高齢化の進行を踏まえ、川崎市第5期高齢者保健福祉計画と介護保険事業計画を一体化した「かわさきいきいき長寿プラン」が2012年度、スタートした。14年度までの3カ年の計画で、期間中、要支援・要介護認定者数の伸びが65歳以上の高齢者数の伸びを上回る見通し。このため、生きがいや健康づくり、介護保険サービスの着実な提供などを柱に、高齢者が地域で安心して暮らせるための施策を推進する。
 同プランは「川崎らしい都市型の地域居住の実現」を基本方針とし、▽高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるまちづくり▽介護が必要となっても川崎で暮らし続ける支え合いのまちづくり―の2点を基本目標に掲げている。目標達成へ向け、(1)いきがい・介護予防施策などの推進(2)地域ケア体制の推進(3)利用者本位の福祉サービスの提供(4)認知症高齢者施策の充実(5)高齢者の多様な住まい方の構築―の5点を基本方向と位置付けた。市内の高齢者人口は、10年(10月1日現在)が23万3974人(高齢化率16・59%)で、13年(同)には26万777人(同18・06%)となる見通し。一方、要支援・要介護認定者は10年が3万7604人であるのに対し、13年には4万5164人を見込む。10年と13年を比較した増加率は、高齢者が11・46%増、要支援・要介護認定者が20・10%増となっている。
 こうした状況を背景とした課題の解決に向けて、具体策として介護予防の普及・啓発、高齢者への活動の場の提供、生きがい・健康づくり、介護予防を行う団体への支援、地域包括支援センターの機能充実・強化、「見守りネットワーク」の充実、災害時の避難支援など防災体制の推進、介護保険サービスの着実な提供、在宅生活の支援―などを実施していく計画。市は計画策定に当たって、10年度に「川崎市高齢者実態調査」を実施。調査結果と第4期計画の総括に基づき、学識経験者、関係団体の代表者、市民公募委員による議論やパブリックコメント(市民意見)を踏まえ、同プランを策定した。

本記事では,川崎市における「かわさきいきいき長寿プラン」実施について紹介.
同プランは,老人福祉法第20条の8に基づく「高齢者保健福祉計画」と,介護保険法第117条に基づく「介護保険事業計画」とを「一体的に策定した3か年の計画」*1であり,いわゆる「一定の政策分野の課題を体系化して整理し,長期的な活動目標を掲げる」「政策分野別基本計画」*2の一つ.今回で「第5期」目に該当し,第5期目の「今回から」同市では,「計画により親しみを持ってもらえる」ことを企図し,同計画名へと「名称を定め」「今後も継続して使用」*3される方針.
同プランでは,本記事でも紹介されているように「都市型の地域居住の実現」を基本方針におき,「いきがい・介護予防 施策等の推進」,「地域ケア体制の推進」,「利用者本位の福祉サービスの提供」,「認知症高齢者施策の充実 」,「高齢者の多様な住まい方の構築」*4を施策として置いている.
同計画(プラン)に掲載されている第1期からの「計画の期間」の図を拝見させて頂くと,「第2期計画までは,計画期間が5年間」として策定され,「3年ごとに見直しを行う」運用が図られている.「計画策定の不可欠な要素」としての「「予測」と「調整」」*5において,「優秀な戦略は完全な成功をももたらしうるが,完全な失敗ももたらしうる」「戦略のパラドクス」*6ならぬ「計画のパラドクス」からの予測の困難性からだろうか,第2期も第1期の3年目,第3期も第2期の3年目に次期の計画を策定されてきたことから,第4期からはその計画期間は3年間と計画期間の短期化が図られている.
方や,同プランでは,同「市の人口がピークを迎えるまでの人口増加期」を対象に,「65歳以上の老年人口」として「「平成42(2030)年には約33.9万人」であり「人口に占める割合は,22.5%」*7との推計を示されてはいるものの,同計画期間での推計は明示されてはいないようでもあり,予測自体は長期的な時間感覚のもとにある計画でもある.いうなれば,推計と計画期間との分離は,明確な長期的な予測に基づき短期的な施策・事業が配置された計画として整理すべきか,又は,短期であるがゆえの予測の困難性からの予測の長期化として整理すべきか,不確実性と確実性という「相反する二つの極端の中間」*8に計画は策定されるとはいえ,推計と計画期間の2つの関係性は考えてみると悩ましい課題.他の自治体の同計画での各種推計と計画期間の内容は,要確認.

*1:川崎市HP(医療・保健・福祉・子育て高齢者・介護保険)「「かわさきいきいき長寿プラン」を策定しました

*2:打越綾子『自治体における企画と調整』(日本評論社,2004年)11頁

自治体における企画と調整―事業部局と政策分野別基本計画

自治体における企画と調整―事業部局と政策分野別基本計画

*3:前傾注1・川崎市(「かわさきいきいき長寿プラン」を策定しました)

*4:川崎市HP(医療・保健・福祉・子育て高齢者・介護保険「かわさきいきいき長寿プラン」を策定しました)「第5期川崎市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画 かわさきいきいき長寿プラン」20頁

*5:西尾隆『現代行政学』(放送大学教育振興会,2012年)194頁

現代行政学 (放送大学教材)

現代行政学 (放送大学教材)

*6:ダンカン・ワッツ『偶然の科学』(早川書房,2012年)198頁

偶然の科学

偶然の科学

*7:前傾注4・川崎市(第5期川崎市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画 かわさきいきいき長寿プラン)19頁

*8:立田清士『計画と財政』(良書普及会,1982年)177頁

計画と財政―地方団体の場合 (地方自治新書 (20))

計画と財政―地方団体の場合 (地方自治新書 (20))