鵜匠(うしょう)が旧宮内省の所属となって120年(岐阜県)、大隈重信を中心に円を貨幣単位と定めて140年(佐賀県)‐。地方自治法施行60周年に合わせ、大阪の造幣局が発行する都道府県の記念硬貨の節目が、歴史マニアも顔負けの細かさだ。記念硬貨といえばオリンピック開催など分かりやすい節目に合わせるものが多いが、都道府県レベルとなるとなかなか見つからない。4月中旬にデザインが決まった兵庫県は「コウノトリ天然記念物指定60年」を選んだ。(小川 晶)
 そもそも今回の記念硬貨発行は、2008年の同法施行60年に合わせて財務省などが企画したもの。千円、五百円の2枚セットで、16年度までに全都道府県分を出す予定。各自治体の要望を踏まえ、同省などが順番や図案を決定し、これまでに19道府県分を販売した。最初の年こそ、洞爺湖サミット開催の北海道▽源氏物語千年紀の京都府石見銀山世界遺産登録の島根と、分かりやすい節目や出来事で硬貨が発行されたが、その後は地元色の濃い区切りが目につくようになった。大隈重信元首相を生んだ佐賀県は、大隈が主導で定めた「円」を柱とする新貨条例140年を節目とした。県の政策監グループは「日本史マニアでないと分からない節目ですが…」と笑う。一方、青森県は、リンゴの「ふじ」誕生70年▽青森ねぶた、弘前ねぷた重要無形民俗文化財指定30年▽三内丸山遺跡特別史跡指定10年‐の三つの節目を合わせ、記念硬貨の発行を企画した。いずれも地元で盛り上がるような節目ではないものの、県企画調整課は「これ以上ないタイミング」とする。
 12年度に発行予定の兵庫県は「コウノトリ天然記念物指定60年」を選び、4月中旬、コウノトリをモチーフとした千円銀貨と五百円硬貨のデザインを公表した。千円銀貨は世界文化遺産・国宝姫路城を背景に羽ばたくデザインで、県地域振興課は「16年度までの発行スケジュールの中で、一番ぴったりくるのが天然記念物指定60年だった」と話す。記念硬貨をまだ発行していない自治体も多い。財務省理財局は「自治体が何をアピールしたいのかを主眼に置いている。節目については(自治体の)判断を尊重する」としている。

本記事では,兵庫県における地方自治法施行60周年記念貨幣の発行の取組を紹介.同県では,「千円」の表面は「コウノトリと姫路城」,「五百円」の表面は「コウノトリ*1 をデザインとして採用される,とのこと.
地方自治法施行60周年記念貨幣の発行に関しては,随分と前から一定期間毎に新聞記事で接することがありながらも,下名全く確認していない観察課題.何故,同法施行60周年記念ながらも,施行年後もばらばらと発行されているのだろうと疑問をもっていたものの,本記事を拝読させて頂き,初めて,同取組の進め方を理解.「地方自治法施行60周年を記念するため」に「70周年に至る地方自治の新たな10年にわた」り,「47都道府県ごとの図柄」で「平成20年度から順次発行」*2 される,息の長い取組.なるほど.自治的といえば,自治的.
2008年度は「北海道」「京都府」「島根県*3 ,2009年度は「長野県」と「新潟県*4,2010年度は「高知県岐阜県」「福井県*5 ,2011年度は「富山県」「鳥取県」「熊本県*6 ,2012年度は「沖縄県」「神奈川県」「宮崎県」*7 でいずれも発行済み.本記事で紹介されている兵庫県は,「栃木県」と「大分県」とともに,「2012年度後期」*8の発行となり,更に,2013年度の「宮城県」「群馬県」「広島県*9の 3県の発行予定が公表されている.発行枚数は「千円」は「10万枚」と統一されているものの,「5百円貨幣」は各府県で発行枚数に差異もある(発行枚数の基準があるのだろうか,要確認).
同取組に伴い,同省に設置された「地方自治法施行60周年記念貨幣の発行に関する会合」のうち,2007年年12月18日に開催され第1回会合にて配布された資料「記念貨幣のデザイン決定プロセス」*10を拝見させて頂くと,発行手順も分かり,こちらも興味深い.まずは,各都道府県で,「デザインガイドライン*11を参照されつつ,「記念貨幣(切手)のデザイン(図案)を検討」を開始する.その際に,「造幣局」に対して「提案」と「調整」を行い,「技術的な問題等を随時相談」する.その後,「デザイン等に関する検討会」に「複数案」の「図案」が「提出」され「検討」.その検討結果を再び都道府県に「連絡」し,その後,都道府県から「造幣局(貨幣)」へ提出.造幣局から「財務省」に対して図案が提出し,同省で「承認」した後に,「貨幣の形式等の政令改正」に関する「閣議請議」が行われ「政令改正」「公布」により「記念貨幣発行」の手順で発行されていることが分かる.都道府県と造幣局造幣局財務省財務省閣議と協議の賜物でもあるのだろうか.
地方自治法制定の特徴といえば「統一法典で包括的に規定」*12が置かれたことにあるとすれば,記念貨幣の発行が都道府県単位であることがデフォルトではなく,本記事の表現を用いれば,更に市区町村毎を加えた更なる「細かさ」があっても良い気もしないでもないものの,細かすぎることも,通貨供給の管理からも困難なのだろうか.記念貨幣と自治のテーマは,考えてみると興味深そう.

*1:財務省HP(通貨わが国の貨幣記念貨幣地方自治法施行60周年記念貨幣)「地方自治法施行60周年記念貨幣(栃木県、大分県、兵庫県)の図柄等を決定しました

*2:財務省HP(通貨わが国の貨幣記念貨幣地方自治法施行60周年記念貨幣)「記念貨幣の発行について

*3:財務省HP(通貨わが国の貨幣記念貨幣地方自治法施行60周年記念貨幣)「 発行状況表(平成20年度発行分)

*4:財務省HP(通貨わが国の貨幣記念貨幣地方自治法施行60周年記念貨幣)「 発行状況表(平成21年度発行分)

*5:財務省HP(通貨わが国の貨幣記念貨幣地方自治法施行60周年記念貨幣)「 発行状況表(平成22年度発行分)

*6:財務省HP(通貨わが国の貨幣記念貨幣地方自治法施行60周年記念貨幣)「 発行状況表(平成23年度発行分)

*7:財務省HP(通貨わが国の貨幣記念貨幣地方自治法施行60周年記念貨幣)「 発行状況表(平成24年度発行分)

*8:財務省HP(通貨わが国の貨幣記念貨幣地方自治法施行60周年記念貨幣)「 地方自治法施行60周年記念貨幣のうち平成24年度後半及び平成25年度前半に発行する6県を決定しました

*9:財務省HP(通貨わが国の貨幣記念貨幣地方自治法施行60周年記念貨幣)「 発行状況表(平成25年度発行分)

*10:財務省HP(財務省について審議会・研究会等地方自治法施行60周年記念貨幣の発行に関する会合地方自治法施行60周年記念貨幣の発行に関する会合(第1回) 配付資料)「資料資料2−?記念貨幣のデザイン決定プロセス(概要)

*11:財務省HP(財務省について審議会・研究会等地方自治法施行60周年記念貨幣の発行に関する会合地方自治法施行60周年記念貨幣の発行に関する会合(第1回) 配付資料)「資料資料2−?記念貨幣(記念切手)発行の考え方(案)」2頁

*12:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『改訂版 ホーンブック地方自治』(北樹出版,2011年)28頁

ホーンブック 地方自治

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