政府は7日、地域主権戦略会議の検討チームを開き、ハローワーク(公共職業安定所)の事務・権限の一部を国から都道府県に移管する特区を10月にも埼玉、佐賀両県で試行的に設けることを決めた。期間は3年程度で、全国で権限を移譲できるかどうかを検討する。
厚生労働相と両県知事がハローワーク特区協定を締結することで、知事がハローワークを監督する労働局長に地域の実情にあった雇用対策を指示できるようになる。具体的な指示内容は今後検討し、ハローワーク浦和(さいたま市)と、ハローワーク佐賀(佐賀市)で実施する。ハローワーク特区の設置は政府が推進する国の出先機関改革の一環で、政府が昨年12月に東日本と西日本の1カ所ずつで試行的に実施することを決定していた。
本記事では,地域主権戦略会議における審議状況を紹介.
2011年12月26日に開催された第15回地域主権戦略会議へ提出された資料「出先機関の原則廃止に向けた今後の取組方針」では,「知事会の協力も得て,国・地方の一体的取
組を全国的に進める」方針とともに,「特区制度を活用して,試行的に,東西1か所ずつハローワークが移管されているのと実質的に同じ状況を作り,移管可能性の検証を行う」,「仮称」「ハローワーク特区」*1による実施方針が提示.そして,これらの「具体的な内容」に関しては「国と地方が協議して決定する」こととされており,同取組方針を受けて,2012年5月7日に開催された地域主権戦略会議に設置されている,「アクション・プラン」推進委員会内の検討チームの一つである「公共職業安定所(ハローワーク)チーム会合」の第2回*2では,同特区構想に関して検討.同会合の同回配布料とともに,本記事を拝読させて頂くと,「埼玉,佐賀両県で試行的に設けることを決め」られた模様.
同会合の同回配布料を拝読させて頂くと,同特区制度では,「厚生労働省令(雇用対策法施行規則)」に,「厚生労働大臣と県知事がハローワーク特区協定を締結」可能である旨を規定するとある.省令を根拠とされた,協定による制度として導入される模様.「協定の主な内容」では,「県知事は労働局長に対し,ハローワーク○○の業務に関し必要な指示をすることができる」こと,「指示は,法令・予算に反するなど合理的な理由がない限り,事業の実施に当たり反映」すること,「県知事は,労働局長が指示に合理的な理由なく従わない場合には,厚生労働大臣に対し,労働局長が県知事の指示に従うように要請することができる」ことなどを明記される模様.
これらのうち,県知事による「協定に基づく指示」の内容は,「今後要調整」との前提を置きながらも,「国と県の職員の人事交流等」「求人情報提供端末の配置」「若年者就職支援の強化」「障害者就労支援の強化」「福祉事務所での就職支援の強化」「効果的な職業訓練の実施」「企業向けサービスの向上」等を例示されている.また,県知事と労働局長間の「連携・協力」を図り,「業務を円滑に遂行するため」に「事務レベルの会議を設置」することも想定されている.
協定方式のためか,同会合の同資料でも「○○の業務」と記載されており,協定の具体的な内容は,同会合では確定されてはいない.特区制度がそうであるように,両県知事,又は労働局長から「提案型」*3による協定内容の把握と確定手順も想定されなくもないものの,その一方で,「新しいアジェンダを見出し」「合意を得て」「一定の成果を維持してきた」経験からは,「探索型」*4による手順もまた考えられなくもない.今後の協定内容の確定手順は,要経過観察.
*1:内閣府HP(内閣府の政策:地域主権改革:地域主権戦略会議:「当面の会議開催予定:第15回 地域主権戦略会議(平成23年12月26日(月))「資料1出先機関の原則廃止に向けた今後の取組方針」
*2:内閣府HP(内閣府の政策:地域主権改革:地域主権戦略会議:「アクション・プラン」推進委員会)「第2回 公共職業安定所(ハローワーク)チーム会合(平成24年5月7日(月))」
*3:田辺国昭「規制改革 ―分析のための試論―」森田朗・金井利之編著『政策変容と制度設計―政界・省庁再編前後の行政―』(ミネルヴァ書房,2012年)293頁 政策変容と制度設計―政界・省庁再編前後の行政 (MINERVA人文・社会科学叢書)
*4:前傾注3・田辺国昭2012年:298〜299頁