多額の債務超過に陥り、民事再生法の適用を申請した神戸市の外郭団体・市住宅供給公社(同市中央区)について、神戸地裁は22日、再生手続きの開始を決定した。負債総額は約503億円。時価が取得額を下回る「評価損」が10億円を超えた分譲宅地・住宅が計7団地に上ることも判明し、市の見通しの甘さがあらためて指摘されそうだ。
 同公社の分譲事業は、市が進めたニュータウン開発の一翼を担い、事業用地を積極的に購入したが、バブル経済崩壊による地価下落で多額の含み損を抱え、経営破綻の一因となった。2000年代に入り会計基準変更で時価会計が導入されると、損失が一気に表面化した。評価損が10億円を超えた分譲宅地は4団地=表、分譲住宅は六甲アイランド(東灘区)などの3団地。分譲宅地・住宅を合わせた評価損総額は、01〜03年度で計約196億7300万円に上った。また、阪神・淡路大震災後、被災者向けの住宅供給を支えた「借り上げ特優賃」事業の赤字も重くのしかかった。同事業は、民間オーナーから共同住宅を20年間一括で借り上げ、全戸分の家賃をオーナーに保証する方式だが、年々空き室が増え、赤字が膨らんだ。今後、保有地を売却するとともに、賃貸事業などは市や別の外郭団体・神戸市都市整備公社に引き継ぎ、本年度中に解散する。
 国土交通省によると、これまで全国で11県の住宅供給公社が解散しているが、政令市では初。神戸市が公社解散に伴い支出する「市民負担」は最大約300億円の見込みで、市議会からは、さらなる原因検証などを求める声も上がっている。(黒田勝俊)

本記事では,神戸市における住宅公社への民事再生手続が決定されたことを紹介.同決定に関しては,同公社HPを参照*1
1960年に設立され,同「市内で多くの分譲及び賃貸住宅,分譲宅地を供給」しつつも,2003年度末からは「債務超過」に陥り,「今後も収入に比べて借入金返済の負担が余りにも大き」い状態が続くなか,2009年度に「「神戸市都市計画総局外郭団体あり方検討委員会」で検討され「民事再生手続きにより,主な事業を神戸市都市整備公社及び神戸市に継承し,最終的に当公社を解散するという結論」に至ったことを受けて,2012年5月22日に「民事再生手続開始決定」*2された同公社.
同公社が公表されている,資料「神戸市住宅供給公社 民事再生の流れ」を拝見させて頂くと,今後の手続は,次の通り.まずは,そして,7月6日までに「裁判所から債権者」へ「再生債権届出書」が届出,8月6日迄に「届けられた債権の認否」を「再生債務者(公社)」が実施,8月27日迄に,「裁判所」が「債権調査が終了」し.同「公社の債務額が確定」される.そして,9月18日迄に,「再生計画」を「策定」し,「債権者集会」を開催し「再生計画についての可否を債権者に問い」,「神戸市都市整備公社へ事業資産を譲渡」するとともに,「金融機関等」へ「再生計画に基づく弁済」を行い「再生計画の実施」となる.その後,「市議会の議決及び国土交通大臣の認可」により,同「公社は解散」*3となる.
「政府関与の強い組織」とされる「グレーゾーン」*4組織の「最大動員」*5という組織活用よりも,「組織の存在意義の低下」*6からの組織廃止の事例としても整理されそうな同公社への民事再生手続の適用.本記事にて紹介されているように,その「負債総額は約503億円」とすれば,組織の廃止に至る過程とともに,まずは,その組織のとじ方の過程もまた観察課題.要経過観察.

*1:神戸市HP(市政情報市について外郭団体神戸市外郭団体一覧表)「神戸市住宅供給公社

*2:神戸市HP(市政情報市について外郭団体神戸市外郭団体一覧表神戸市住宅供給公社)「再生手続開始決定のご報告

*3:神戸市HP(市政情報市について外郭団体神戸市外郭団体一覧表神戸市住宅供給公社)「神戸市住宅供給公社 民事再生の流れ

*4:狭間直樹「公共サービスの質とグレーゾーン」真山達志編著『ローカル・ガバメント論』(ミネルヴァ書房,2012年)118頁

ローカル・ガバメント論―地方行政のルネサンス

ローカル・ガバメント論―地方行政のルネサンス

*5:村松岐夫『日本の行政』(中央公論社,1994年)28頁

日本の行政―活動型官僚制の変貌 (中公新書)

日本の行政―活動型官僚制の変貌 (中公新書)

*6:柳至「地方自治体における組織廃止の過程 関東6県の土地開発公社改革を事例として」『季刊行政管理研究』No.134,2011年6月,19頁(同誌は,amazonには掲載されていないので,発行元の同誌目次をリンク)