回の貸し出し・利用ごとに約4万7000円▽3月に行われた「さいたまシティマラソン」は参加者1人当たり1万503円−などとした。
 市行政透明推進課によると、県や深谷市も施策ごとにコストを公開したことがあるが、いずれも1年度限りで終了。現在も続くのは滋賀県のみという。制度を本格実施させる秋以降は、事業数の増加や変更も考える。公開はHPのほか、各区役所の情報コーナーでも冊子版を閲覧できる。HPには市民向けのアンケートコーナーも設け、自由記述欄もある。同課は「『コストが高すぎる』などの意見があれば、所管課に伝えたい」としている。(前田朋子・東京新聞

本記事では,さいたま市における「行政サービスコスト」の提示の取組を紹介.同取組に関しては,同市HPを参照*1.いわゆる「可視化」*2の取組.
同取組では,行政サービスのうち,「主要なもの」,「市民に身近で分かりやすいもの」,「人件費等を含めた総コストを把握しにくいもの」の3点から「106件」を選出.公表されている情報は,「事務事業名」(また,「1つの予算の事務事業を複数の事業」である「行政サービス」へと「細分化している場合」,「実施している事業の名称」),「担当課所名(関係課所名)」と「連絡先」と.当該事業(行政サービス)に関する「総コスト」の5項目.これらのうち,「総コスト」に関しては,「事業実施に要する市の経費」である「事業費」,「給与と共済費の合計を職員数で除した職員一人当たりの平均単価に,事業に関わる職員数を乗じた」額である「人件費」,「光熱費,コピー機,用紙,電話,郵便など職員の使用する事務費について行政施設に要する費用を職員数で除した平均値に,事業に関わる職員数を乗じた」額である「共通事務費」,「本庁舎,区役所など行政施設にかかる減価償却費を職員数で除した平均値に,事業にかかわる職員数を乗じた」額である「施設等減価償却相当額」をそれぞれ算出し,「合算した金額」となる.
106事業の各直近下位部門別での提示件数も下記の通り整理されている.保健福祉局が最も多く17件,次いで,市民・スポーツ局の13件,そして,建設局の10件と提示件数が多い部門となる.これら事業(行政サービス)の選定に至る要件,特に「主要なもの」に基づく選定の考慮手続も分かると,興味深そう.要確認.

部門名 件数
市長公室 5
行財政改革推進本部 2
政策局 4
総務局 7
財務局 5
市民・スポーツ局 13
保健福祉局 17
子ども未来局 8
環境局 6
経済局 8
都市局 8
建設局 10
消防局 2
出納室 1
教育委員会事務局 10

*1:さいたま市HP(市について情報公開・個人情報保護行政情報の見える化)「行政サービスコストの提示

*2:大崎映二『歳入減少時代の市町村経営の実践的手法』(学陽書房,2010年)94頁

歳入減少時代の市町村経営の実践的手法

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